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スキル、カタログの新しい使い方。

 来た。


 ウルフが、前方からじわじわと広がりながら距離を詰めてくる。


「オープン。」

 左手にカタログを召喚する。


 デスも魔力を纏って、鎌の先端から刃を出現させた。


「風魔法。」

 カタログのページが、自動的にパラパラと動いて止まる。

 風魔法一覧のページである。

「エアカッター。」

 右手に魔力が宿るのを確認して閉じたら、カタログがぽんっと消えた。

「準備オッケーです。」

「うむ。」


 前方と左右からウルフが近づいてきた。

 何回見ても迫力があってビビるわ……。


 グルッ。

 ウルフの唸り声がしたと思ったら、一斉に飛びかかってきた。


「エアカッター!」


 ブゥンっと両手に風魔法が渦巻いて留まる。

 飛び出してきたウルフに向けて、渦巻きを突き出して放出する。

 それは回転に勢いを増して、ウルフの弱点であるお腹を斬り付けては消えていく。


「エアカッター!」


 新たに渦巻きを作り、近づいてくるウルフから順に攻撃する。

 隙がありそうな後方から来るウルフには、土魔法で壁を作ってかわす。


 私では攻撃しきれないところを、デスが鎌を振り、時にはウォーターカッターを連続で繰り出しながら倒していく。

 しかも無詠唱!


 デスやっぱり強い。鮮やかに倒すわ。


 私の戦闘能力アップのために、わざと戦わせてくれている余裕さえ感じる。

 脳裏でちらりとそんなことを感じながら、エアカッターを次々出して倒していく。


 数匹倒したところで、敵わないと思ったのか、残りのウルフ達が踵を返して逃げていった。


「……よし。」

 デスの許可が出るとほっとする。


 ふう。


「オープン。」


 カタログが、風魔法一覧のところを開いたまま出現する。

「風魔法終了。」

 両手に感じていた魔力がスッと消えたのを確認して、カタログを閉じた。


「慣れてきたか。」

「うん。今日は流れがスムーズにできたわ。」


 デスが頷いて、収納カードで素早くウルフを仕舞っていく。

 血の匂いで、また魔物が寄ってくるからね。


 私の、新しく覚えた戦い方。


 魔物図鑑を初めて読んだ時に気づいた。

 土魔法が効きにくい魔物はどうしたらいいかを相談して、デスの提案から始まり、このやり方にたどり着いた。


 高い魔法スキルを一つ習得するより、必要な分だけの魔法を低いポイントで使う方がポイントの節約になると気付いた。


 やってみたらできちゃって、あの時は驚いた。

 幅広くいろんな魔法が使えるのよ!


 それからこの戦い方を練習してきたのだ。


 練習ついでにランクも上がったから、一石二鳥だよね。


「む、行くか。」

「うん。」

 薬草茶を一口飲んでから再度歩き始める。


「詠唱なしでできるようになれば、もっとやりやすくなるぞ。」

「無詠唱は無理だって。やってみたけど上手くできなかった。」

「そのうちできるようになる。」

「そうかなあ。」


 無詠唱って難しいよ。

 詠唱って、はっきりと今からこの魔法を使うって意識できてやりやすいんだよね。


「土魔法は無詠唱だろう。」

「うん。そうなんだよね。」

 土魔法は、なぜかすごく体に馴染んでいて使いやすい。スキルとして買ったからかな?

「ふ、まあ慣れればできるようになる。」

「そうだといいけどね。」


 ん?

 なんか見慣れたような植物発見。

 花が地面に張り付くように、パラパラと咲いている。


「ねえデス、あれは何かな?」

「む?」


 近づいてみると、たんぽぽを大きくして、花びらの色も濃くしたような山吹色の花だった。

 鑑定眼鏡で調べたら、『ダンデライオン』と出た。


 これって、たんぽぽ?

 ミントの木もそうだったけど、微妙に違うのはなんでだろう。


「いろいろ調合に使えそうだから、採って行こうかな。」

「分かった。」

 根っこも薬効があるみたいだから、土魔法でちょいと掘り起こしてから、土を払い落として採取した。


 土魔法便利〜。


 デスにも手伝ってもらったから結構採取できたよ。

 採取用の麻袋に詰めてバッグに仕舞う。


 うふふ。ホクホクよ。

 宝探しみたいで、採取って楽しい。


 それから日が暮れる手前まで、休憩を適度に挟みながら歩き続けた。

 魔物も今のところウルフだけで特に新しい変化はなかった。


 夜になると魔物の動きが活発になるから、早目に休む場所を決めてスモールハウスを設置する。


 今日はここまで。

 歩き続けたからすごく疲れたけど、なんだろう、身も心もクタクタというのとは違う。


「歩いたー!」


 ソファにかけて両手をぐっと伸ばす。

「今日は早く休め。」

 デスが、オランジティーだとカップを置いてくれた。


 わー。いい匂い。

 飲んでみたら、すこしとろみがあって、すごく甘い。

「蜂蜜?」

「テイ茶にオランジジャムを入れたものだ。」

「へえ。甘くて美味しい。疲れた時に欲しい味。」

「ふ。」


 おいしーい。


 甘い匂いをいっぱい感じながら味わっているうちに、いつの間にか意識が途切れ途切れになっていた。

 ほっぺにふわふわのタオルが心地いい。


 ・・・・・

 ・・・・・・・。



 デスが私のカップをそっとテーブルにもどして、ロフトまで運んでくれたと知ったのは翌日。

 私の方が大きいのに、どうやってロフトに運んだのか謎だ。

 デスに聞いても、


「本当に聞きたいのか?」


 と意味深に答えるから、聞かない方がいいような気がして忘れることにしたのでした。




短いですが、読んでくださってありがとうございます。

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