エルドラドのギルド。
朝食を済ませた後、購入した地図を見ながら、冒険者として登録するためにギルドへ向かった。
西の正門と東の正門の間あたりに、それはさながら神殿のように格調高いギルドが建っていた。
「ここがギルド。大きいね。」
「うむ。」
田舎者よろしくとばかりに、目の前の白い建物に圧倒されていた。
ギルドというのはもう少しこじんまりしていて、冒険者が気軽に出入りするような、喧騒の激しい場所っていうイメージは、綺麗に消え去る。
「入ってもいいよね?」
「他にも人の行き来はあるんだから、大丈夫であろう。」
ギルド前の広い階段を登り、広場を通過して中に入る。
正面に受付のカウンターがあり、数人の人が応対していた。
ファジールで見たのと似ている。両脇には掲示板や別室がいくつかあり、さらに奥に進む廊下も見えた。デスとともに前へ進み、受付の列に並ぶ。
朝は冒険者とかが多いのかな。外から見たのとは打って変わったように人が多く賑わっている。
次の方どうぞと案内されたので、空いたカウンターに進むと、若い男の職員だった。
「おはようございます。受付のカルダと申します。どのようなご用件で?」
「ギルドの登録をお願いに来ました。」
「どちらが?」
カルダさんは、私とデスを相互に見ながら尋ねる。
「二人ともです。」
「承りました。身分証明になるもの、またはパスカードの掲示をお願いします。」
ポーチからパスカードを出してカウンターに置く。デスもコートのポケットからカードを出して横に置いた。
カルダさんは、一瞬デスのカードを見て片眉をくいっとあげたが、すぐに元に戻る。
「初めてということで、ギルドの説明をしましょうか?」
表情をあまり変えない人だなあ。
「お願いします。」
「ではこちらを。」
カルダさんは、カウンターの下から使い古したようなパンフレットを出してきた。
「こちらには、当ギルドの規約、歴史、信条を箇条書きにしたもの、ランクについてなど、これ一冊でギルドのことが理解できる内容になっております。お求めになられるなら半銀貨頂戴いたします。さて、簡潔に必要箇所を説明させていただきます。 」
カウンターに出したパンフレットを開いて、私たちにもわかりやすいように説明をしてくれた。
・ランク制である。最初に登録する時は年齢、経験、実務関係なくまず最下ランクである『ランクレベルG』から始める。ランクはGからAまである。全てクリアした人はS級冒険者とランク付けされ、ランクの降格から免除されます。
・ランクアップは依頼達成によるポイント制。依頼だけではなく貢献度にもポイント付加あり。
・依頼受注は、ギルド内の掲示板もしくはギルド職員からの直接の依頼などのみランクに反映。個人で受ける依頼には当ギルドは関与しません。自己責任となります。ギルドの依頼には、ギルド印が押印されています。ご注意ください。
・依頼の受注、達成または失敗した場合でも、ギルドへの報告義務があります。
・民間人への迷惑行為は禁止です。発覚した場合ランク降格またはギルド排除対象となります。
・他の冒険者への強引な勧誘は禁止。発覚した場合処罰対象となります。
・他の冒険者との強引な武器防具等の譲渡不可とします。発覚した場合厳罰対象となります。
・他の冒険者とチームまたはパーティを組むことは自由にできますが、トラブルなどは自己対応をしてください。ギルドは関与しません。仲裁を求める場合は有償で『ギルド補佐部(相互の意見をまとめ仲裁する部署)』に依頼は可です。
・生きることを最優先すること。
思っていたよりしっかりと決まりごとがあるんだね。もっと気楽な便利屋みたいなものかと思っていたのが恥ずかしいくらい。
ギルドの規約は細かく設定されていて窮屈に思う人はいないのかなとも思ったけど、そのかわりに恩恵にもあずかれた。例えば、買い物をする時割引をしてくれるとか、レアな魔道具の売買優先度が高いとか。初心者にはもちろん、全てのランクの冒険者へのアフターケアもきちんとされているようだ。これはいいシステムだと思う。
