死神のぼやき・初めての野営
やれやれ。
しばらくはホットドリンクはお預けか。
まなはマッチョに気に入られたのか、心配で保護者気分なのか……多分後半だな。
色々と世話を焼いてお節介のようだが、必要なことを教えてもらえる者に会えたのは幸運か。
私にも、安心してこの世界をより知る手段にはなっている。
だが、私の正体は秘匿することにしている。どんな目でみられるか予想もつかぬからな。
お陰で私はじっと黙っておらねばならぬ。
いつのまにか、まなと毎日会話することが当たり前になっているな。
フッとため息をつく。
目的地まで随分あるようだ。
……我慢せねばならんのか。
まなと私の周りに結界でも張って話すか。
いやいや、そんなことをなぜ私が進んでせねばならんのだ。
いやしかし、まなから相談があるとしたら、そうせざるを得ないだろう。うむ。
今は夕食の支度を終えて、食べ始めるようだ。
人間とは不便だな。
食べずに済めば荷物も減るだろうに。
ん?
まながお皿を持ってこちらに向かってくる。
テントの壁際に座らせた私の前にスープを置く。
「デス、今日のスープよ。携帯食で作ったから具が少ないけど。」
ふわっとスープから、保存食特有のスパイシーな香りが漂いいい気分になる。
だがおい、大丈夫か?
マッチョ達の方に意識を向けると、残念な子を見るような眼差しでまなを見つめている。
「人形に食べ物を供えるなんて、変わった子だね。」
「しっ、隠密を使うくらいだ。あの人形が友達だと思っているのかもしれん。」
「確かにぃ。触らせてくれないくらいだものねえ。」
ぐぐ。
私のせいで、残念な子にされているぞ。
なぜか分からぬが、腹がたつな。
「デス、気にしないで。本当にデスを相棒だと思っているから。」
まなが小さい声でにっこり笑って言う。
その笑顔に、いつもと違うものを感じたが、何かは分からなかった。
分からなかったが、心に何か温かいものが灯ったような気がした。
そうか。大丈夫と言うなら大丈夫なんだな。
「ふん。」
私の素っ気ない返事にもまなはにっこり笑う。
「ふふ。じゃ、また後でね。」
ふん。仕方のない奴だ。
まあ、もし奴らがそれでまなを傷つけようものなら、狩ればいいだけの話だ。
……私は人間になど興味なかったはずだが。
仕事から解放されて、いや、やめよう。
考えてもしょうがないことだ。
まなの持ってきてくれたスープの香りを楽しむ。
飲みたい。
スープの香りに、つい本音が心に漏れる。
しかしそれはかなわぬ。
何度目かのため息がフッとこぼれた。
ちょっとずつ、死神さんにも心境の変化が訪れているようです。




