最後の観測
観測とは。
未来を変える力ではない。
未来を託す勇気だ。
第四世界。
その世界は今日。
最後の観測を迎える。
警報が鳴り続ける。
地下施設は激しく揺れ、天井から砂埃が落ちる。
モニターには赤い警告が並んでいた。
GLITCH侵食率 99.8%
世界均衡維持 限界
観測者たちは端末を握りしめる。
誰一人として逃げようとはしなかった。
第四世界のカイトが静かに前へ出る。
「みんな。」
「時間だ。」
その一言で、施設の空気が変わる。
現在のカイトは前へ出る。
「待ってくれ!」
「まだ方法はある!」
第四世界のカイトは首を横に振った。
「もう試した。」
「一回や二回じゃない。」
彼は苦笑する。
「何十回も。」
現在のカイトは驚く。
「何十回……?」
第四世界のミラが静かに答える。
「この世界のカイトも転生者だった。」
「何度も未来を変えようとした。」
「でも、そのたびに第三世界が崩壊へ近づいた。」
カイトは言葉を失う。
ジンが叫ぶ。
「じゃあ何のために戦ってきたんだよ!」
沈黙。
第四世界のカイトは笑う。
その笑顔は、不思議と穏やかだった。
「守るためだ。」
「俺たちの世界じゃない。」
「お前たちの未来を。」
観測室の奥で、第四世界のミラが一冊のノートを取り出す。
黒い表紙。
少し擦り切れた観測ノート。
彼女は現在のミラへ差し出した。
「受け取って。」
現在のミラは震える手で受け取る。
「これは……」
「私たちの七年間。」
「失敗も。」
「希望も。」
「全部ここに書いてある。」
現在のミラの目から涙がこぼれる。
突然。
施設全体が激しく揺れる。
ドォォォォォン!!
外壁が崩壊した。
紫色の光が施設へ流れ込む。
ナイトアサシンが姿を現した。
静かに。
ゆっくりと。
そして現在のカイトを見る。
「選べ。」
「第三世界。」
「第四世界。」
カイトは叫ぶ。
「そんな選択できるわけないだろ!」
ナイトアサシンは表情を変えない。
「ならば。」
「世界は滅ぶ。」
その瞬間だった。
第四世界のカイトがゲート制御装置へ走る。
現在のミラが叫ぶ。
「何をする気!?」
第四世界のカイトは振り返らない。
「世界均衡理論。」
「どちらか一つしか残れないなら。」
彼は笑う。
「俺たちが選ぶ。」
第四世界のミラも隣へ立つ。
他の観測者たちも。
全員が装置を囲んだ。
誰も迷っていない。
現在のカイトは走り出す。
「やめろ!!」
しかし。
透明な壁が現れる。
第四世界のミラが静かに言う。
「ありがとう。」
「ここまで来てくれて。」
「でも。」
「あなたには帰る場所がある。」
少女がカイトへ手を振る。
「海を見てみたかったな。」
ジンは唇を噛む。
イロンは静かに目を閉じる。
第四世界のカイトが最後に言う。
「未来は。」
「託した。」
装置が起動する。
世界全体が白い光に包まれる。
第三世界へ続くゲートが開く。
猛烈な風が吹き抜ける。
カイトたちは光の中へ押し戻される。
「先生!!」
「カイト!!」
叫びは届かない。
ゲートは閉じ始める。
最後に見えたのは。
第四世界の仲間たちが笑っている姿だった。
第三世界。
カイトたちは学校の校庭に倒れていた。
空は青い。
鳥が飛んでいる。
まるで何事もなかったような朝。
しかし。
現在のミラは胸に抱えた観測ノートを見つめる。
その表紙には、新しい文字が浮かんでいた。
『観測者へ。次はあなたたちの番です。』
その瞬間。
空の彼方で、紫色の小さな亀裂が一瞬だけ走る。
誰も気づかなかった。
ただ一人。
ナイトアサシンだけが、その光を見上げていた。
「……観測は終わらない。」
第二部 完
第2部「第四世界編」を最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。
第四世界は崩壊しました。
しかし、それは敗北ではありません。
自分たちの世界を犠牲にしてでも、第三世界の未来を守る。
それが第四世界の観測者たちの選んだ答えでした。
カイトは未来を託され、ミラは七年分の観測ノートを受け継ぎます。
ここから物語は第3部へ。
世界は救われました。
……ですが、観測はまだ終わっていません。
第三世界に残った小さなGLITCH。
ナイトアサシンの真の目的。
そして、カイトの「三回目の転生」の意味。
すべての謎は、これから明らかになります。
worldGLITCH
第四世界 観測終了。
第三世界 観測継続。




