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エルドの森探索。

 ギルドを出て、エルドの森がある場所を探す。

「まな、地図があったぞ。」

 デスが小道の手前にある地図を見つけたみたい。


 地図を見ると、目の前の小道をそのまま頂上に向けて登れば、その途中にあるようだ。ちなみに頂上はお城だった。

 エルドラド城かあ。王族とかお姫様とかが住んでいるのかな。

 今度リベルさんが案内してくれるって言ってたから、その時に色々教えてもらおう。


 緩やかに見える小道の坂を歩いていくと、道の両脇は住宅が連なっていた。洗濯物の匂いとか料理の匂いなどの生活臭もしてくる。小さな広場みたいなところでは、ベンチに女の人が座っていて何か手仕事みたいなことをしながら、広場で遊んでいる子供達を見守っていた。

 そういったものを見ると、ふわふわと地に足がつかないような感覚が、グッと落ち着いてくる。


 そういえばリベルさんの家も真ん中辺りって言ってたけど、こんな感じのところに住んでいるのかな。

 なんてことをぼんやり思いながら歩いていく。

 緩やかに見えた小道も長く歩くと、だんだんと足が張ってきて辛くなってきた。


 うう。


 エルドラドへ来る時も移動は馬車だったからあまり鍛えられなかったみたい。運動不足がここに来て祟っているわ。デスは疲れないのかな。

 坂道の途中で足を止めて息を整える。

 大分歩いたと思うんだけど、まだ森らしきものは見えない。

 地図では真っ直ぐに線を引かれていたけど実際は曲がりくねっているところもあったりして結構な距離を歩いたと思う。


 遠い!

 まあ、頂上のお城もまだはるか先に見えるくらいだ。地図ではギルドとお城の真ん中辺りに森があったけど……。

 そうだ。


 服の下から『ヒーラーの杖』を取り出して自分の体に回復の魔力をかける。

「おおっ!」

 すごーい!足の痛みが取れた!本当に万能だよこの杖。

「デスもかける?」

「いらぬ。」

「そうだ。忘れてた。『盗賊の腕輪』でスピードアップすればあっという間に着くんじゃない?」

「こんな狭い道で使うものなのか?」

「うっ。……ですよね。」

 がっくりしながら、でも回復できるだけマシかと思い直して、再び登り始めた。

「絶対この苦労の分が銀貨一枚なんだよきっと。」

「ふっ。」


 黙々と周りを眺めつつ登り続けると、木の密集した場所が見えてきた。

「もしかして?」

 歩み進めると、『エルドの森』と黒い石の看板が建てられていた。


 やった! 着いたあ。

「遠かったね。」

 ふうっと一息つくと、エルドの森の入り口にある小屋に気づいた。

「もしかして、管理人さんの小屋かな?」

「おそらくな。」

「管理人さんから情報収集しよっか。」


 デスと並んで森の入り口をくぐると、空気が変わった。気温が急に下がったように涼しい。

 濃い緑の香りが別世界を思わせる。

「森だー。気持ちいい……。」

 デスも辺りに目を奪われて木々を見上げている。


「おや、お客様?」


 小屋から出てきた人に目を向けると言葉が止まった。

「う、う、う……。」

「う?」

 不思議そうに見つめてくる瞳がとってもキュート!

「うさぎさん!」

「あれま。」

 小屋の主人、頭からウサギの耳を生やした小柄な半獣さんが苦笑いしている。

「僕みたいなの会うの初めてなんだね?」

「はい!」

「僕は兎人のトータス・アリ。トタって呼んでね。一応ここの管理人をしているよ。」

「トタさん。冒険者のマナです。よろしくお願いします。そしてこっちが。」

「デスだ。」

「はい。まなさんにデスさん。いらっしゃい。」


 黒い毛色がツヤツヤと柔らかそう。耳の毛、ふわっふわ!

 毛の生え際は人とはちょっと違うんだね。

 手は人と同じなのに足はウサギさんの足だ。靴を履かずにそのままの足で立っていた。


 か、可愛いよー!バッグにニンジン入ってるよ。おやつかな。可愛いぃ!

