二十九話 明日の朝
「母上。もう、ほどいてもよろしいでしょうか」
正月の挨拶を済ませ、小見の部屋へ戻るなり、紗季は帯の辺りへ手を置いた。きつく締められたわけではない。ただ、利政の前で膝を揃え、次々に掛けられる祝いの言葉へ答えている間、腹にまで力を入れ続けていたらしい。
「それでは、尾張まで持たないわね」
小見は笑い、そばへ来るよう手招きする。
庭から離れた畳へ膝を進めると、母の指が帯の端を探した。結び目が緩むにつれて、紗季の肩も下がっていく。後ろに控えた槙から、まだ全部お脱ぎになっては、と声が掛かり、ようやく息を吐けた。
「分かっています。少しだけ」
「少しとは、どのくらいでしょう」
紗季が答えるより早く、小見はもう紐を結び直している。紗季が深く息を吸ってみせると、これでよいでしょう、と母娘の間で話が決まった。
天文十八年。
こちらへ来て初めて迎える正月は、紗季の知る年越しと、何もかも違う。夜遅くまで起きて母とテレビを眺めたことや、年が変わった途端に送られてくる美羽の短い言葉を、ふとした折に思い出す。今朝はどちらもなく、支度に来た槙へ、こちらから新年の挨拶をした。
正しい言い方かを確かめるためではなく、今年もそばにいてほしくて。
槙が手を止め、改まって挨拶を返してくれたところで、ようやく年が変わった気がしたものだ。
「苦しくございませんか」
尋ねられて顔を上げる。槙は今度こそ帯を確かめ、襟の重なりを直してから、隣の間へ下がっていく。小見のそばにいた女も、呼ばれて運び出す物を受け取った。戸を一枚隔てれば声の届くところに、二人の気配が残る。
紗季は袖口を撫でた。
淡い紅の地に、小さな花の模様が散っている。着せてもらった時には華やかさが落ち着かなかったのに、母のそばへ座ってみると、普段の衣と同じように膝へ収まる。小見は、その柄よりも、紗季の指の動きを見ているように思えた。
「まだ、落ち着かない?」
「今日の挨拶は、終わりましたから」
「今日のことだけ?」
すぐに返事をするつもりで、できなかった。
二月は、もう来月になる。暮れの間は、その前に正月を迎えることを考えていればよかった。母の手が離れても帯の辺りが気になるのは、そのせいかもしれない。
「向こうで、失敗したらと思って」
「どんな失敗?」
「……分かりません。まだ、したことがありませんから」
小見が声を立てて笑うので、紗季もつられてしまう。けれど笑いが収まると、先ほどまでより話しやすくなっていた。
「知らないことを、知っているふりで通してしまいそうなんです。聞いてはいけないと思って。それで、後から困ったら」
ここへ来たばかりのころなら、何が分からないかさえ、人へ伝えられなかった。今は、自分でできることも増えた分、できないところを隠したくなる。向こうでも槙を振り返ればよいのだろうか。それでは、いつまでたっても姫の務めを覚えられないのではないか。
小見は急いで慰めず、紗季の膝に掛かった小袖の裾を整える。
「この裾を直した時、あなたは何と言ったかしら」
「立つ時に、踏んでしまいそうになると」
「ええ。黙っていたら、私たちには分からなかった」
小見の指が縫い目から離れ、布が元の形へ戻った。
前には、こんなことを頼むだけでも、ひどく我儘を言っている気がしたものだ。今は、どのくらいなら動きやすいか、槙に見てもらいながら自分でも言える。
「槙に聞きます。どう聞けばよいかも」
「そうね。私も、そうしてきたわ」
母も誰かへ聞くのかと考え、紗季は小見の顔を見た。
小見はもう衣のことを気にせず、隣の間へ湯を頼んでいる。返事をした槙の声が近くへ来るので、紗季は、さっきほどいてもらった帯のことは、これ以上言わないでおこうと思う。
