観測者の街
崩壊した世界にも。
まだ生き残った者たちはいた。
彼らは逃げなかった。
諦めなかった。
最後まで。
世界を観測し続けた。
空を埋め尽くす黒い影。
第四世界のカイトが叫ぶ。
「走れ!!」
全員が瓦礫の街を駆け抜ける。
背後では無数のGLITCH生命体が迫っていた。
ジン。
「多すぎるだろ!!」
イロン。
「戦力差が大きすぎる!」
ミラは後ろを振り返る。
空。
黒い影。
紫の裂け目。
そこは。
既に世界の終わりだった。
数分後。
第四世界のカイトが地下鉄の入り口へ飛び込む。
「こっちだ!」
重い鉄扉。
認証装置。
ピッ。
扉が開く。
全員が中へ滑り込む。
直後。
ドォォォン!!
外側に衝撃。
ジン。
「あぶねぇ……」
第四世界のカイト。
「ここならしばらく安全だ」
地下通路を進む。
長い。
暗い。
静かだ。
やがて。
巨大な空間へ到着する。
カイトは目を見開いた。
「これは……」
地下都市。
学校ほどの大きさの施設。
観測装置。
発電設備。
食料庫。
医療室。
そして。
そこには。
人々がいた。
生存者。
子ども。
大人。
老人。
みんな疲れた顔をしている。
しかし。
その目は死んでいなかった。
一人の女性が近づいてくる。
長い黒髪。
紫色の瞳。
カイトが固まる。
ミラも固まる。
そこにいたのは。
第四世界のミラだった。
「久しぶり」
現在のミラ。
「……私」
第四世界のミラは少し笑う。
「正確には別世界の私だけどね」
ジン。
「頭が追いつかない」
イロン。
「私も同感だ」
第四世界のミラは全員を案内する。
施設中央。
巨大な観測室。
壁一面のモニター。
無数の数値。
GLITCH反応。
世界線データ。
観測記録。
カイト。
「全部監視してるのか」
第四世界のミラ。
「監視じゃない」
「観測よ」
その言葉に現在のミラが少し笑う。
「そこは変わらないんだね」
第四世界のミラ。
「あなたもね」
二人のミラ。
同じ顔。
同じ声。
でも。
どこか違う。
第四世界のミラの目には。
長い戦いの跡があった。
やがて。
巨大モニターが起動する。
映し出される。
世界地図。
ほとんどが紫色。
カイト。
「これ全部……」
「GLITCH汚染区域」
沈黙。
ジン。
「終わってるじゃん……」
第四世界のカイト。
「実際終わりかけた」
「でも完全には終わらせなかった」
カイト。
「どうして」
第四世界のカイト。
「希望があったからだ」
現在のカイトを見る。
「お前たちだ」
空気が変わる。
その時。
第四世界のミラが一冊のノートを机に置く。
黒い表紙。
【最終観測記録】
現在のミラ。
「それは……」
第四世界のミラ。
「この世界が滅ぶまで記録した観測ノート」
カイト。
「中に何があるんだ」
第四世界のミラは答える。
「ナイトアサシンの正体に繋がる情報」
全員が息を呑む。
ミラ。
「ついに……」
しかし。
その瞬間。
施設全体が揺れる。
警報。
赤いランプ。
ピーーーッ!!
観測者。
「緊急事態!!」
「外壁エリアにGLITCH反応!」
第四世界のカイトが立ち上がる。
「早すぎる……」
モニター。
そこに映ったもの。
巨大な黒い影。
人型。
赤い瞳。
カイト。
「まさか……」
ミラ。
「ナイトアサシン」
モニター越しでも分かる。
圧倒的な存在感。
そして。
ナイトアサシンは。
地下施設の方向を見ていた。
まるで。
最初から全て知っているかのように。
第12話 END
第12話を読んでいただきありがとうございます。
第四世界の生存者。
もう一人のミラ。
そして観測者たち。
崩壊した世界にも希望は残されていました。
しかし。
その希望を追うように。
ナイトアサシンが動き始めます。
次回。
第13話「最終観測記録」
ナイトアサシンの秘密が少しずつ明らかになります。




