世界均衡理論
世界は一つではない。
第三世界。
第四世界。
そして、その先にも存在する世界。
しかし、それらは独立しているわけではなかった。
すべては一つの天秤の上にある。
その真実を知った時。
カイトたちは、最も残酷な選択を迫られる。
地下施設・観測室。
朝早くにもかかわらず、観測者たちは全員集まっていた。
中央のモニターには、第三世界と第四世界の地図が並んで映し出されている。
第四世界のミラが静かに口を開いた。
「今日は、この世界の真実を話します。」
部屋が静まり返る。
カイトたちは真剣な表情で前を向く。
第四世界のミラは端末を操作した。
画面に一つの図が映し出される。
天秤だった。
左右には、
第三世界
第四世界
と書かれている。
「これが"世界均衡理論"。」
現在のミラが息をのむ。
第四世界のミラは説明を続けた。
「二つの世界は、幸福と不幸を分け合っています。」
「世界全体の『幸福』の量は一定なの。」
ジンが首をかしげる。
「どういうこと?」
第四世界のカイトが代わりに答えた。
「例えば、第三世界で多くの人が救われれば、その代償として第四世界では多くの人が苦しむ。」
イロンが静かにつぶやく。
「……天秤か。」
第四世界のミラはうなずく。
「逆も同じ。」
「第四世界が救われれば、第三世界が崩壊する可能性がある。」
その言葉に誰も声を出せなかった。
カイトは拳を握る。
「そんなの、おかしいだろ!」
第四世界のカイトは少し笑う。
「俺も最初はそう思った。」
「だから何度も世界を救おうとした。」
彼は窓の外を見る。
崩壊した街。
紫色の空。
「でも、そのたびに第三世界で異変が起きた。」
現在のミラが震える声で尋ねる。
「……だから、この世界は……」
「見捨てられたんじゃない。」
第四世界のミラは首を振る。
「違う。」
「私たちが選んだの。」
その一言に、観測室が静まり返る。
その時だった。
ピーーーッ!!
警報が鳴り響く。
観測者が叫ぶ。
「GLITCH反応急上昇!」
「ナイトアサシンがゲートへ接近!」
モニターには、巨大な紫色の裂け目が映る。
その前に立つナイトアサシン。
彼は静かに空を見上げていた。
そして。
こちらへ視線を向ける。
「観測者。」
低く響く声。
「選べ。」
「第三世界か。」
「第四世界か。」
その言葉と同時に、モニターは真っ白になった。
地下施設が大きく揺れる。
ドゴォォォン!!
第四世界のカイトが剣を抜く。
「……来たな。」
現在のミラも観測端末を構える。
「みんな、戦闘準備!」
カイトは仲間を見る。
ジン。
イロン。
ミラ。
そして、第四世界の仲間たち。
誰も逃げようとはしなかった。
第四世界のカイトは小さく笑う。
「最後の観測を始めよう。」
その笑顔には、どこか覚悟が宿っていた。
第19話 END
第19話を読んでいただきありがとうございます。
ついに「世界均衡理論」の全貌が明らかになりました。
第三世界と第四世界は、幸福と不幸を分け合う存在。
そのため、どちらか一方だけを救うことはできません。
次回、第20話は第2部完結です。
第四世界の観測者たちが下す最後の決断。
そして、第三世界へ託される未来。
第2部の結末を、ぜひ見届けてください。




