出会い3
この建物は五階建てになっていて、ワンフロアがショッピングモールの様にとても広い。
一階のフロアは役所、二階から五階は全て学校になっている様だ。
二人は受付ではなく机がずらりと並んでいる所へ私を案内した。机はATMの操作画面の様にタッチパネル式の画面になっている。スワンが画面上の各種手続きをタップすると、さらにいろいろな項目が表示された。
「住国手続きを選んで、この空欄になっている所全部を埋めるの」
画面には名前、性別、年齢、生年月日、生住所、職種、死年月日の入力欄があった。死年月日か、私本当に死んだんだ。死年月日って今日の日付でいいのかな。
「スワン。生住所って何?」
「生住所は、生国での住所。つまり、生きていた時の住所よ。私達がいるこの死者の世界は死国っていうの」
死者の世界…改めて言われると、自分がここに居ることが本当に不思議だ。死んだ後の世界は何度も想像したことがあるが、生国との違いがない。
全て入力し終わると《十七番の受付けで下記受付番号を伝えて下さい》という表示が出た。受付で番号を伝えると、さっき入力した内容の確認をされた。適当に確認をし、大丈夫だと伝えると、顔写真を撮られ、身体測定と色彩、指紋等まるで新生児の様に隅々まで色々なデータを採られた。
「こちら学生証です」
時間がかかるかと思いきや、十分程度待たされただけでプラスチック製の学生証を渡された。少し斜めにすると、自分の顔がホログラムで映し出された。証明写真っていつも不細工に映るから、常に顔が見えないこのシステムいいかも。
「学生証は色々な場面で必要になるので無くさないようにしてくださいね。学食ではその学生証がないと有料になってしまいますので気を付けてください。他の利用方法は学校で説明をされるのでよく聞いておいてくださいね。手続きは以上になります。良い未来を作ってくださいね」
お礼を言って、私はスワン達の所へ向かった。
「これで手続きは終わりね」
「色々ありがとう。すごく助かった」
一人だったらもっと時間がかかっていたに違いない。あの時転んでよかったかも。
「いゆ、俺達これからご飯食べに行くんだけど、良かったら一緒に来ない?」
「うん!ぜひ」
本当は知り会ったばかりの人達と一緒にご飯だなんて、気を使うし、相手にも気を使われるし嫌だ。でも、ここまで付き合ってもらったのに断るのは失礼だし。と思ったが、重要な事を思い出した。今、私はお金がない。さすがに奢ってもらうわけにはいかない。
「どこで食べるの?」
極自然に聞いてみた。
「学食だと思うよ」
よかった。まずは一安心。
「そうね。アムリは貯金を沢山してるのに、全く使おうとしないのよ。だからお金がかからない学食だと思うわ」
もう一人来るんだ。アムリってどんな人なんだろう。男の人かな?女の人かな?
「アムリ今どこだろ」
ホラールはズボンのポケットからスマートフォンを取りだした。
「私も早くスマホ欲しいな」
「ご飯を食べたら買いに行く?」
「買いに行きたいんだけど」
私はお金が無い話をスワン達にも話した。
「俺達みたいな学生なら、お金はそんなに必要ないし大丈夫じゃない?あ。もしもし?アムリ?」
「ホラールの言う通りだけど、あるに越したことは無いわよね。スマホも買えないし」
「アムリがもうすぐ学食に着くって」
電話を終わらせたホラールが言った。
「やっぱり学食だったわね」
私は二人と一緒に学食へと向かった。
学食は学校の隣にある。学校よりは少し小さく感じるが、それでも大きい。一階建てで一つ一つの窓が大きい。テラス席もあり、そこでは沢山の人が見た事のない料理を楽しそうに話しならを食べていた。
「ねえ、アムリってどんな人なの?」
「んー・・・陽気な子かな?」
「私からしたらふざけた感じの人かしら?」
「それからよく食べるよね?」
二人は交互に疑問形で答えて言った。
「良い子の塊って感じだよ」
「そうね。煩いけど。あ、あそこにいるのがアムリよ」
「おーい、アムリー」
ホラールが名前を呼ぶとこちらに男の子が向かって走って来た。
「僕お腹ぺこぺこ」
ホラールよりも濃い茶色の髪の毛に、グレーの瞳。背の低い私よりも小さくて小柄だ。外国人なのにこの子も日本語が上手。もしかして、この世界は日本に住んでいた人が亡くなった世界なのかも。
「アムリがお腹ぺこぺこじゃない日なんてあるの?」
ホラールとスワンが笑う。
「アムリ。いゆよ。今日来たばかりなの」
「そうなの?いゆよろしく!」
アムリはニコッとして手を出した。
「よろしく」と、私も握手をしようと手を出したが、握手をする前にアムリはさっと手をひっこめた。
「挨拶はこれくらいにして、早く食べよ、食べよ!」
アムリは、聞いた事のない歌を歌いながらガラスの扉の中に入って行った。なんだか失礼な子かも。
「ほらね。落ち着きが無くて煩いでしょ?でも悪い子ではないのよ。私達も行きましょ」
スワンが私の腕に自分の腕を絡ませて歩き出した。初対面なのに距離が近い。嫌われていないようで嬉しいけど少し照れる。




