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16話 温泉発掘 

実際に穴を掘り始めてみる。


「せいっ! せいっ!」


ザクッ、ザクッ。

……思ったより大変だな、これ。

スコップを振り下ろすたびに土が掘れていく。

しかし、当然ながら一回掘った程度では大した深さにはならない。

そもそもトンネル工事をスコップ一本で出来るかは分からない。

「これは……思ったより時間がかかりそうだな」


穴を掘る魔法が使えれば良いのだが、おれにはそんな魔法は使えないし、地道にやるしかない。


「ご主人様?休憩しなくて良いのですか?」


穴の上からおれの監視係、、、じゃなかった、専属メイドのアメリアが声をかけてくる。

「大丈夫だ! おれは今、人生をかけて穴を掘っている!」

「……何を目指しているんでしょうか?」

「自由だ!」

「???」


アメリアが困惑している。

まあ、普通はそういう反応になるよな。


そもそも、穴を掘ることに対してアメリアに説明するのも時間がかかると思ったのだが、借りた土地で何をするのか聞かれたときに「穴を掘る」と答えたら、

「へー」という感じで、特に気にせずに着いてきた。

ざるで助かる。


(クレイルは知らない。

アメリアが命じられているのは、「おれから目を離さないこと」、及び「街の外に出させないこと」らしい。

それ以上のことは、気にすると胃に穴が空くから基本気にしなくてよいことになっているそうだ。)


再びスコップを振るう。

ザクッ、ザクッ。

少しずつ、少しずつ地面が深くなっていく。

……絶対に成功させてやる。

今度こそ、この街から脱出してみせる。

おれの新天地への旅は、ここから始まるのだ。


穴を掘り始めて数日(さすがに夜は屋敷に帰っているが)

穴を掘っていると少し、湿気が増してきた。心なしか暑い気がする。


よしそろそろ、街の外に向かって掘り始めるか。


「だんなー、スコップの調子はどうだー!」

穴の上からスコップの様子を見に来たドリーが見下ろして聞いてくる。


「おう!いい調子だ!」

「だんな!下!下!なんか溢れているぜ!?」

ん? あっつ!ってこれ!?・・・・

熱水?



悲報、穴を掘って脱出しようとしたら温泉を引き当ててしまったようです。

この町から見える山って火山だったのか。


そして、温泉が湧き出てしまったことにより、これ以上穴を掘ることは困難になった。


「だんな、だんな!温泉ってマジか!?とりあえず師匠呼んでくるな!」


温泉出たことをドリーに話したらすごいテンション上がっていた。

整備するための道具をとりに行ってるとのこと。


まあ、確かに元日本人としてもこの世界でも温泉に入れるのなら入ってみたい。

でも、今じゃないだろ、、、


しばらくするとドリーがガルシアとよくわからんおっさんたちを連れてきた。

「坊主、紹介する建築家のエフベルだ」

「・・・・(コクッ)」

なんで建築家だ?


「ここ、温泉入れるようにするから好きなようにしていいか?」

「?おう、いいと思うよ」

おやじからは好きにして良いって言われてるし


しばらくして、気が付くと、そこには、立派な温泉旅館のようなものが出来上がっていた。

「はやっ」


好きにして良いって言ったけど、行動早すぎだろ。

そしてなんで温泉旅館を知っている?


「そりゃあお前、秘境の竜神温泉っていったらここらじゃ有名な話だぜ?」

「あのおとぎ話に出てくるやつだな!」

「なんでも入っただけで病は治るとか!」

「この源泉も同じ効能だったりしてな!」

「「「「がっはっはっは!」」」」


なんかそういうおとぎ話があるらしい。そういやゲームにも山奥に温泉旅館があったような?

とりあえず温泉が湧いたところには温泉旅館のような和風な建物を建てるのが普通のようだ。

少なくともこの人たちの間では。


まあいいや、脱出作戦は失敗したが、元日本人としては温泉に入れるのはありがたい。

一番風呂はいただいた!


ちなみに、費用はエフベルさんたちが定期的に温泉入れるようにしてくれれば良いらしい。

おやじ次第だから出来るかは知らん!とは言っておいたが。


その後、ちゃんとおやじには借りた土地に温泉旅館を作ったことは報告した。

そして、経営とか任されたら嫌なのでちゃんと返した。


「土地は貸したがそんなものを作るとは聞いてない」

「いやおれも穴掘りたかっただけなんだけど、、、」

「はぁ?」

「したら温泉が湧いてきて、気づいたら知らないおじさんがいっぱい来て、気づいたら建物が建ってた」

「・・・?」


おやじが「こいつなに言ってるんだ?」って顔をしていた。

あと、すげー文句を言っていた。


しかし、そこは温泉パワーというやつだろうか。

親子喧嘩に突入しかけてたその時、勝利の女神が現れた。


「あら、街に温泉ができたの?私も入ってみたいわ?」


かーちゃんとついでにおやじと妹と、使用人も何人か連れて温泉に連れて行くことになった。



母は温泉の虜になった。母が上機嫌のおかげでおやじはおれを叱りづらいらしい。

なし崩し的に、しばらくは領主管轄のもと公衆浴場として運営していくらしい。

まあ、おれも脱出作戦が成功するまでは通おうと思うので頑張ってほしい。

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