 でも言っちゃダメかもしれないよね。くううぅっ。

 悶えているとデスが冷めた目で視線を送ってきたので、咳払いをして気を取り直した。


「明日こちらのきのこ採取の依頼を遂行するつもりなんです。今日は下見に来ました。」

「……下見?キノコ採取の?……ぷは。」

 え?

 トタさんが口を開けたまま、声なき笑いを堪えるようにお腹を抱えて笑っていた。

「あのー。」

「……ああ、ごめんね。ふふ。久しぶりだよ。ちゃんと準備しようって奴は。ははは。」

「準備するまでもない内容ってことか。」

 デスが少々ムッとしたように言うと、違う違うと手を振る。

「違うんだ。十分下見をしてくれたまえ。質問があれば受け付けるよ。」


 不機嫌になったデスをよそに、どんなキノコの採取なのか、森のどの辺りに行けば良いのか、注意点はないかなどを教えてもらった。


 結論から言うと、もうそのまま入っちゃっていいよってくらい難易度は低い内容だった。

 まあ、Gランクの仕事ってこんな感じなのかな。

 もちろんいろんな種類のキノコが生えているらしいから、間違えないように採取する必要はあったけど、森の最奥地まで入るわけでもないし、魔物もなし。

 また今日来た道を明日繰り返すのもなんだから、今日そのまま依頼を受注してしまうことにした。

 でもトタさんはニコニコして、きちんと下調べすることは冒険者として当たり前のことだよって褒めてくれました。

「昨日来た冒険者は仕事を舐めているクソだったしね。」

「え?」

 今、可愛いそのお口、クソとか言ってませんでした?

「トタさん?」

 ん? と笑いながら聞き返してくるので、気のせいと思うことにします。はい。


 ギルドカードを掲示して、依頼受注してデスと共に手提げカゴを持って、採取開始です。

 森の中に入っていくと、涼しくて、空気が美味しくて、鳥の声がチチッと聴こえるし、キノコも木の根元によく生えていて比較的簡単に見つけられた。丁寧に土を払いながら採取し、デスと会話も挟みつつ進めていくと間もなくカゴはいっぱいになった。

 他にも、ちょっと変わった形の木が生えていたり、見たことのない山菜なども生えていて、この森の依頼はランクGの他にもあるかもしれないね。とても面白かった。


 あとは、一人三本までは許可を取ってあるので、食材としていただくことも忘れない。美味しく食べられるキノコの種類を聞いて、どんなキノコ料理にしようかデスと話しながら採取した。楽しみです。


 トタさんにいっぱいになった手提げカゴを渡すと、それぞれのきのこを一瞥してからお疲れ様でしたと告げられた。

「君たちみたいな冒険者は好きだよ。応援しているからまた来てね。」

「ありがとうございます。是非!」

 トタさんがデスに視線を向けてにっこりと笑う。

「君もいい仕事するね。」

「……。」

 デスが黙って黙礼する。

 よし、あとはギルドに報告して完了ね!

