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失われた海

世界が滅ぶ時。


最初に消えるのは街ではない。


人々の思い出だ。


第四世界には海がない。


空も。


学校も。


当たり前だった日常も。

朝。


地下施設の食堂。


珍しく穏やかな時間が流れていた。


ジン。


「平和だなぁ。」


イロン。


「三十分後には何か起きそうな台詞だな。」


ジン。


「やめろよ!」


カイトは少し笑う。


第四世界に来て初めてだった。


こんな風に笑ったのは。


その時。


昨日話していた少女が近づいてくる。


「お兄ちゃん。」


カイト。


「どうした?」


少女。


「海って本当に青いの?」


食堂が静かになる。


カイト。


「青いよ。」


「晴れの日は空と海の境目が分からないくらい。」


少女の目が輝く。


「見てみたいなぁ。」


第四世界のカイトが目を伏せる。


「第四世界にも昔はあった。」


全員が振り返る。


第四世界のカイト。


「海も。」


「祭りも。」


「学校も。」


その声は静かだった。


昼。


カイト達は第四世界のカイトに案内され地上へ出る。


瓦礫の街。


壊れた道路。


止まった信号。


やがて。


一行は高台へたどり着く。


そこには。


巨大な窪地。


カイト。


「これって……」


第四世界のミラ。


「海だった場所。」


風が吹く。


何もない。


ただ広い大地だけが続いていた。


ジン。


「こんなの嘘だろ……」


第四世界のミラ。


「GLITCHに飲み込まれたの。」


カイトは言葉を失う。


その時。


イロンが立ち止まる。


「待って。」


全員が振り返る。


イロンは目を閉じる。


風。


地面。


そして。


鉄。


微かな違和感。


イロン。


「鉄骨が揺れてる。」


ジン。


「風じゃないのか?」


イロン。


「違う。」


「磁場が乱れてる。」


カイト。


「磁場?」


イロンは静かに答える。


「私はイロン・バトラー族。」


「鉄の声が聞こえる。」


沈黙。


ジン。


「いや待て待て。」


「鉄の声って何だよ。」


イロン。


「説明が難しい。」


「でも鉄は嘘をつかない。」


イロンは海だった場所を見る。


「何かいる。」


その瞬間。


地面が揺れる。


ドゴォォォン!!


巨大な影。


砂の下から現れる。


GLITCH生命体。


第四世界のカイト。


「伏せろ!!」


怪物が咆哮する。


しかし。


イロンは動かなかった。


目を閉じる。


磁場。


鉄骨。


瓦礫。


全ての位置を感じる。


「右に避けて。」


全員が動く。


次の瞬間。


怪物の攻撃が空を切る。


ジン。


「見えてたのか!?」


イロン。


「見えたんじゃない。」


「感じた。」


再び攻撃。


イロン。


「次は左。」


回避。


完全に読んでいる。


第四世界のミラ。


「これがイロン・バトラー族……」


イロン。


「第三世界でカイトが帰ってきた時。」


「小さなGLITCHが発生した。」


「その影響で私達の力は強くなった。」


カイト。


「私達?」


イロン。


少しだけ寂しそうに笑う。


「最後の一人だけどね。」


沈黙。


ジン。


「一人で十分すごいよ。」


イロンは少し驚いた顔をする。


そして。


少しだけ笑った。


戦闘終了。


空を見る。


そこには紫色の裂け目。


だが今日は。


少しだけ平和だった。


第17話 END

今回は久しぶりに日常成分多めの回でした。


そして。


イロンの正体。


「イロン・バトラー族」。


鉄と磁場を感じ取る種族の最後の生き残りです。


カイト。


ミラ。


ジン。


そしてイロン。


少しずつ仲間達の秘密も明らかになっていきます。


次回。


第18話「地下施設の授業」


第四世界で。


ミラ先生の授業が始まります。

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