第五話:お姉ちゃんのルーティーン♡ 後編
◇監視業務に入る。朝8:30~8:50◇
こちらお姉ちゃん。お家に帰って、今はたーくんの読書タイムを見守っています。
東西南北そして中心の原点。更に床。
すべての角度からたーくん、そしてクラス中を見回す事ができるように、カメラを設置しています。
たーくんが何を読んでいるのかは置いといて……。先に皆が何を読んでいるのか。見てみましょう。
……お! このおかっぱの女の子は『六分間シリーズ』ですね。
小学生を中心に流行っている、『6分後に結末が分かる』とかの、読書タイムやスキマ時間に特化した書籍。
ビジネス的にも勝ち筋が狙いやすい、とっても面白い新しい読書の形とも言えますね!
……こっちの男の子は『ズッコケ四人組』ですね。
すごい……。ずーっと人気ですね。この作品。
だってこの作品の初出は『1976年』とかですよ?
なのに今も変わらず愛されています。お姉ちゃんが子供の時も、男の子が良く読んでいた印象です。
……この女の子は『ロリー・ポッターと幼き姫君』ですね。
魔法使いの学校に入ったロリー(35)が『うわぁぁぁぁ! 女の子がいっぱいだぁ!』とか言って最後普通に刑務所に収容される伝説の終わり方をした作品。
……お姉ちゃんの末路も、もしかしたらロリーと同じなのかも知れない……。
そんな事を考えさせられます。
さあ! お待ちかね! たーくんです!
彼は今、何を読んでいるのでしょうか……!?
『デルオラ・クエスト』!
名作ですね。男の子なら一度は魅了されるスーパーレアのようにキラッキラした表紙。
一応うっすら恋愛要素もあるっちゃある、しかし内容は結構エグいところもある伝説の児童書です。
(しかし……。皆けっこう難しい本読んでるんだな―)
ロリー・ポッターシリーズって子どもが読むには結構難しいですよね?
ルビが振ってあるとはいえ、漢字がけっこうあるし。デルオラクエストもそうですけど。
お姉ちゃんの大好きな『パスワード』シリーズを読んでる子もいますね。
——割って入りたい……!——
できれば皆と一緒に会話をしたいくらいです……。
お姉ちゃんは時々、ブラコンだと勘違いされることがあります。しかし、それはちょっと違う。
普通に子どもが大好きなだけです。
そしてたーくんのことはとりわけ愛している。
つまりショタコン+ロリコン≦たーくんラブラブという、統合体であり十代未満包囲網。
これが私の正体ってことです。そこのところ勘違いしないでくださいね。
◇給食◇
たーくんが食べているところも見ながら私もご飯を食べます。
するとちょっとやんちゃそうな男の子の群がたーくんの下に……!
その中にいる、体のおっきい、茶髪のボス格、ウシジマくんがたーくんに接近しますが……!?
『たー~!』
『な、なに? ウシジマくん?』
『昼休み!』
『……』
『サッカーな!』
『……うん!』
お姉ちゃん、最初のときはハラハラしてましたけど、このウシジマくんって子が超いい子で。
一人でクラスで本を読んでいたたーくんを、さらっとスマートにサッカーに誘ったんですよ。
ちょっと粗野そうな子なのにねー。意外。
それがきっかけで、特にこのウシジマくんと、たーくんは仲良くなりました。
お姉ちゃんは、ウシジマくんに大変感謝しています。
さあ。後は昼休みでたーくんが活躍するところを見て、後は私は仕事に戻る。
そのあと、たーくんを迎えに行きましょう。
◇放課後、校門の前で◇
よし。間に合いました。私はここで立って彼を待ちましょう。
入口に立っていると、いろんな可愛い子達と私はすれ違いますね。
この子は違う……。
この子も違う……。
この子も違う……。
……あ! いた!
「たーくんだー!」
「おねーちゃん!」
たーくんが周りのことも気にせず、私に駆け寄ってきます。
私も気にせず、しゃがんで、両手を広げてたーくんを待ち構えます。
たーくんがお姉ちゃんの目前まで来た所で……
がぶり!