 トタさんにお礼とお別れを告げて来た道を戻り、ギルドへ報告に向かった。


 ギルドは、朝とはまた違った賑わいを見せていた。

 朝は掲示板前が賑わっていたけど、今は受付が混雑していた。受付の職員さんも朝より多く出ている。


 とりあえずランジュさんのいる列に並ぶことにして、順番を待つ。

 しばらくすると、私の後ろにも列ができていて、何気に後ろを見たら、朝同じランクGの掲示板を見ていた冒険者が二人立っていた。

 お互いあっと気づいたように目線を合わせたら、声をかけてきた。

「朝も会ったよね、掲示板の前で。」

「はい。」

「じゃ、君たちもランクGっしょ? 同じじゃん。僕はバッシュ。相棒はザイトだよ。よろしく。」

「私はまな。彼は。」

「デス。」

「よろしくお願いします。」

「へえ、こんな子供が冒険者? 確かに年齢制限はゆるいけど、それじゃランクはしばらくGのままじゃない?」

「そうなんですか?」

「そりゃあ! 子供に任せられないっしょ。」

 デスは二人に興味ないと言わんばかりに前を向いたままだった。

「それに君も冒険者なんてやってて大丈夫?僕がパーティを組んであげようか?」

「おい、やめとけよ。どうせ仲間にするなら……。」

 もう一人のザイトさんが耳打ちしているけど、まる聞こえですよ。

「デスと二人で大丈夫なので。」

「えー、そうは見えないけどなあ。まあ、受ける依頼によっちゃ、大丈夫かもね。」

 何故だろう。何かこう、すごーく下に見られているような扱いは。

 まあ、子供と女一人じゃ、あまり頼りなく見えるのかもしれないけど。

 とりあえずデスに倣ってちょっと黙礼をしてから前を向く。

「あれ? 怒っちゃったのかな?」

 ほっといてくれないかな。ちょっと面倒くさい……。

「ねえねえ、怒っちゃったの?」

「いえ、もうすぐみたいなので。」

 受付の列が残り一人になっていた。

「そっか。まあ、何かあったら頼りなよー。」

「ありがとうございます。」

 とりあえずサラッと流しておきましょう。


 受付が空いたので前に進む。

 ランジュさんが気づいてにっこりと笑って迎えてくれた。

「どうしましたか?」

 依頼の完了を報告すると、少し驚いて、ギルドカードの提示を求めてきた。

 ギルドカードをそれぞれ出して渡す。


 何やら操作しているけど、こっちの世界ってパソコンとかはないよね。どんなの使っているんだろう?

 モニターらしきものはチラッと見えるけど、こちらからは見えない。

 ちょっと気になるなあ。


「ほんとに終わっていますね。トータスさんのところですよね。いい仕事されたんですね。」

 そう言ってにっこり笑ってギルドカードを返してくれた。

「報告受け付けました。お疲れ様です。こちらが報酬になります。お確かめ下さい。」

 銀貨二枚をもらって、デスと視線を合わせてうなずき合い、ポーチにしまった。

「なあ、あんたら、あの兎のところ行ったの?」

「……トタさんのことですか?」

「そう、なんかムカつかなかった?」

「???」

 そんな要素あったかな?

「丁寧に説明してもらいましたけど……?」

「なんだよあいつ。女子供には優しいってか!」

 何だろう。触らぬ神に祟りなしっていうよね。撤退撤退。

「それではお先に失礼します。」

 それからは受付のランジュさんが続きを相手していたけど、何だったんでしょうね?


 ギルドから出ると、もう日が暮れ始めていた。


「デス、もう戻ろう。」

 ファジールでの夕暮れを思い出した。

『隠密』のネックレスをバッグから出そうか……。

「大丈夫だ。私がいる。武器もスキルもあるから、任せろ。」

「……うん。ありがとう。私も、土魔法あるしね。」

 デスがニッと笑って返してくれて、安心できた。


 そうね。もし変な人が来ても土魔法で落とし穴掘って沈めよう。

 そう心構えると何も起こらず、無事に宿まで帰れた。


 宿では、女性専用だけど子供は例外、と認めてもらってシングルからツインの部屋に変更した。

 子供じゃないんだが……とデスはポツリと言っていたけど、見た目は子供なんだからしょうがないよね。

 でも良かった。他の宿を探さなくちゃいけないかと思った。


 そういえば、リベルさんが案内してくれるって言っていたけど、いつどこで待ち合わせとか約束していなかったなあ。


 今日はいっぱい歩いたし、初仕事もしたからかなり疲れちゃったな。

 デスと夕食を済ませて、今日は早く休んだ。

 デスは、私が寝た後も一人テイ茶を飲んで寛いていたようだった。



読んでいくださってありがとうございました。

半獣のトタさん初登場です。

彼にはこれからも関わってもらいたいと思っています。

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