*
正月の賑わいが収まるにつれ、館の中を運ばれる荷の行き先が変わった。
紗季の部屋へ届く物ばかりだったのが、今度はそこから出ていく。持参する衣が隣の間へ移されると、長く箱を置いていた畳に、四角く色の違うところが現れた。
そのそばに座り、空いた場所へ膝を入れてみる。
広くなったはずなのに、前より居づらい。お梅に呼ばれて顔を上げるまで、紗季は、もうない箱の縁を避けるような姿勢でいた。
「母が、こちらを」
差し出されたのは、小さく畳んだ布だった。
暮れに書いた文と紗季の挨拶は、お梅自身が届けたという。槙が使いの帰りに話す時間を取ってくれたので、母と向かい合い、書いたところを一行ずつ読んで聞かせたのだと、後から教えてもらった。
「喜んでくださった?」
「はい。ですが、ここをもう少し直してからでなければ、尾張へはやれぬと」
お梅が自分の袖を示す。既に縫い直してあるのに、紗季には、どこが違うのか一度で見つけられない。
「縫い終えるまで、動くなと申すのです。子供ではありませんのに」
「帰ると、そうなるのね」
言ってから、自分もつい先日、小見に帯を緩めてもらったことを思い出す。
お梅が何か気づいたようにこちらを見るので、紗季は先に布を広げた。道中、物を包むのに使ってほしいという母からの品には、飾りのない、丈夫な縫い目が続いている。
「ありがとうと、伝えてね」
「はい」
答えた後、お梅は布の端を持ったまま、しばらく放さなかった。
紗季が同じところを見ると、慌てたように手が離れる。母の作った物を誰かへ渡すのが寂しいのかもしれない。返そうかと思いかけたが、お梅はもう隣から来た槙に呼ばれ、箱の方へ立っていた。
紗季は、布の角を揃えて畳み直す。
尾張へ着いてから開ける物へ入れようとしたところで、槙に、道で使うのでしたらこちらへ、と止められた。明けても暮れても皆と一緒に支度をしているのに、まだ、知らない分け方がある。
月の終わり近く、新九郎と近江の方が訪ねてきた。
兄を迎えた小部屋は庭に面し、開けた戸の脇にだけ日が入る。紗季が奥へ場所を勧めると、新九郎はそこへ腰を下ろし、冷たい手を袖にしまった。近江は夫の横から少し下がって座り、お梅が運んできた湯を受け取る。
「随分、物が減ったな」
「兄上が、まだ見ていない箱もございますよ」
「それならよい。身一つで送り出されるのかと思った」
冗談に返す言葉を探す間に、近江が、小見の方の選んだ物だけでも随分な数でしょう、と笑う。紗季は頷き、隣の間へ続く戸を見た。三人が座れるよう、今朝も槙とお梅が物を移してくれたばかりである。
「義姉上のお荷も、このくらいございましたか」
「途中から、人に任せてしまったわ。自分の物まで、どこに入ったか分からなくなって」
「では、私も」
「お前は、任せた後で自分で開けるだろう」
新九郎に言われ、口を開いたものの、否定することができない。近江まで顔を伏せて笑うので、紗季は湯を飲むふりをした。
こんなふうに三人で座れるのも、あと幾度あるのだろう。
器から顔を上げると、兄は庭へ目を向けている。近江は袖に隠れていた指を出し、紗季の手元の器が傾いていることを、そっと教えてくれた。
「……寂しく、なりませんでしたか」
聞く相手をはっきり呼ばなかったのに、近江は自分への問いと分かったようで、紗季の方へ向き直る。
「最初はね。実家に置いてきた物を、何度も探してしまったの」
「取りに、戻りたくは」
「物だけなら、届けてもらえたでしょうけれど」
続きは言われなかった。
紗季には、それで通じる。部屋のどこに置いてあるか分かっている櫛でも、それを取るために通る廊下や、途中で呼び止める声まで、一緒には運べない。
