4話 とりあえず成長します
クレイル・フォン・アイデンバーク8歳になりました。
「どうやって逃げるか、、」
いよいよ逃亡作戦を始めるときがきた。
体を思うように動かせるようになってからしばらく、なにもずっと遊んでいたわけではない。
5歳の頃、まずは体力、どう逃げるにしても体力は必要となる。子供であることをいいことに兎に角走り回った。
朝から晩まで、疲れ果てるまで走り回った。
つか、うちの親、放任主義すぎんか。父は仕事が忙しいらしくあまり会わないが、母はたまに、走り回っている自分を見物しながらティータイムを楽しんでいる。
終始ニコニコしているが、お宅の息子の頭がおかしいことを少しは自覚してほしい。
6歳の頃、ある程度、体力がついたら、次に戦闘力を上げたい。
この物語の世界では、街を出るとそこらに魔物が闊歩している。
そして作中でクレイルは部下に戦闘を任せており、本人はそこまで強くない。
憑依している悪魔も倒された際には、宿主の弱さに散々ケチをつけていた
所謂「、、ふっ、我は四天王のなかでも最弱」と言われるような枠のキャラである。
家から逃げ出すことに成功しても、魔物にやられましたじゃ、お話しにならない。
幸いにも、走り回っていたおかげで、騎士たちには認知されており、訓練に興味があると伝えたところ
剣術を教えてもらえるようになった。
8歳にして、森のゴブリン程度であれば問題なく倒せると評価をもらった。
次に勉学、領地周辺の地理、この世界の歴史、通貨の価値、一般常識など
逃亡および生活に必要となりそうな、知識は屋敷の図書館で本を読み漁り蓄えた。
途中からは、なぜか家庭教師がついた。ただし、いつも勉強するのは体力を使い果たしたあとだったので、
ぐったりした状態で講義を受けており、先生が毎回心配そうな、、いや不思議な生き物を見る目をしていたのが印象的だった。
次に魔法、この世界の魔法は、火、水、風、土、光、闇の6属性が存在し魔法の才を持っているものは、いずれかの属性を持っている。ただし、光は天使の因子を持つもの、闇は悪魔の因子を持つものにしか適性が発現せず、
基本的に世の中の魔法使いは火、水、風、土の4属性のうちのどれかに適性を持つ。適性を持たない者は無属性とされる。
そして、転生者のおれは転生ボーナスで全属性適性持ち!
ということもなく。まさかの無属性である。
そうクレイル・フォン・アイデンバークに属性魔法の才能はないようである。魔力は人並にはあるようで、無属性魔法にも身体強化・索敵等の役に立つ魔法は存在するため、少しお勉強しておいたが、剣術程は打ち込んでない。
同時に資金面も重要である。やはり逃亡先で、新しい生活を始めるわけだから先立つものがなければお話しにならない。アイデンバーク領は土地に魔力が多く、普通の作物は育ちづらく逆に薬草等が育ちやすい。
薬草が特産品となっており、同時に薬学も国内屈指の知見を持っている。
そして、アイデンバーク家の屋敷にはなんとポーションの最高峰エリクサーが保存されているのである。
これには、さすがに驚いた。エリクサーというのはゲームでもエンドコンテンツとして出てくるようなポーションであり、売却額は確か1,000,000G程度で取引されていた。
伝説の、、、というほどではなく、探せば見つかる程度のレベル感であるが、高級品には間違いない。
アイデンバークの隠し倉庫にはこのエリクサーが100本以上保管されているようである。
子供が5本くらいくすねても家の経営に問題は生じないだろう。
クレイル・フォン・アイデンバークはこの日、8歳にして泥棒となった。
そして同時に、逃亡の準備は整った。




