何でもない会話
「おまたせ」
アムリが戻ってきた。
「ジャスミン茶に、炭酸水に、おすすめのソカタ!そして僕は緑茶」
「ソカタ?」
アムリから少し黄色っぽいような濁った飲み物を渡された。飲まなくてもいいなら飲みたくないかも。
「これ何?」
「何って。さっきソカタだって言ったじゃん。甘くてさわやかな花のジュースだよ」
一口飲んでみた。甘いけど、酸味もあるような。
「美味しい?」
「初めて飲んだ味」
不味くはないが、特別美味しくもない。せっかく持ってきてくれたので美味しくないとは言わないでおこう。
「そうなんだ。僕はね、それ好きじゃないの。甘いのか酸っぱいのか分からなくて嫌なんだ」
嫌なのに何でおすすめで持ってきたんだろう。「えへへ」と笑いながら緑茶を飲むアムリ。そして「はあー」と幸せな息を吐いた。分かる分かるその気分。
ちびちびとソカタを飲んでいると、学食にジンさんに似た制服を着た人が入って来た。
「あ。みんなも私の考えている事分かるの?」
「急に何?どういう事?」
ホラールが言った。
「最初に死国で会った人が、言葉に出していないのに私の考えてる事が分かってたの。死国の人はみんなそうなのかなと思って」
「それって、死国管理局員の話?僕の担当の人はどうだったかな」
「死国には色んな生き物がいるから分かる人もいるかもしれないけど、俺達は普通の人だから何を考えているかは声に出してくれないと分からないよ」
試しに心の中でみんなの名前を呼んでみたが、無反応だった。
「そうだよね。死んだら特別な力が手に入るのかと思った」
「死んでも何の力も手に入らないわよ。何の力もないただの人間なんだから」
「僕達は僕達のまま」
「でも、特別な力を貰えたらRPGみたいで楽しいね。俺は何の力を貰おうかな」
「え、自分で好きな力を貰える設定なの?じゃあじゃあ、僕は空を飛べる力!」
「私は火を出現させる力がいいわ」
「スワンが火を操るなんて僕不安なんだけど」
「じゃ、俺はスワンの火を消す水を出現させる力を貰っておこうかな」
「それなら安心!それに生き物にとって水はとても大事だもんね!」
こんな他愛もない話をするなんていつぶりだろう。笑ったのさえ久しぶりかも。もっとみんなと話していたいけど少し眠いな。自然と欠伸が出てしまった。失礼かと思い、咄嗟に口を押さえたがアムリに見られていたようだ。
「いゆ、眠くなっちゃったの?」
「うん」と、ここは正直に答える。
「今日は色々あったし、転んじゃったし、きっと疲れたんだろうね」
「また、そういう事言うの止めなさいよ。今日はもう休みましょ。いゆも寮に住むのよね?どこの部屋か決めた?」
そう聞いたスワンが、いきなり机をバンと叩き、その音で私達はびくっとなった。そして私は一瞬眠気が飛んだが、またすぐに眠くなった。
「すっかり忘れてたわ。ホラール達の隣の部屋ってまだ空いてたわよね?」
「空いてると思うけど、確か一昨日辺りにスワンのルームメイトのアメリカ人が試験に合格したって言ってなかったっけ?」
「そういえば!どおりで今朝姿を見ないし、荷物もないと思ったわ。決まり!急いで寮に戻りましょう」
四人のコップをアムリが片付けに行った。アムリが戻って来るまでちょっと目をつぶってよう。私は腕を枕にして机に頭を置いた。
「ホラール!いゆが寝ちゃったからおんぶして!」
…いや、もう寝ちゃったふりをしよう。




