宴
父と医師に近付き、二人の会話を聞く。
「このまま延命処置はしますか?その場合は胃ろうをお勧めいたしますが」
私の担当医なのか、短髪に眼鏡をかけた男の人が言った。
「お願いします。胃ろうは家族と相談をしますので」
もしかして、私の魂が今死国にあるから生国の私は入院して目を覚まさないの?という事は私は生き返るっていう事?こんな事ってありえるの?
私はスワン達に相談しようと、グループトークにメッセージを送った。しかし何度試しても全然送れない。電波を確認すると圏外の表示。死国の電波は生国まで届かないんだ。
早く死国に帰りたい。
父が一度家に帰るという事で私は一緒に帰る事にした。
家に着くなり、父は小さな木に火をつけ迎え火を焚き始めた。私の存在を知らない父と二人で迎え火を見つめる。
遠くの方で、馬の鳴き声と足音が聞こえる。坂道に目をやると、続々と人を乗せた馬が家の坂を上って来た。
「いやぁ。疲れた疲れた」
馬に乗っていたのは仏間にある写真ではない見た事のない知らない人ばかりだった。
「はじめまして。こんばんは」
「おう」
「俺達が見えるのか!」
「はい」
「こんな若いうちに死んじまうなんてな!」
「もっと長生きしないと駄目だぞ」
「駄目だなんて、もう死んでいるじゃないの」
全く面白くないのに大笑いしているおじいさんとおばあさん達。久しぶりの帰省で気分が良いみたい。
「今夜は宴だな!」
祖父母が亡くなり七年以上経つが、もしかしたらと思い、遠くの方を見て馬が来ないか何度も確認をする。しかし、いつまでたっても来る気配がない。
今日見た事を相談したかったのに。ご先祖様とは言え、自分が生きている事を相談する事はできない。
迎え火が消えてしまい、父は家の中に入た。
ご先祖様達は家に着いてから空が完全に暗くなり、うっすらとまた明るくなって来た今でも、ずっと歌い踊り、お酒を飲んで盛り上がっている。
私はそういう気分になれず、庭にあるコンクリートの縁に一人座っていた。
帰ったらみんなにはなんて言おう。いや、このまま黙っていようか。もし言ってしまったら、生国に戻らなきゃいけなくなるかもしれないし。誰にも言わず、今後は生国に帰らないようにすればいい。うん。そうしよう。
「あの。早く死国に帰りたいんですけど、どうしたら帰られますか?」
私は近くでお酒を飲んで大笑いしているおじいさんに聞いてみた。
「迎えの牛が来ないと帰られないよ。それに死国行きの交通機関も動いてないし」
「そんな」
長くここにいたら、自分が生きている事が分かていると気付かれちゃうかもしれないのに。
「何かあったのかい?」
おじいさんが酒の入った盃を口から離し問いかけてきた。
「いいえ。ただ早く帰りたかっただけです」
「ん。そうか。こんなに楽しいのにもう帰りたいだなんて。さ、若いもんも騒ぐぞ!おっと、酒がない。若いもん注いでくれ!」




