この二人、面白いな。(ある冒険者の視点。)
ブライのギルドに用があるため、ついでに金になる、ブライ行きの護衛も受注。
この辺りに出る魔物は低いランクでも対応できるから、俺一人でも対処できるだろう。
馬車を走らせる馭者と話をしながらのんびりいくか。
そう思ったのだが。
アントの群れに急に囲まれた。
こんなことは滅多にない。何かあったか?
まあ数が多いが、対処はできる。
同行者にはこのまま馬車に隠れていてもらって、周りに結界を張る。
とにかく、馬車を守るためにヤるか。
あいつの、戦う時に楽しそうな顔するのやめてよって声が聞こえてきそうだな。ふふ。
「さあ、来いよ。」
しかし。無機質な顔がこうも揃っていると気持ち悪いな。
両手剣を構えて、向かってきたアントの群れを倒していく。
しかし、倒しても倒しても、巣からどんどん湧き出てきているようだ。
一体何があったんだろうなあ。
もういっそ、巣を叩くか?
しばらくすると、黒い影が見えた。
なんだ?
見ると、黒い大鎌がアントを狩っているようだ。
味方か?
あんな武器は初めて見たぞ。
あれは……さっきの少年か!
……予想以上の強さだな。
馬車にアントを近付けないように切り捨てながら、この異常発生の原因に思い至る。
アントがこんなに群れることは滅多にない。
戦闘さながら、ちらりと少年を見る。
アントの群れが少年から逃げようとするが、少年は軽々と切り捨てていく。
この事態を引き出したのは、あの少年だろうな。
「ふんっ!」
少年から離れようとして結果的にこちらに迫り来るアントを両手剣でまとめて切り倒す。
バラバラと散らばった死骸の上をさらにアントが乗り上げて迫ってくる。
と、大きい魔力を察知する。
出どころに視線を向けると、少年と一緒にいた女性が魔法を繰り出した。
ゴウッと熱風を撒き散らしながら、アントを巻き上げつつ焼き尽くしていく。
「ファイアストーム??」
驚いた。
ギルドでは、ある程度高いランクの冒険者になると顔も名前も知られていく。
彼らのことは知らなかった。
つまり、まだ低いランクだと思われる。
それに冒険者家業に通じているような、熟練者には見えなかったぞ?
なんだこの二人は。
ふむ。面白い。
この数には骨が折れるかと思ったが、これならすぐに済みそうだ。
それにしても。少年の強さは別格だな。
少年が繰り出す水魔法の、狙いの正確さ。速さ。強さ。
鎌を振った時、彼の周りのアントが一気に倒されていく。
ランクA並の強さだな。
だが、荒い。
戦いの経験はそう多くなさそうだ。
あの娘のファイアストームを繰り出す速さもおかしい。
魔力を練り上げる時間を必要としていない。
攻撃したい時に、自由に出しているようだ。
だが、冷静さがあまりないように感じる。
「ふふふ。」
面白いぞ。
新しいおもちゃを見つけたようなワクワクを感じながら、思わず笑い声が漏れた。
二人の様子を観察しながら戦っていく。
馬車の周りにも少年の周りにも、バラバラになったアントが山積みになってくると、やばいと思ったか、アントがワラワラと連れ立って逃げていった。
辺りが静かになったが、アントの死骸の山に女性が小さく悲鳴を上げながら、見ないようにしている。
苦手なのか。
それであの魔法か。
「はははははっ!」
俺の笑い声に気づいた彼女が、ハッとこちらを見て気まずそうにしている。
少年は、冷めた反応だ。
馬車の中にいる依頼主と馭者に断りを入れてから、二人に近づく。
「お前ら、強いんだな。感心したよ。」
「いえ、そんな。」
「はっはっは。謙遜するな。褒めているんだ。」
「ありがとうございます。」
「ふーん。」
先ほど感じた大きい魔力が彼女から消えている。
「俺はアルディ。エルドラドのギルドに所属している。」
「あっ、私はまな。私もエルドラドのギルドに所属しています。」
「デスだ。」
ふーん。見れば見るほど、面白いコンビだな。
ニヤニヤが止まらない。
「デスさんとやら。お前、アントに何かしたか?」
「何か、とは?」
「アントが避けていた。」
「ああ、威圧を。」
やっぱりな。
「ふふ。アントに威圧は禁止だ。」
「えっ? どうしてですか?」
まなが心底驚いた顔をする。
「逃げたアントがさっきのようになる。」
「え。……じゃあ、このアントの群れは威圧のせいで?」
さっと青ざめるまなを見て、保護欲をちらりと駆り立てられる。
「よほどのことがない限り、群れないから単独で倒し進む方がいいんだ。気をつけるんだな。」
「そうか。……すまなかった。」
ほう、少年。意外と素直だな。
「……ランクは?」
「二人ともランクEです。」
多分低いランクだろうとは思ったが、まさかのEとは。
肩から力が抜けそうになる。
「……Eかよ。それであの強さか。危ういな。」
「あんたは?」
「俺か? 俺はA。よろしく。」
ニッと笑って返す。
これがこの二人との出会いだった。
まさかこれから関わりを持つようになるとはな。
この面白いコンビに出会えたことは運が良かった。
なぜって?
面白いからだ。
読んで下さって、ありがとうございます。




