82話 祝 遂に異世界で自身の特異性が認められる
クララは右手を私の額にかざした。
よくわからないが、何か、夢見心地というか、不思議な感覚に見舞われた。少しクラッときた。
「……って、すご! コトネ、あなた加護を二つも持ってるわ!」
「ふ、二つ……? それってどれくらいすごいの?」
「千人に一人、加護一つ持ってるって言われてて、二つなんて伝説でしか聞いたことないよ!」
コントーレの人口は百五十万人。つまりは現在単純計算千五百人しか加護を持ってないということ。
「『徘徊伝説』って異名は伏線だったか……」
「はいかいでんせつ?」
「ごめんこっちの話」
「……はあ」
クララはなんとか飲み込んだようだ。
「それで何の加護なの?」
「……それがわからないの」
クララは困った表情を浮かべる。
「え……?」
「普通、鑑定すると頭ん中に文字が浮かぶような感じなんだけど……コトネの場合、その二つがなんて書いてあるかわからない」
「ちょっと書いてみてくれる?」
クララは紙を取り出し、そこに二つの単語らしきものを書いた。
「見様見真似でやったけど……」
その二つはかなり崩されて書いてあり、全くと言っていいほどわからなかった。翻訳スキャンも反応しない。
「エマさんわかります?」
エマさんは紙を覗き込んだが、顔をしかめる。
「中世ベレウゼ語に似てるけど……読めない」
「そっか……他の人の加護ってどういうのがあるの?」
「ん~と、でも最近貰える加護は、役に立たないわ。親世代だったらまだマシだったけど、私も持ってるの、植物の新鮮度を見分ける加護だもん」
確かにコメントに困る加護だ。
「売り場とか野生にある薬草を摘むのに使えるけど、腐敗したものを売るのは法律でダメだし、市販の方が全然いいもん」
「まあ……食あたりしないためにはいいんじゃない……?」
「コトネも加護があるって言っても期待しないほうがいいわ」
そもそも加護が発動したことなんて一度もない。今まで生きててそれっぽいこともなかったし。
「加護がまともに機能してるのはショウタくらいかな。あの能力は冒険者にとっては、喉から手が出るほどいいもの」
安城はクララの言葉に誇らしげ。
「ていうか加護ってどこからもらえるの?」
「大抵は先天的に七天神から貰うらしいわ」
「誰から貰ったかもわからないの?」
多分こういうのは、それぞれが担当する特定の事象に長けている。ゆえにその事象繋がりで何か分かるはず。
「じゃあ今何歳?」
……? 私の歳とその七天神に何の因果があるかわからない。
「二十三だけど……」
「じゃあ六人の天使の誰かだと思う。あなたの生まれる前から人間のブリギッドは、加護を渡してないみたいだし」
人間のブリギッド、七天神の一柱だろう。
「天使はそれぞれ『霊魂』、『恍惚』、『終焉』、『破滅』、『隆盛』、『縁起』。私のは『終焉』かな」
植物の新鮮度を見分ける加護にしては物々しい属性だ。恐らく、拡大解釈すれば物の終焉が分かるから逆算して鮮度がわかると言うことなのだろうか。
「じゃあブリギッドは?」
「それが……」
「?」
「みんなー! ブリギッドの特徴って言った勿論――」
クララは外野のみんながいるリビングに振り向き、手を添えて声をかけた。
するとアリスとクララ、ポーリーヌ、ポール、エーヴ、は一斉に口を開く。
「笛の『創生』のブリギッド」
「杖の『秩序』のブリギッド」
「剣の『完膚』のブリギッド」
「槍の『最勝』のブリギッド」
「釘の『回帰』のブリギッド」
えぇ……。ここまでみんなバラバラとは。しかも笛に至っては他と違って武器でさえない。
「ブリギッドと言えば槍だろJK」
「剣だってばガイジ」
ポーリーヌとポールが2ちゃんみたいな口論してる。
「こんな感じでブリギッドは地域で違うの」
「クララ、この二人止めて!」
二人はクララの火種により口論が加速、飛び火が散る前にエーヴとアリスが止めにかかってる。信仰が篤いがゆえに起きた惨事である。
私とエマさんはクララの部屋を借りて休むことになった。クララはリビングで寝るらしい。
時間はそろそろ日が傾いてきた頃。コントーレの人は夕食や入浴したあと寝る。そして日も昇らない内に起きる。
「先に入っていいよ。私は少し寝る」
エマさんは伸びをしてからベッドに横たわる。目を瞑った。
「やっぱり疲れました?」
しばらく野営が続き疲労が溜まったのだろう。
「いや、深夜一時から中枢議会がある」
「え?」
「安城元帥と議会に出てあなたのことも話す」
「エマさん、議員だったんですか!?」
驚き。そんな素振りは全くなかった。
「ベルーケ大使もそうだよ。ヒンベルにもあなたのことは言っとく」
「……」
「安心して、みんなあなたの味方」
味方が多いに越したことはない。