食虫植物のように抱きしめます。
「うー……。お姉ちゃん、たーくんに会いたかったよ―……」
「僕も……。おねーちゃんに会いたかったー……」
「でもいいの……?」
「なにが……?」
「お友達、皆見てるよ」
「……!?」
たーくんはお姉ちゃんに抱きしめられたまま後ろを振り向くと、ウシジマくんと、お友だちが私達をぼーっと見ています。
「あ、あのね! 皆! コレは違うの! えーっと……」と、しどろもどろのたーくん。
「……いいなー」とウシジマくん。
ウシジマくんも、お姉ちゃんに甘えたいのかな?
でも残念。お姉ちゃんはたーくん専用コックピットだから、ウシジマくんは乗せられないよー。
まあそれだと、お世話になってる友人に対してちょっと残酷。
なので、お姉ちゃんは、たーくんを抱きしめたまま、ウシジマくんにウインク。
すると、周りのお友だちが「今俺にウインクしたぞ!」「いや! 俺にだろ!」と騒ぎ立てます。
えへへ……。皆にじゃないよ―。
「じゃあ帰ろっか。たーくん」
「あ、あ、うん。えっと」
とたーくんは後ろ、学校側を振り返ります。
「じゃあね―! 皆! ウシジマくん!」
「……じゃあな! また明日!」
……推しカップルが出来ました……!
まあたーくんはあげないけどねー。
◇16:00◇
たーくんがシャワーを浴びた後です。流石に私もそこには乱入しません。
したいけどですけどね! 本音をいうとね!
さあ、今から待ちに待ったアクセス解析。
なろうでは1日の現在の累計アクセス数が確認できます。
たーくんは毎回ドキドキしながらコレを見るのです。
それをお姉ちゃんは後ろから抱きしめて、見守ります。
なんだかお姉ちゃんも毎回ドキドキするんですよね……。これ。
さあ、今の時点の今日のアクセス数は……?
「開くね……。おねーちゃん?」
「なぁに……?」
「……あと、手も握ってくれる?」
「うん。勿論!」
お姉ちゃんの両手でたーくんの、スマホを持っていない方の左手を握ります。
するとお互いの、ドキドキと脈打っていた心臓は少しだけ落ち着きを取り戻しました。
お姉ちゃんがふっと微笑むと、たーくんが決心したように、アイコンをタップします。
さあ……結果は……?
……PV数2!!!
(まずい。コレまた泣くんじゃ……)
後ろからでも分かります。わなわなと震えるたーくん。
しかし、たーくんのリアクションはお姉ちゃんの予想と反していました。
「やったー! PV1増えてるー!」
(喜びのハードルが低い!)
「よかったねー! たーくん!」
まあたーくんの場合、タイトルに平仮名が多いってことも読まれない原因だと思うんですよね。
内容がどうこうではなく、恐らく入口の部分でミスってると。
どう見ても子どもが書いた小説ってわかっちゃうし。
だから、実はPV1でもそんなに悲しむことはないんですよね―。
しかし……。そんな平仮名タイトルでも読んでくれた人……。
どんな人なのか気になりますね。
「おねーちゃん~! 祝って祝ってー!」
「……うん!」
私達は勝利を分かち合い、またも抱きしめ合います。それはそれは熱い抱擁を。
「……たーくんは幸せものだねー」
「……うん! PVも増えて! 友達も出来て! お母さんもいてくれて……。あと……」
「……あと……?」
「……大好きなおねーちゃんもいてくれて……」
「……うー……。それずるいよー。たーくん……」
「……おねーちゃん。顔真っ赤っ赤」
「……そりゃそうだよぅ……」
とかいってたーくんも真っ赤っ赤。
すっごい勇気をだして伝えてくれたんだね。
それにしても。
PV2でこの喜びよう。
もしブクマが付いたら、ポイントが入ったら。
そして書籍化なんてしたらどうなっちゃうんだろうねー。
(お姉ちゃんにも何かしらのご褒美があるかも……!?)
「おねーちゃん……。涎が垂れてる……」
「……は! いかんいかん……!」
お姉ちゃんのルーティーン♡




