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晴れた日の話し  作者: ゆかわ どり
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勇気の使い方


 チヒョンがじっと私を見ている。


「いじめられてた時、死にたいと思った事ある?」


 私は机を見て「うん」と言ってから、チヒョンに説教されない様にと言い訳するように話を続

けた。


「でも、そんな勇気はなくて死ねなかった。

相手が死ねばいいのにとも思ってたんだ。なんであの人はあんなに楽しそうなんだろう。私はあの人が存在しているだけでこんなに辛い思いをしているのにって。

だけど、そのうち私の状況に気づいてくれた人がいて、守ってくれたの。それから友達は増えたし、その人とはずっと友達。あの時、すごく救われた気分だった。心にあった重りを砕いてくれたように気分が軽くなったの。私は運が良かったんだ。自分じゃ何もせずに、救われたんだもん」


 未だに思い出すあの顔と笑い声。

 忘れたい記憶や感情なのに全く消えてくれないその顔を心の中で何度顔面を殴った事か。

 いつまで私の人生に付きまとうんだろう。

 ああ。平気だと思っていたのに、心が当時の様ににだんだんと重くなっていく。

 

 チヒョンが私の肩をゆっくりと二回叩いた。


「一つだけ言わせて欲しいんだけど、勇気は死ぬ為に使うものじゃなくて、生きる為に使うものだよ。それに、自分をいじめてくる奴の為に自分を殺すなんて絶対にしちゃいけない。そいつのせいで自殺をしたら、自分は地獄へ行ってもっと」


「地獄?なんで自殺した人が地獄に行くの?」


 私はチヒョンの話を遮った。


「他人じゃなくて自分を殺しているだけで、自殺は殺人と同じなんだよ」


「だけど、いじめられて辛い思いをして、心は殺されているのに」


 思わず大声を出してしまい、視線を浴びた。

 話に夢中で気が付かなかったが、教室にはクラスメイトが何人か来ていた。何事かとこちらを見るが、興味はないのかまた直ぐに各々話し始めた。


「どんな理由があろうとも、命を終わらせる行為をすれば地獄に送られる。それは、そう仕向けた人だ人ではなくて、直接手を下した人がね。そうやって自殺した人間は地獄へ行ってもっと苦しむのに、そいつはその時は気にしたとても、いずれ自分のせいで他人を殺してしまった事なんか思い出す程度に忘れて、いつかは大声を出して笑う日が来るんだよ」


 自殺は殺人と同じ?そうかもしれないけど、そうじゃないのに。


 生きてても地獄だったあの頃。あの人にいじめられたと遺書を書いて自殺をしてやろう。そしてあの人を一生苦しめてやろう。線路に飛び込んでしまえば一瞬だ、と毎朝思っていた。


「いゆの心はよく持ちこたえてくれたね。地獄に行かなくてよかった。その時は辛かっただろうけど、地獄じゃなくて今俺の目の前にいゆがいる事が嬉しいよ」


 高校生の時に心を沢山傷つけた言葉の武器が、今は癒しとなり心を包んで温めてくれる。


「でも、私も悪い奴なんだよ。その人の事を思う出すたびに不幸になっていますようにって思うんだ。結婚したって聞いた時は離婚しちゃえばいいって思った。言葉にすると、私って悪い奴っていうより、すごく嫌な奴」 


 チヒョンが控えめに笑った。


「その気持ちは分かるかも。でもさ、魔法のランプでさえ、お願い事を三つしか叶えてくれないのに、それを人の不幸の為に使うなんてもったいないよ。大事なお願いは自分の幸せの為か、大切な人の為に使わなきゃね」

 

 私はいつも、あの人が不幸になればいいのに、不幸になっていればいいのにとしか考えられなかった。


 チヒョンの考え方いいな。


「涙を拭いて」と、チヒョンにティッシュを渡される。


 高校生の時にチヒョンに出会えてたらよかった。スワン達も同じ高校だったら、楽しく過ごせただろうな。

 


 授業開始の鐘が鳴ると同時に、先生が教室に入って来た。先生はいつも時間ぴったりに教室に入ってくるから不思議。もしかして廊下で待機してるのかも。


「皆さん。おはようございます。今日は、選択授業の説明をします」





「ねえ、ホラール」


「うん?」


「チヒョンって、私達と違うなと感じる時ない?」


 午前の授業が終わり、

いつもの席でいゆ達を待つスワンとホラールとアムリ。


「肉体も魂もないというか冷たいというか、人間じゃないみたいな」


「俺達も、もう人間ではないかも」


「それに、冷たいのはスワンの方じゃん」


「煩いわね、アムリは黙ってなさいよ」


 シュンとするアムリ。黙ってホラールの近くに椅子ごと移動した。


「俺達と出会ったばかりだし慣れてないだけじゃないかな?」


「うーん。それとは違うのよね。死国管理官みたいな感じ?一定の距離を保っている様な」


「チヒョンは優しい人だと思うけどな」


「うん。チヒョンは優しいよ。僕の話最後まで聞いてくれるし」


「確かにあんたの話を最後まで聞いてくれる人なんてそうそういないわね。でも、そうじゃないの。何かが私達とは違うのよ」


「もしかして」


 アムリが自分の胸に両手を当てて「きゃっ」と言った。


「恋なんじゃないの?スワン運命の人に出会っちゃったんじゃないの?」


「んなわけないじゃない」


「冗談に決まってるじゃん。スワンは冗談の授業を取った方がいいんじゃないの!」


「噂の彼といゆが来たよ」


「ちょうどいいじゃん。直接チヒョンに聞いてみようよ」


「さすがの私でもあんた違和感あるんだけどなんて聞きにくいわよ。いゆー!」


 こっちこっち!とスワンがいゆ達に手を振った。




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