少年デスと再スタートです。
デスは元々成人していると知らされて驚いた。
神様のイタズラで子供に戻されたようだと怒っていたけど、そんなに真剣には怒っていなくて、どこか嬉しそうに見えなくもない。
動けるようになってデスもやっぱり嬉しいのかも。
それに私は、人形のデスしか知らないから、十分大きくなったように感じる。いくつくらいかな?『木の葉の手』のロイくんくらいかな。
見た目は人形だった時と全く同じだった。
でも声は、元のまま大人のような低い男の声だったから、子供のデスがこんな声で喋っていると不思議な感じがする。
それより、それより、デスも一緒に楽しめるようになったのが嬉しい!
一緒にスープを飲んで感想を言い合ったり。スモールハウスを設置する場所を探したり。
一緒に冒険に出かけたり。スモールハウスでまったりしたり。時には外でピクニックをしたり。
人形だった時とやることは変わらないけど、楽しみが倍増する感じかな。
た、楽しみすぎる!
「デス、私すっごく色々楽しみでワクワクしているんだけど、デスは大丈夫?これからも一緒に居てくれる?」
「ふっ、こちらこそ。」
「うん。」
えへへへと顔がにやけてしまう。ずっと引きこもっていたから、タガが外れちゃったかな?
「まな、一つ話しておくが、魔力や簡単な魔法は今まで通り使えるようだが、人形の時ほどの力はない。」
「そうなの? あ、子供になったから?」
「そこは分からぬが。さっき見たカタログで改めて取得するようになっていると思う。」
「だから魔法一覧とかあったのね。」
改めてデスのページを開き、必要そうなところをチェックする。
『進化編デスコーナー』
デス専用魔法一覧。
デス専用装備品一覧。
スープセット(好きな味を選べるよー)。
お着替えセット。
ヘアリボン一覧。
死神の書。
死神の大ガマ。
デスは、デス専用魔法一覧から得意な『闇魔法』を欲しがっていたけど、ポイントが高くて買えなかったので、今回は『威圧』と『真空魔法』を取得した。
闇魔法って、何かこう禍々しいイメージがないでもないけど。
武器は召喚で出せるらしい。すごい。
じゃあこの死神の大ガマっていうのは何かというと、スキルの一種らしい。
あとは『お着替えセット』も購入。
黒い服のオンパレードだったけど、デスは黒以外は着る気がしないみたい。
私も『独占のお守り』という魔道具をポイントで買って、バッグに私とデス以外の人は触れられない魔法をかけた。
バッグも私にしか使えないみたいだけど、バッグ自体を取り上げられたらどうしようもないから。
身の守りは装備している『盗賊の腕輪』に付加されているし、デスもいるからしばらくこれで様子を見てみようってことで落ち着く。
あとは、この国を散策してから決めても遅くはないとデスの意見で、ひとまずおいておくことにした。
「まな、私もギルトに登録する。」
「そっか……。うん、そうだね。それに、他にも色々辻褄合わせなくちゃいけない事もあるね。」
「うむ。」
デスと色々話し合った結果、設定を決めました。
『デスは元の国にいた時からの相棒で、村の外れにある森の魔女にかけられた呪いで人形にされていた。
森の魔女から遠く離れたおかげで、呪いの効果が薄れて元に戻れた。』
すごくベタな設定だけど、他に言いようが思いつかなくて。
デスは、魔女は本当にいるから嘘くさくはならないと言ってくれたので、この案で決定した。
朝食はひとまず置いといて、まずは正門へ向かって、デスのパスを取得するためにバルさんに会いに行こう。
バルさんなら人形のデスを見ているから、もしかしたら何か気づくかも。
ポーチに金貨も用意した。
デスには、窓から脱出して外で待ってもらい、私一人受付で鍵を預けて宿を出る。
昨日到着した時はもう夕方前だったし、疲れていたからあまり見れなかったけど、正門まで行く道々で綺麗な彩りの植物やスッキリした青空に癒されながら歩く。