「兄上は、その時」
「知らぬ顔をしていたような聞き方をするな」
新九郎が近江を見る。妻も夫を見たが、紗季の前であえて何かを言おうとはしない。兄が先に視線を戻したところで、紗季は少し笑えた。
別れの挨拶に移りかけ、言い残したことが急に幾つも浮かぶ。
母が寂しがっていないか時々顔を見て、父とも、また食事をしてほしい。兄自身にも、ずっと元気でいてもらわなければ困る。
どれから口にすればよいのか迷う紗季を、新九郎は立ちかけた姿勢で待っていた。
「父上と、時々は、お話しください」
兄の顔から、先ほどの笑みが薄れる。
言いすぎたかと思ったが、紗季は取り消さなかった。未来のことを告げられなくても、目の前の兄へこれくらいは頼みたい。
「お前がいなくなれば、誰も話をせぬと思うか」
「そうでは、ありませんけれど」
「話はする。お前が聞けば困る話もな」
安心させるためだけの返事でないのが、かえって兄らしい。
紗季が目を落とすと、新九郎の手が、頭へ軽く触れた。髪を乱さぬようにすぐ離れたその手を見上げ、もう一つだけ、と呼び止める。
「母上も、お願いいたします」
「それは、言われずとも」
近江が、ええ、と添えてくれた。
立ち上がる二人を見送りながら、紗季は、兄夫婦もそれぞれの暮らしへ戻るのだと考える。自分のいなくなった館で、皆が同じ場所に座って待っているわけではない。近江の袖の端が戸口の向こうへ消えてからも、しばらく、その方を向いていた。
*
二月に入り、出立の前の日となった。
空は明るいのに庭の風は冷たく、日陰に残る霜を踏まぬよう、人が廊下際へ寄って荷を運んでいる。紗季の部屋から大きな箱が最後に出ていくと、槙が一つずつ、受け取る者へ声を掛けた。これでよいかと尋ねられ、紗季も中へ入れた物を思い出して答える。
紺のジャージとリュックは、まだ別にしてある。
夜に使う物をしまった後、槙が自分で預かると決めてくれていた。他の者に中を見せないための、いつもの手順。紗季はその包みを確かめ、槙が手を空けるのを待って、父のもとへ挨拶に行きたいと告げた。
表の部屋では、利政が文を読んでいた。
入口で声を掛けた槙が、呼び入れられた紗季を先へ通す。父の前へ座ると、背後で戸が閉まった。槙は外で待つと言っていたので、紗季は振り返らず、畳へ両手を揃える。
「明日、参ります」
「分かっておる」
父が読んでいた文は机の脇へ置かれたが、紗季の用意した挨拶は、その次が出てこない。世話になったと言えば足りず、帰蝶として立派に務めると言えば、自分で自分を押し込めるような気がする。
「忘れ物でもした顔だな」
「まだ、出ておりません」
「ならば、今のうちに思い出せ」
いつもの言い方を聞くと、紗季もようやく父の顔を見られた。
怖い人であることに変わりはない。今でも、声を掛ける時刻を槙へ確かめる。それなのに、ここを出てからは、確かめてまで話しに来ることもできなくなる。
「初めてお会いした時、こんなふうに父上とお話しするとは、思いませんでした」
利政は返事をせず、机の上に残っていた筆を置き直す。
その手に、紗季の目が留まった。剣術を続けさせてほしいと頼んだ日も、お梅のことを願った日も、自分はこの手が動くのを見て、父の答えを待っていた。
「よく、願い事を持ってきたものだ」
「困らせましたか」
「少なくはなかった」
紗季は笑いかけ、うまくいかずに口元へ手を添える。
この人は、自分が帰蝶でないと知っている。それでも明日、娘として送り出す。そこに家の都合があることを忘れたわけではないし、あの時ほかに道がなかったのかと、今も考えることはある。
