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『雪わた』採取。

 盗賊騒ぎはあれから何も進展なく日々が過ぎていく。

 回復した人たちはギルドに記録を残して、今まで通りの日常に戻っていったそうだ。

 リアさんも回復した仲間と共に、先日ブライへ帰った。


 そうそう、私が納品した回復薬(聖)は半分だけ使ったそうだ。

 聖堂も今は何かと人手不足だとかで、回復薬があまり作れなかったみたい。

 そのあとどうなったのかは私は関与していないから、知らない顔していればいいとカルダさんに教えてもらった。


 私たちはギルドの依頼を何件かこなしてゆき、デスはリアさんにもらった水の魔道具をうまく使いこなせる様になって、ランクも一足先にEランクに上がっていた。


 私も回復薬を時々納品しつつ、討伐依頼もエルドラド周辺の魔物だけど、一人で対処できるようになった。

 デスは手を出さずにいてくれて、それでもそばで見守ってくれる。


 ランクが一つ上がるだけで、討伐対象の魔物の強さも、採取の難易度も上がる。

 だから私のランクが上がるまで、デスもFランクの討伐依頼に付き合ってくれた。


 討伐系の依頼は、採取依頼よりもポイント高めだと思う。


 それで私も討伐依頼の受注を増やして、以前はうまく戦えなかったキノコ型の魔物グリープもウルフも、一人で倒せるようになった。


 かなり土魔法のレベルもあがったよ。


 土魔法って戦闘に関しては地味なイメージがあったけど、とんでもない!

 盾にもなるし武器にもなる。

 それだけじゃない。

 穴掘るのも、落とし穴だけじゃなくトイレ室も作って魔法で地に返して埋められる。


 変化自在に対応できて、良いとこ取りよ。


 そうそう!