正門近くとあって宿やお店が所狭しと陳列していて、朝早くからお店開きの準備を済ませて、開店しているところも多かった。
「こう言う風景だけを見ると、とても魔物がいる世界には見えないね。」
「そうだな。」
「……なんか手元がさみしいな。」
「??」
「ほら、いつもデスを抱いて歩いていたから。」
「ああ、……こっちに来てからは視線が痛かったな。」
「あはは。」
正門が見えてきた。バルさんはいるかな。
「いた。グレルさんも一緒だ。」
「ああ。」
「グレルさーん、バルさん、おはようございます。」
二人が振り向き、まなだと分かると、おうっと手を上げてくれた。
すぐにデスに気づいたようだ。
「誰だあ、この坊主は。」
「昨日の、……人形?いや、すまない。似ていたもので。」
さすがバルさん鋭い。
「はい、デスです。」
「はいですです?」
「いえ、この子の名前はデス。」
声を潜めて、
「ここだけの話にして欲しいのですが、昨日まで人形だったデス、です。」
デスは黙って目礼だけする。
「……。」
「……。」
二人とも動きが止まっています。
うん、わかります。にわかには信じられないですよね。
「どういうことだ?」
さすがグレルさん。冷静に応対してきたね。
私たちは、先ほど決めた設定を事実のように話した。
「そうか……。ここへきたのは。」
「デスのパスカードが欲しかったので。お願いできますか?先に入国しちゃっていますけど……。」
「ちょっと待ってな。」
バルさんが、窓口からパスカードをもらい受けて戻ってきた。
「呪いの類があるなら、カードにも影響があるかも知れんが、とりあえず信用しよう。」
デスがパスカードを受け取る。
すると、カードが赤く変色し、中央に黒いいばらの模様が湧き出て形作っていく。やがてその形はカマのようなものになり、カードの縁が金色に変化した。
これ、死神さんのカマだ。
「こ、これは……!」
バルさんとグレルさんが絶句する。
「金の縁。……こんな子供が……。」
「何か?」
デスが怪訝そうに尋ねる。私もちょっと心配になる。
昨日、パスカードに黒が入っている人は中に入れないと言ってなかった?
バルさんがハッとして、カードをデスに返した。
「いえ、大丈夫です。金の縁が出る人はなかなかいないんですよ。金は黒を打ち消す。入出国は大丈夫ですよ。」
「……金の縁にはどう言う意味があるんだ。」
「色々あるんですよ。上級聖職者だとか、王族とか、とにかく普段お目にかかれない色なのでね。このカードの者には身元を尋ねてはいけないという決まりがあるんでね。それはご本人が一番理解できるのでは?」
「……そうだな。」
スッとカードをコートの胸ポケットにしまう。
「礼を言う。」
「いや、この後オルテシアたちにもいずれ会うんだろう? このカードのことはあまり口外しなくても大丈夫だぞ。」
「分かった。」
あまりおおっぴらにするなってことかな?
正門から再び中へ入り、朝食を食べられるところを探しながら散策する。
「このパスカードとやら、なかなか有能だな。本質を見抜くか。」
「死神さんってすごかったんだね。」
「……。」
「でも、カードを無事取得できてよかった!」
「ふっ、そうだな。」
私たちはオープンカフェのスープとパンのメニューに惹かれて、デスとの初ブランチを楽しんだ。見た目はオニオングラタンスープと少し似ていた。
チーズあるんだね。デスは、それはそれはもう、本当にスープが好きなんだなってくらい、一口一口を大事に味わって飲んでいた。美味しそうに食べるデスを見ていて嬉しくなる。
私も一緒にゆっくり味わって、パンも美味しかったのでもう一つ頼んで、これからの予定を軽く話し合った。
読んでくださってありがとうございます。




