案内してもらいました。
『ココ』をすっかり気に入って、この場所を忘れないようにしようと周りの建物や目印になる物をチェックした。手持ちの地図に大体の場所に印も入れる。
そんな様子をリベルさんはニコニコして、気に入ってくれてよかったと笑った。
「それじゃお腹も膨れたし、案内を始めるね。僕の家は立地のいいところでね、ギルドも近いし、良いお店も多いんだ。」
地図を出すように言うので、リベルさんに向けて広げた。
「正門周辺に殆どの種類のお店が出ているけど、人が多いし商品の流通も早いから、便利は便利なんだけど、こんなお店もいいよってところを案内しようと思ってる。」
「ああ、そういうのいいな。」
「うん。是非お願いします。」
私もデスも、人混みはあまり好きじゃない。願っても無い申し出だった。
リベルさんが嬉しそうに笑ってこっちだと誘導してくれる。私たちはそれに倣ってゆるい坂道を登っていった。
デスが、大丈夫かと時々声かけてくるけど、大丈夫です。少しは鍛えられてきたみたいです。いざとなればヒーラーの杖もあるし。
余裕な気持ちで辺りを眺めながらリベルさんの案内を聞いていく。
なんかいいな。
お日様のような色合いの石畳が暖かい雰囲気だよね。
建物も低い家が多いし、いい具合に肩の力が抜けるような、ホッとする街並みだった。
調合屋。
調合道具、調合の素材、薬草各種がメイン。
素材屋。
武器防具、アクセサリーの素材がメイン。
この二つのお店がこの通りにあって、地図に書き込んだ。
お店を覗いてみたいけど、今日は簡単に案内をするという事だったので、お店は別の日にゆっくり見に行くことに。
更に少し進むと、こじんまりとした広場があった。奥には水場もある様で、水の魔石が設置されていて、自由に使えるみたい。『鑑定眼鏡』をかけたままだったので、何となく鑑定したら、『きれいな水』と文字が出た。
「えっ?」
「む、どうした?」
「きれいな水なんだって。」
リベルさんが眼鏡を見て思いついた様に言った。
「ああ、ここはエルドの森に近いから、森の魔力を含んでいるんだと思うよ。」
「どういう事??」
「普通に魔石から出すだけの水はただの水。広場とか給水所に設置された水はその土地の魔力から流れているから、土地の魔力に左右されるんだ。ここらはエルドの森が近いでしょ。エルドの森の魔力は豊潤で質のいい魔力と言われていてね。」
「じゃあ、質の悪い土地の水は汚い水になるの?」
「はは、そもそもそんなところに誰も設置しないけどね。粗悪な水って出るらしいよ。」
「そうなんだ。」
意外なところで答えを得ることができた。
「ちょっとこの水もらってもいい?」
「大丈夫だよ。」
バッグから水瓶を出して中身を空ける、前に、鑑定してみた。
ファジールの水場で汲んだ水だ。
「普通の水ね。」
水瓶を空にして、新たに水を汲み入れてバッグに仕舞った。
これでさっきと同じ調合でも変化があるかも。
「いやあ、本当に便利だね。」
リベルさんが盛大なため息をついたのだった。
リベルさんが、地図の書き込みを一緒に確認しながら思い出す様に話を続ける。
「この辺りをもう少し進むと、民家が多いんだけど、その中に紛れて食材のお店が数点あるよ。それからエルドの森から西方面には鉱山もあるんだ。」
「へえー。」
そこまで歩けば見えるからと先へ進む。
そんなに登った気はしていなかったけど、結構登ってきたみたいで視界が開けた道でエルドラドが広く見渡せた。
「綺麗!」
ぐるりと取り囲む様に流れる川。その向こうに広がる草原。
その川を渡す橋。正門。
屋根の色が計算された様に綺麗に配置されていてその色の並びが圧巻だった。
「すごい。この国一つが芸術品みたい。」
「上から見るとまた違うでしょ。」
リベルさんも目を細めながら街を見下ろす。
「グレルだ。」
デスが正門を指差して言う。
「えっ、見えるの?」
リベルさんも驚いて目を更に細めながら正門を凝視する。
確かにゴマ粒みたいに人がいるのは見えるけど、どれがグレルさん?
「冗談だ。」
「なんだ。」
思わず苦笑いが漏れる。
「君、冗談なんて言うんだね。」
リベルさんがガクッとして言った。
「ふ。」
「あはは。」
「そうだ、ほら、あれ。」
リベルさんが反対側の景色がよく見えるところに立つと指差した。
「あれが鉱山だよ。」
近づいて見てみると、ここから少し下った辺りにそれっぽい入り口が見えた。近くにはエルドの森で見たような小屋も建っている。
「木の板で入り口を補強されているみたいなあそこ?」
「そうそう。エルドラドの建築物はあの鉱山から取れた石を使っているんだ。」
「へえー。」
「採り尽くして無くなったりはしないのか?」
ふと思いついたように、デスがもっともな疑問を口にした。
ほんとだね。地盤も崩れたりとかしないのかな?
「そう思うんだよね。でも湧き出てくるんだよ。石が。」
「湧き出る?」
「そう。採っても数日経つとまた違った石が育ってるんだ。王都で研究されているみたいだけどまだ解明されていなくて、今のところ採った石におかしなところはないから使われているんだ。このエルドラドは鉱山と森のお陰で潤っているんだよ。」
「すごいですね……。」
それからまた歩みを進めていくと、食材屋さんがあった。
地図に書き込んでいくと、リベルさんが近くにあった石段に腰掛けて汗を拭う。
「他にも、変わり者がひっそり離れたところで武器を作っていたりして、なかなかに発見が絶えないんだよ。」
広い街だからね。と呟く。
「大体利用頻度が高そうなところを案内したつもりだよ。僕の知る範囲だから、きっと君達でも新しいお店とか発見とかあると思うんだ。面白いお店を見つけた時には僕にも教えてね。」
私とデスは快く承諾した。
エルドラドを見下ろせる場所にまた立って、遠くを眺めた。
今私はここで生きている。
デスが隣に来て、同じように立つ。
「デス、とりあえずがむしゃらに、やろうと思ったことを何でもやってみる。」
「うむ。」
「……。」
「……。」
陸地から登ってくる風に、髪が揺れる。
デスのマントがひらりと舞う。
「リベルさん、今日連れてきてくれてありがとう。」
「どういたしまして。」
リベルさんが隣に立って、両腕を広げ伸びをした。
「ここはいい国だよ。でも、なんでも行き届いているわけじゃない。それでも、いい国だよ。」
「うん。」
リベルさんがにっこりと笑ったのを見て、きれいだなと思った。
この国が好きだと。いい国だと。
心からそう思っているのが伝わってきて、嬉しくなった。
羨ましいじゃなくて、本当に嬉しいって思った。
読んでいただきありがとうございます。




