6話 風の森のワンコ
風の森、その由来は昔、風の精霊が住み着いていたからだという説がある。
その精霊のおかげで森に瘴気も発生せず、平和な森が形成されているのだとか。
森に入ると、高い木々は空を覆い柔らかい光が緑の葉の隙間から覗いている。
遠くで流れているだろう小川の音も心地よく足元のコケや葉もふかふかとしていて
まるで、緑のカーペットの上を歩いているようだ。
クレイルは思わず深呼吸し、新鮮な空気を吸い込んだ。
たしかに、精霊が住まう森と言われても納得できるような雰囲気を感じた。
しかし、森の奥は進むにつれ、雰囲気が徐々に変わっていくのを感じた。明るい陽射しは木々に遮られ空気が重くなったように感じる。
「ここはちょっと変だな、、」
周囲の景色がだんだん不気味になっていくように感じる。
森の奥に向かう道には圧迫感を感じ、道を変えるか迷っていると
かすかな音が聞こえた。
「グゲゲェ、グゥゥゥゥ・・・・」
「グゴォォ・・」
「ゲゲゲッゲ」
目の前にゴブリンの大群が現れた。その数10匹ほど、
訓練で一人でもゴブリンを倒せるくらいには強いと評価をもらっているが、あくまでも一対一の話。
集団相手には勝ち目は薄いと思う。
「ここで生き残る方法は、、、、」
とりあえず逃げた。とにかくその場から距離をとった。
木々が茂る道を駆け抜ける。枝が顔を掠め、足元の根っこに躓きそうになるが、必死に走り続けた。
体力には自信がある。しばらく走り続けると後ろにゴブリンは見えなかった。
魔物が現れないっていうのは嘘だったんだな。
しかし、ここで引き返すわけにもいかない
その後も緊張感を抱えながら森を進む。薄暗い中、周囲の動きに注意を払っていた。
突然、前方の茂みがざわめき、また奴らがいた。
「ゲゲェー」「ギギー」
「・・・・・グゥー」
また、ゴブリンだ、、
しかし、先ほどと様子が違うのがゴブリン2匹の先にはちっちゃいワンコがいる。
かなり弱っているようだが、ゴブリンと戦おうとしているようだ。
「しょうがない、やるか」
このクレイル、あまり危険なことをしたくない気持ちはあるが、相手がワンコとなれば話は別だ。
幸いにもゴブリンたちはまだこちらに気づいていない。
・・・・(行くぞ!!)
一気に駆け出し、後ろからゴブリンの首を切り飛ばしにかかる。
「一匹撃破!」
もう一匹のゴブリンは何が起きたかわからず硬直していたが、状況を把握し、こちらを敵として認識したようだ。
ただ、それだけの隙があれば問題ない。
正面からゴブリンに向かって剣を突き刺した。
「・・・終わった」
人生初戦闘、なかなかにうまくいったのではないかと思う。正直もうやりたくない。
「ググゥ・・」
ちっちゃいワンコが威嚇してくる。
かなり弱っているようで、ボロボロだ。
「大丈夫、おれは敵じゃない」
クレイルはバックからエリクサーを取り出し迷いなくワンコに使用した。
ワンコの体に光が集まり、ボロボロだった体がもとに戻っていく。
光が収まるとワンコは一瞬固まっていたが、敵ではないことをわかってくれたらしく
「ワン!!!」
しっぽを思いっきり振ってお礼を言ってくれているようだ。
「ワン!!」
と思ったら「付いてきて」と言わんばかりにこちらを見ながら森の奥に走りだしたので
付いていった。
そこには、大きなワンコが2匹ぐったりと倒れていた。心なしが黒い靄みたいなものがまとわりついている。
たぶんこの子の親なんだと思う。
状況的に、おそらく親を守るためにこのちっちゃいワンコはゴブリンたちと戦おうとしていたのだろう。
ええ子やぁ
もう乗りかかった船なので、バックからエリクサーを2本取り出し、2匹のワンコに使用した。
貴重な資金源だが、まぁもふもふを救うためだ。しょうがない
ちっちゃいワンコにエリクサーを使ったときよりも、強い光が2匹を覆う。
「・・・少年よ、我々を救ってくれて感謝する。」
・・・・ん?
「少年よ、、、」
・・・あれ?ワンコが、ワンコが
「・・・・・・・シャベッッター!!!!!!」
「!? わふ?」