カルダさんは、一通り説明を終えると、質疑応答をしてくれて、無事ギルド登録をさせてもらえることになった。
ギルドカードも、パスカードを作る時と同じように、透明なカードに手を当てて作った。
デスは朝作ったカードと同じデザインになったけど、私は形だけ少し変化した。前は幾何学模様だったのに、今回は緑とピンクの蔦が絡み合ったような植物の絵になっていた。絵柄って変化するんだね。不思議。
パスカードはそのままギルドで返却して、金貨二枚も返してもらった。
そして収納カードも一枚ずつもらった。後でわたしにも使えるか要チェックだね。使えなくてもデスに使って貰えばいいよね。
「ギルドカードは各国でも身分証明に有効です。そして高ランクになれば優遇される内容も高くなりますよ。あと裏を見てください。」
そう言ってカードの裏を見るように促すので、めくってみると、色々機能が掲載されているようだった。
「一番上の数字がギルドランクになります。お二人とも登録したばかりなので、Gと記載されていますね。」
「はい。」
「ああ。」
「そしてその次の数字が、依頼ナンバーです。依頼にはそれぞれナンバーが割り振られていて、受注するとそのナンバーが記載されるようになっています。お二人はまだ受けていないので、ゼロとなっております。」
「なるほど。」
「その下には、魔石がはめ込まれていまして、これは通信手段として使えます。」
「通信?」
カルダさんがデスに向かって話す。
「ええ。お試しになってください。まずあなたがその魔石に魔力を当ててください。そして、相手を思い浮かべてください。ええ、まなさんをです。」
デスがカードの魔石に魔力を当てて「まな」というと、私のカードの魔石が灯った。
「まなさんはその魔石が光ったのを確認したら魔力を当ててください。」
魔力を当ててみると、何かが繋がったような感触がした。うまく言えないけど魔力同士がくっついたというか。
「話してみてください。」
デスが、試す。
「まな、俺だ。」
「!!」
聞こえる。頭に直接語りかけられているような今までに感じたことのない感触だった。
「はい、聞こえています。」
デスも少し驚いたような反応をした。
「こういう風にして使います。どれだけ距離があっても通信できるようになっています。これはギルドで相手の登録が必要になりますが、お二人はお仲間のようでしたので、必要だろうということで登録させて頂きましたが、ご友人などと登録されるときは受付まで再度いらしてください。一人では登録できませんので必ずご一緒にお願いします。」
「わかりました。」
「ただし上限がございまして、五名までしか登録できません。他の登録者と連絡を取りたい時はギルドまで来ていただいて、連絡を取りたい人を指定することはできます。指定された場合、この魔石の色が緑になりますので、そうしたらこちらのギルドか各国のギルド支店の受付までおいで頂きますと、連絡を取り合うことはできます。」
へえ。奥が深いね。カード一つなのに。
って!
今、私ギルドカードに魔力通じたよね?
「デス、今度は私からかけてみるわ。」
「分かった。」
デスがカードに流していた魔力を消すと、繋がっているような感覚も消えた。
まず魔石に触れて、魔力を、流す!
「……。」
「……。」
「???」
私からは使えないのかあ。ダメじゃない。
ガックリと肩を落とす。
「もしかして、使えないのですか?」
カルダさんが驚いたように目を見開く。
「それは不便でしょう。……少し時間を頂ければ、何か方法はないか調べておきますよ。」
「はい。お願いします。」
カルダさんは頷くと、襟を正して表情を引き締めた。
「それでは、冒険者としての出発おめでどうございます。当ギルドは良き相談相手となれますよう精進して参りますので末永くお付き合いをよろしくお願い申し上げます。」
初めての冒険者には言うことになっているらしい言葉をあげてにっこりと笑った。
私たちはギルドのパンフレットを一冊購入して、初仕事受注の為、冒険者が混雑している掲示板の方へ依頼チェックに向かった。
読んでくださってありがとうございます。
ギルドに無事登録できました。