 あれから二度だけ雪が降りました。

 少しだけ日本を思い出したよ。

 この世界にも雪は降るんだね。


 雪が降った時を思い出す。


 スモールハウスで調合していたらリベルさんが慌てて呼びにきた。

「瓶!  空瓶あるっ?」

「えっ、あ、はい。」

 調合している回復薬を入れようと用意していた瓶を、ケースごと渡した。

「まなも早くおいでっ。」


 何事かと思ったわね。


 外に出たら、雪が降っていたから感動したね。

 両手を広げて真上を見ると雪だけの別世界。だから雪が降ったらこうして見上げるのは好き。


「まな、はいこれ。」


 リベルさんが私の手に空き瓶を持たせる。


「どうしたの?」


 デスも、なんだと言う顔をしている。


「雪に紛れて『雪わた』が降ってくるんだよ。それを瓶に一つずつ入れていくんだ。」


「雪わた?依頼にあったな。」

 デスが思い出したように呟いて、私も思い出した。

「あったわね。あの『雪わた』?」

「雪わたは降る時と降らない時があるんだけど、今日は運がいいよ。」


 よく見ると雪に混じって、丸くて白いものが降ってきている。

 それは地面に落ちると、儚く消えていった。

 量はそんなにないけど、少し待つと降ってくるのが見える感じ。


 気付いたら、少し先の家の人も瓶を持って空を見上げている。


「ほらっ。」

 リベルさんが『雪わた』を瓶に入れて見せてくれた。

「可愛い。」

「そうだろう。これに氷魔法をかけると結晶化するんだよ。後で見せてあげるね。まなとデスも集めて。」

 そう言って新たに空き瓶を手に空を見上げ出したリベルさん。


 私たちも雪わたを探して待つ。

「あった!」

 降りてくる雪わたに合わせて移動しながら、瓶にそっと導く。


「わあ……。」

 大きめなまりもの雪バージョンって感じだね。

 ちょっと触ってみたいな。


 掌にそっと瓶を傾けて、雪わたを出してみた。


 すると、ビビッと微かに振動して霧のように霧散した。

「あっ。」

 そのあと微かな魔力が掌に浸透するような感触がした。


「まな、雪わたは魔力に触れると消えるんだ。」

「そうなのね。」

 人の体を循環している魔力や、大地を這う魔力に反応して霧散してしまうようだ。


 それからしばらく、雪わたの採取を三人で励んで、もう降ってこないなって思った頃にはすっかり体も冷えた。


 リベルさんが瓶の入ったケースを持って、

「うちでお茶飲んで暖まろう。」

 と誘ってくれたので、お言葉に甘えてお邪魔することにしました。


 体の雪を払って中に入ると、テーブルにお茶とお菓子がセッテイングされていた。

「ちょうどお茶に誘おうと思っていたところだったんだ。」

「ちょうど良いな。」

「すごい。」


 デスのコートも合わせて、玄関近くのフックに掛けさせてもらう。


「お茶は希望ある?」

「リベルのブレンドで。」

「私も。」

「はーい。じゃ掛けて待ってて。」

 リベルさんにお任せすると間違いないからね。どんなお茶が飲めるか楽しみです。


 私もバッグに何かないか探したけど、ちょっとした軽食は入っていなかったので、今回はリベルさんに甘えて次回またお茶にお招きしようと密かに計画を練った。


 そして3人でリベルさんのお茶を楽しみながら花を咲かせる。


 雪わたは、大気中の魔力が冷えて結晶化したものと思われているらしい。

 普段はすぐに消えてしまうのだけど、条件が揃えば、地上まで消えずに雪と一緒に降りてくるらしい。


 雪わたはギルドが高く買ってくれるので、子供たちも大人もワイワイ、キャッキャしながら集める。

 毎年見られる風景ときいて、前世での雪だるまを作るみたいな事を思い浮かべた。


 上流社会の人たちが調合用に高値で買ってくれるのもあるみたい。

 ギルドから買わずに自分で取れば良いのにと思うんだけど、上流ほど自分では取らずに、町民のお小遣い稼ぎの機会を奪わないものという風に定着しているらしい。


 へー。


「そうだ見てて。」

 リベルさんは、瓶の一つをテーブルに置いた。

「いくよ。」

 そう言うと魔石を用意して一気に魔力を込めて、冷気を瓶に注いだ。

 すると、雪わたが一瞬で弾けて結晶のように形を変えていった。

 瓶いっぱいに枝を伸ばすように、結晶が伸びる。

 瓶の中の空気もきらきらと光り、踊り出す。


「すごくきれい。」

「ああ。」


 即席スノードームみたい。

 しばし見とれていると、やがて結晶が小さく萎んで消えていった。


 ハァ……。

 感嘆のため息がこぼれる。

 もっと欲しいか聞いてきたけど、一回見てもう満足しちゃった。


 それなら、とリベルさんがケースの瓶を整理して、

「じゃあ、残りは今夜のうちにギルドへ持って行こう。朝が来る頃には消えちゃうから、その前にね。」

「ギルドでは消えないのか?」

「いや、職員が消えないように処置するみたいだよ。その方法は知られていないんだ。処置した雪わたを金貨一枚で買って鑑賞用にすることはできるよ。」

「わ、採取した人もギルドも儲かるんだね。」

「そ。」

「需要はあるの?」

「あるよ。貴族とか魔術師とか、あと学院に研究所。あと何だっけ?」


 とにかくなかなか出現しない為、レアアイテムに分類されるようだ。

 ギルドの掲示板だけじゃなく、市民広報などにも広く募集されていて、低いランクの冒険者、一般人、子供などにギルドに卸す権利が発生するとか。


 お茶を飲んでからギルドへ行った時は驚いた。


 人がごった返していてすごい熱気!

 職員さんが、雪わたを数えてから番号札に記入してそれを持ち込み者に返していた。


「引換札は後日受付もできます!今、換金を望む人はあちらの列に並んでください!」


 私たちも受付の列に並んで、番号札をもらったらすぐに帰った。


 十三個納品したので、金貨三枚と銀貨九枚に。一人金貨一枚と銀貨三枚。

 大金です。

 これはギルドが混雑するのも頷けたよ。

 そうそう、私は依頼受注とさせてもらえたので、ランクポイントも加算してくれたの。


 寒かったけど楽しかったな……。


 それからも私は依頼受注を続け、とうとうというかやっと、Eランクに上がりました。

 デス、お待たせ!

 長かった。


 Eランクになると、遠出の依頼が受注できるようになるみたい。

 つまり日帰りできない依頼である。

 その分報酬も高くなっていて、ちょっとドキドキします。


 日中の寒さが少し和らぎ、冬が終わる頃。

 私たちは、ドローガ村まで荷物を運ぶ依頼を受けた。


 この村は、エルドラドからエルデ平原を東に抜けて三日歩いたところにある。

 この依頼を達成してからブライにも行ってみることにした。

 ブライは、ドローガ村からさらに南へ半日ほど歩けば着くと聞いている。


 そして、リアさんが所属するギルドがあるので、時間があったら会ってみたいね。

 街の案内とかしてくれるかな?


 ドローガ村も、ブライも、どんなところか楽しみです。

読んでくださってありがとうございます。

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