駄目人間
「私がこうなったのは、高校生の時いじめられてたからなんだ」
真面目なチヒョンの事だから、それと何の関係があるんだとか言いそう。
だが何かを言われる気配がない。見ると、意外にも悲しそうな顔をしていた。
「何も分からないくせに、さっきはごめん。無理に話さなくていいよ」
こんな気まずそうなチヒョンは初めてだ。
「大丈夫。私にとっては恥ずかしい、過去だけど」
そんな過去を笑って誤魔化す。
しかし、チヒョンは大きなため息をついた。
「いゆは、何一つ、恥ずかしい事はしていない。恥ずかしいのはいゆをいじめてたそいつらだよ」
いじめられているなんて、恥ずかしくて、
その当時も今までも誰にも言えなかった。けれど、何故か今は話したいとばかりに口が口が動き出す。
溜まっていたものを一気に出したい。
「そいつらではないんだ。私の事をいじめていたのは一人。同じクラスの女の子だけだった。
高校一年生の時なんだけど、クスクス笑われて馬鹿にされたり、みんなの前であいつマジでキモイって言われたり、机にゴミを置かれたりで毎日辛い新学期を過ごしていたの。でも、それは私の心が弱かっただけで、他の人だったら平気だったかもしれない。目に見えてわかるような痛みを受けていたわけでは無いし。けれど、私にとってはとても、とても辛い事だった」
当時の事を思い出し、惨めな気分になる。
「金曜日の放課後がすごく嬉しかったし、月曜日が来るのか本当に嫌だった。毎晩、明日が来なければばいいのに泣きながら眠っていたんだ。それから私は自分って駄目な人間なんだなって考えるようになって、行動にも自信が持てなくなっちゃって、何を決めるにもみんなに相談するようになったの。だから癖みたいなものなの」
チヒョンが私の腕にそっと触れた。
「いゆはアムリ達の事好き?」
急な質問。
「うん。好きだよ」
「それはどうして?」
「聞かなくたって分かるでしょ。三人とも良い人だから。優しいし、面白いし、人として好き。一緒にいると気分が良いの。まだ深いところまでは知らないけれど、あの三人を見ているとそう感じるんだ。ずっと友達でいたいって思う」
今度は握手を求める様に手を出したので、それに応えるように私も手を出した。
「え?」
しかし、チヒョンは私と握手ができないように指を曲げる。
「いゆがそう思っていても、三人がこうやって拒否をしたら一緒にいるなんて事できないよね?」
チヒョンが指を伸ばし、私の手を取って握手をした。
「でも、あの三人はいゆに対して同じこと思っているから、今一緒にいる事ができてると思うんだ」
三人からどう思われているかなんて、気にした事が無かった。そんな不安が浮かばないくらい、私にとって三人とは心地のいい関係なのだ。
「いゆは、自分が好きだと思う人達と友達になれるし、アムリも言っていた様に素敵な夢を持っている。人に好かれる人が夢迄持っているんだから、特別ではないけれど、人に好かれる普通の人間なんだよ。どこからどう見ても、駄目人間ではない」
真剣に話を聞いてくれるチヒョン。
しかし、真面目な空間は苦手な私。
「さっき寝てたんじゃなかったの?」と、揚げ足を取るような事を言ってしまう。素直に、ありがとうって言えばいいのに。
チヒョンは違うと言ってくれるけど、こう言うところは駄目人間かもしれない。




