嵐の前の静けさ。
「仲間同士で争っていた?」
「はい。」
私とデスは、エルドラドへ着いてからすぐにギルドへ向かった。
リアさん達を治癒室へ案内してから、カルダさんとミニ会議室でこうして経緯を話している。
「喧嘩とかそんな次元の争いではなくて、本気で殺しあっていたように見えました。」
「……。」
カルダさんは考え込んでから、真剣な顔をして顎に手を置く。
「周りには、確かに誰もいなかったのですか?」
「デスが見ました。」
デスも黙って頷く。
「なるほど、そういうスキルをお持ちなのですね?」
「うむ。」
「……わかりました。貴重な情報をありがとうございます。例の二人をギルドで調べています。そこからまた何か分かるとは思いますが……。ちょっと失礼します。」
そう言って、軽く頭を下げてから出て行った。
「大変な事になったような気がする。」
「うむ。」
「今日はもう、依頼報告をして帰ろうか。」
デスの同意を得てから、受付へ向かう。
グリープ討伐とねむり草採取の報告を済ませて報酬を受け取った。
ふと辺りを見ると、リアさんが依頼人たちに頭を下げているのが見えた。
どうしたのかな?
受付の前から離れて、リアさんの様子を見ていると、依頼人たちが連れ立ってギルドから出ていった。
タイミングを見計らって、リアさんに声をかけてみる。
「あ、まなさん、デスさん。」
疲れた顔をしている。
「大丈夫ですか?」
「ええ。」
私の疑問に気付いたリアさんが、話してくれた。
「……危険な思いをさせたから、依頼解除をされたの。それで、ここから別の冒険者に依頼し直してもらったのよ。」
「そうですか……。」
確かに、あの人達からしたら、そうなっても仕方がない。
「それで、仲間のお二人はどうですか?」
「……分からない。今はまだ治癒室よ。ギルドの職員が色々調べていると思うわ。」
「……。」
「それに、しばらくギルド指定の宿で待機するように言われちゃったわ。私も重要参考人みたい。」
「そんな。」
「いいのよ。当然の処置だわ。それより、二人が回復することを願っているから。私も調べてみたいし。」
それから私達にお礼を言って、ギルドを出て行った。
うまくいい方向に進んでくれるといいなあ。
「まな、帰ろう。」
「うん。すごく疲れたね。」
スモールハウスに帰り着くと、リベルさんが待っていた。
「君たち、大丈夫かい?」
「リベルさん。」
リアさん達とギルドに入っていくのを目撃していて、話を聞いて心配してくれたらしい。
「ギルド依頼の帰りに遭遇したの。デスが助けてくれたから私たちは大丈夫よ。」
無事で良かったと笑って、リラックスできるお茶があると家に招いてくれた。
テーブルに着くとリベルさんが、オリジナルでブレンドしたというお茶を入れてくれた。
甘い、花の様な香りがする。
エルダーフラワーを主に、色々効能の相性を考えてブレンドしたら家族に好評でね。と、楽しそうに話してくれた。
テイ茶は少し甘酸っぱいフルーティなお茶だけど、こっちは、香りは花だけど、味はマスカットっぽくて、とても飲みやすかった。
「とっても美味しいです。ありがとうございます。」
「ありがとう。デスはどう?」
黙って頷くデス。
気に入ったみたいです。
「よかったらこのブレンド茶、分けるよ。」
小分けにした袋をデスに、まなにも淹れてあげてね。と渡してくれた。
「効能は、リラックス、体調不良の緩和、まあ、疲れた時だね。あと眠れない時とかにもいいよ。」
「うむ。」
「ありがとう、リベルさん。」
私たちはそれから少し、さっきまであったことをかいつまんで話した。
「うーん。僕の感想では、意識障害、幻覚幻影系かなあ。どこかで毒を摂取してしまったか。それか呪いでもかけられた、かな?」
「もしそうだとしたらどうやって?自然界にそんなものがあるのか?」
デスが疑問を口にする。
もしそういったものがあるとギルドに報告が上がったら、その駆除依頼がそれに見合ったランクの冒険者に募集をかけられるようになっている。
「今までこの辺りでは、そういったものは発見されていないよ。新種のものでなければ、人工じゃないかなあ?」
「人工?誰かが悪さをしているってことなの?」
「あくまでも可能性だよ。最近までこんな事はなかったからね。」
「そういった毒とか呪いがあるのは知っているけど、そんな人が普通にいるんですか?」
「ごまんといるよ。」
あっさり言われてしまった。
「でも大丈夫。ここはギルドの本拠地だよ。各国のギルドと繋がっているし、優秀な人材もいる。情報収集力はピカイチだから。すぐに対策がされると思うよ。」
「そうなんだ。それならよかった。このままじゃ怖くて、何に気をつければいいのかも分からないよね。」
「まあベタだけど、当分、知らないものには手を出さない事だね。」
「うん。」
「情報収集がピカイチなのにすぐには分からないんだな。」
デスが水を差す。
「だよね。」
リベルさんが苦笑いをする。
「今回のようなことは初めてなんだ。でもおおよその方向は見当をつけて、動いていると思うよ。」
それからしばらく、リベルさんの話を聞いて過ごしてからスモールハウスに戻った。
「今日は色々あったね。」
「そうだな。」
デスが部屋を温めながら、コートを脱ぐ。それに倣って私もコートの汚れを払ってから壁に掛ける。
このスモールハウスも生活感溢れる部屋になってきたなあ。
何もなくてモデルハウスの様な部屋だったけど、今は薬草やらハーブやらが天井に吊り下げられているし、小さい棚にも、瓶や鍋が並んでいる。色々なものが入ってきて、この小さなおうちには物が溢れてきていた。
なんでも収納できるバッグがあるのに、部屋にこうして入ってきて、いつの間にかその物の場所になっている。
「何をニヤついているんだ。」
「ううん。私もよく分からない。夕食にしよっか。」
バッグから食材と調味料を出して、少し考える。
今日は野菜のポトフにしよう。
外では、すぐにできる料理しか作っていないから、家ではじっくり作りたい。
野菜の皮をむいて切ったものから鍋に投入していく。干した魚の切り身も食べる分だけ入れる。
それから臭み消しにハーブを束ねた、なんちゃってブーケガルニを投入。魔法石を発動させて熱を加えて煮込んでいく。
テーブルの方でデスは、今日採取したミントをより分けていた。
採取した薬草やハーブを、半分は生のままバッグに保存。残りの半分は乾燥させるために紐で束ねる。またはザルに広げる。
デスはいつもこうしている。
そうすると、お茶のバリュエーションが増えるらしい。
私は鍋の前に椅子を置いて、時々様子を見ながら、調合全集を出した。
ミントは調合でどう使えるかチェックする。
どうやら、乾燥させたものを使うことが多いみたいだから、私のミントは料理の飾りの分だけ残してあとは全部紐で束ねて、天井に吊るした。
ポトフ、そろそろ良さそうね。
調味料で味を整えてから火の魔法石を止める。
バッグから、パン屋ココで買ったバケットを出してカットする。
テーブルを見るとデスの作業は終わったみたいで、綺麗に片付けられていた。
それを確認したら、お皿とスプーン、バケットを並べていく。デスのポトフは、具を少なめにしてスープを多く。
「今日もお疲れ様でした。」
「ああ、お疲れ。いただきます。」
「いただきます。」
久しぶりの投稿になってしまいましたが、
読んでくださってありがとうございます。
ただ今、花粉症と奮闘中デス。目が……。