けれど、ここで受け取ったものまで、なかったことにはできなかった。
「ありがとうございました」
頭を下げたまま待っていると、父が小さく息を吐く。
「これで終わりのように申すな。向こうへ参ってからも、わしの娘であろう」
紗季は顔を上げた。
利政の目は先ほどと変わらず、こちらを見ている。帰蝶という名を返すことはできないまま、その言葉へ頷きたくなるのが、紗季には苦しい。
「私のままでも、ですか」
声を落とすと、父もすぐには答えなかった。
戸の向こうで誰かが通り過ぎる。足音が遠のくまで、二人とも待っている。
「今更、別の娘を仕立てられるものか」
叱られたような言い方なのに、紗季は泣きそうになった。
すぐに頭を下げ直そうとしたところへ、今度は、顔を見せよ、と言われる。目元へ袖を押し当て、どうにか笑ってみせれば、利政は、それでよい、と短く頷いた。
「達者で参れ」
「はい。父上も」
父はもう文へ手を伸ばしかけていたが、そこで一度止めた。
紗季がもう一度礼をして立つまで、その紙は脇へ置かれたままになっている。
*
夕刻、稽古場へ別れの挨拶に寄った。
槙を伴って板敷きへ上がると、河瀬弥四郎が、今日は振られませぬように、と先に言う。木剣へ手を伸ばすつもりはなかったのに、紗季は思わずその方を見てしまった。
「明日は、お体を使いますので」
「分かっています。ご挨拶だけです」
そう答え、きちんと膝をついて頭を下げる。
ここで教わったことは、腕をどう動かすかばかりではない。できなかったところを尋ね、もう一度試し、止められれば手を止める。好きなことを続けるために、自分の気持ちだけでは済まない日もあった。
「向こうでも、お忘れになりませぬよう」
「はい」
短い挨拶を終えて庭の方へ戻ると、清十郎が作兵衛と荷の置き場所を確かめていた。
作兵衛はこちらを認め、槙へ明朝のことを尋ねる。清十郎は二人の話が始まってから、紗季の歩く側へ場所を空けた。
「お疲れではございませんか」
「そればかり聞かれます」
責めたわけではないと分かるように笑うと、彼の口元も少し緩む。
軒の下をゆっくり歩く。庭向こうの渡りでは、運ぶ物を受け取った女が、袖を押さえて先へ急いでいる。明日出るという一つのことに、こんなに大勢の手が動いているのを、紗季は立ち止まって眺めた。
「今日のうちに、皆様へお礼をと思ったのですが」
「お会いできましたか」
「まだ、全員には」
明朝、顔を合わせる者もいると清十郎は言う。
その中には、この人もいる。槙とお梅と清十郎は、自分と同じ方へ出ていく。何度も確かめたことなのに、今も、清十郎の顔を見ると安心してしまう。
尾張へ着けば、自分は別の男の妻となる。
彼を好きだと口にした日から、そのことが変わったわけではない。話せる明日が増えてほしいと願いながら、一方では、明日が来なければよいと思っている。
「清十郎様」
いつもなら彼の目がこちらを向くのを待ち、その後で言葉を選べた。今日は、顔を向けられるほど、何を言っても間違えそうになる。
「……明日は、うまく、ご挨拶できないかもしれません」
「はい」
「ほかの方へ、ではなくて」
そこまで言うと、清十郎の視線が下がった。
彼はすぐには返事をせず、紗季の袖の近くへ伸びかけた手を、自分の脇へ戻す。その動きを見て、紗季も手を重ね直した。触れたくても、触れるだけでは済まないことが、今は二人の間にある。
「私も、言葉を用意できておりませぬ」
声が低く、紗季にだけ届いた。
いつも答えを待たせているのは自分の方だと思っていたが、今度は彼も迷っている。紗季は、顔を上げてほしくて待ち、目が合ってから、小さく頷く。
