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閑話 悪役領主様の知らないお話2

これはクレイル・フォン・アイデンバークさんが知らないお話


ゲーム開始時点でクレイルの両親はすでに亡くなっている。

ジラベールの戦死は以前にも語ったので記憶に新しい方もいると思う。


今回語るのは、母グレースの死についてだ。

実はグレース、病を患っている。


病名はーー

〘自己魔力免疫疾患〙


自身の魔力を身体が敵と認識してしまい排除してしまおうとする難病である。

この手の病の場合、自身の身体そのものには異常がないと判断してしまうため、エリクサーなどでは治すことができない。


さらに、身体の免疫が自身の魔力を排除することに力を使ってしまうため、正常に免疫が働かず体調を崩しやすくなり、最終的には身体を動かすことも難しくなってくる。


グレースはこのことを周りに心配をかけまいと一部の人にしか、言っていなかった。


普段は元気に振る舞い、母親として、そして領主の妻としての役割をこなしていた。

クレイルにも、できるだけ病気のことを悟られないようにしていた。

そのため、幼いクレイルから見れば、母親はいつも元気な人だった。


とにかく子供の前ではニコニコすることを心がけていた。


クレイルがまだ幼かったこともあり、それ以上深く考えることもなかった。

しかし、病気は少しずつグレースの身体を蝕んでいた。


そして、クレイルが9歳の時。


グレースの病状が急変する

それまで何とか動けていた身体が思うように動かなくなり、寝込む日も増えていった。

クレイルが10歳になる頃には、グレースはほとんど屋敷の中で過ごすようになっていた。


そしてーー


夫、ジラベール・フォン・アイデンバーク戦死。


その報せを聞いたグレースは、精神的にも大きな衝撃を受けた。

最愛の夫が死んだ。


それを知ったことで、ただでさえ弱っていた身体はさらに衰弱していった。


そしてほどなくして、グレースも息を引き取る


つまり、クレイルが10歳の時、

クレイルは領主を継ぐとともに偉大な父と母の2人を亡くしてしまうのである。


まだ、幼いクレイルが両親を失った状態で領主になる。

精神的に追い詰められた少年が悪役領主への道を辿ってしまう、さらに悪魔に魅入られてしまうのは想像することが難しくないと思う。


ただし、この病気は1つだけ対処法がある。


「龍神温泉」という温泉がある。

これは伝説上の存在ではなく、実在する。


この温泉の効能は「万病を治す」というあり得ない効能なのだ。

実際、ゲームでもある国のお姫様が自己魔力免疫疾患を患っており、龍神温泉まで連れて行くというクエストがある。

ゲームクリア後エンドコンテンツのクエストのため、クレイルはその存在を知らないが、、、


そして、龍神温泉までは特殊なルートを経由してでしか行けないため、普通の人は辿り着けない。

そのため、お伽噺として語り継がれるが、その存在を知るものは少ない。


ただし、

ここまで、お話してお気づきの方もいらっしゃるだろうか


そう、クレイルが掘り当てた温泉、あれ実は龍神温泉と同じ効能なのだ。

というか龍神温泉も実はアイデンバーク領の近くに存在する。


クレイルは知らない間に母の死を救っているのだ。

なんて親孝行な息子なんでしょう


クレイル自身はそんなことつゆ知らず、"脱出を邪魔されたお湯"くらいにしか思っていない。

グレースの自己魔力免疫疾患さんも龍神温泉さんもここまで聞くと大変不憫である。


今日も彼は、自身が掘り当てた温泉の偉大さを知らずに


「次こそは脱出してやる」


と言いながら、温泉に浸かっているのである。


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