「では……明日、お顔を見てから」
「……はい」
うまく言えない同士のまま、二人は廊下の角まで歩いた。
槙が作兵衛との話を終えて追いつく。紗季が振り返ると、清十郎はそこで足を止め、いつものように、こちらが奥へ入るのを待っている。
また明日、とは、今日は言わなかった。
*
夜、部屋へ戻ってきた槙は、寝る前に残りの荷を確かめましょうと言った。
お梅が隣の間で紐を整えている間に、紗季は現代の服の包みを開け、紺のジャージを取り出す。襟の内側にある名字の布へ触れてから、畳んだ形を崩さず戻した。
リュックの取っ手には、母が直してくれた糸が残っている。
中を開ける必要はなかった。膝へ引き寄せると、いつもより重く感じるのに、槙へ渡す時には軽すぎて、不安になる。
「こちらは、私の手元へ置いてまいります」
槙が布で覆い、人の目に触れぬよう包んでいく。あの日に履いていた靴も、別の布に包まれ、服と同じ箱へ収まっている。
これを置いていけば、帰れなくなるような気がしたことがある。持っていったから帰れるというものでもない。それでも、手放す気持ちにはなれなかった。
「お願いします」
受け取ってくれた槙の手を見届け、紗季は空になった膝へ両手を置く。
しばらくして、お梅が、ほかにお入れする物はと尋ねてきた。机の上を見回す。皆から届いた文はまとめてあり、使い慣れた道具も、持参する方へ既に分けてもらっている。ここに残すと決めた物まで、急に必要に思えてしまう。
「……お梅のものは、入りましたか」
「はい。先ほど槙様が」
「それなら、よかった」
お梅が返事をせず、こちらの膝を見る。
何も持っていないのだから手を広げればよいのに、紗季は指を解けなかった。お梅もすぐには立たず、用の済んだ紐を、一度だけ畳み直している。
「姫様。明日は、早うございます」
その声で、紗季はようやく頷けた。
寝支度を手伝ってもらい、髪を緩めたところへ、小見が来たと槙が知らせる。紗季が座り直そうとすると、母はそのままでよいと言い、後ろへ回った。
「今日は、私にさせてちょうだい」
槙が差し出した櫛を、小見が受け取る。
紗季は前を向いた。母の膝がすぐ後ろにあり、髪を分ける指の動きが伝わってくる。引っかかるところへ来るたび櫛が止まり、指で少しずつほどかれるので、痛くはない。
庭戸はもう閉めてある。
片づいた部屋の隅で灯が揺れ、母の手が動くたび、膝に落ちた影の形が変わる。槙は戸口の方へ下がり、お梅と声を落として何かを確かめているが、紗季のいるところまでは聞こえなかった。
「向こうで使う櫛も、入っておりますか」
「ええ。槙が確かめてくれたわ」
「母上のお手元には、残りますね」
小見の手が、一度止まる。
何もかも娘へ持たせようとして、自分の物までなくしていないか。本気で気になったのに、母は少し笑って、これを使うから大丈夫、と答えた。
「帰蝶は、自分の支度を気にしていればよいの」
名前を呼ばれ、紗季は目を閉じる。
この手が知っているのは、もう自分の髪でもある。帰蝶の代わりにここへ座っているという思いと、小見の娘としてもう少しこうしていたいという願いは、どちらも消せない。
「明日の朝も、来てくださいますか」
「もちろん」
返事が早くて、紗季は少し恥ずかしくなる。送り出してくれると分かっているのに、今、聞いておきたかった。
「私が、まだ寝ていたら」
「槙より先に起こしてあげましょう」
「それは、お任せくださいませ」
戸口から槙の声がして、母の肩が小さく揺れた。
櫛を持つ手まで揺れるので、紗季も笑いながら、じっとしているのが難しくなる。小見は髪の先を掌で揃え、あと少しだからと、もう一度、櫛を入れてくれた。




