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74話 化け物には自分が美味しくないことを伝える

卯月の最上階、後方の展望室に入り、安城とリアルタイムで連携してジュストン中佐を狙う。


「"豊川さん? ジュストンの近くにいる子どかしてくれない? 巻き添え食らっちゃう"」


「わかりました。安城、ジュストン中佐から離れて」


「"了解"」


安城はジュストン中佐と並走しながらゆっくりと距離をとっていく。


「第三砲塔と連動――っと」


四つの手を持つ第四砲塔と同じく第三砲塔が動いた。


「えっ! 他のと連動できたの?」


「"知らなくても無理ないよ"」


これで今までより弾幕は二倍。単純計算命中率二倍。


「"よし……来た!"」


轟音が振動として展望室に轟く。


視界が黒煙と土煙で覆われた。八発の砲弾が一斉にジュストン中佐めがけて集中砲火。


「これで――ってうそ!」


同じ景色を目にしたようだ。ちょうど土煙から出てくるジュストン中佐が見受けられる。


「ッ! もう一度!」


八つの砲門は滑らかにジュストン中佐を捉えて火を吹く。


だが、化け物は一向に止まる気配はない。


「しゃーない! 粒子兵装に入れ替え! 陽電子砲発射よぉーい」


ん? 陽電子砲って……。


「ちょっと! ラーゼさんダメ! 陽電子砲は――」


「えっ?」


上にある八つの砲門から青い光が、砲口から溢れている。もうトリガーを引いたらしい。


「ダメダメダメダメ!」


そんなことしたら近くにいる安城まで……。


「止まって!!」


私が叫ぶと、砲口に灯っていた青い光は散乱した。


「……?」


どうやら止まったらしい。ラーゼさんが緊急停止ボタンでも押してくれたのだろうか。


が、止まったのは砲門だけじゃなかった。


――ガッン


!?


――ガララララ!!


展望室の照明が赤い照明に変わり、非常ベルが鳴り響く。予備電源に切り替わったらしい。それどころか上にある補機の火も消え失せた。


「"卯月、動力損失! 衝撃に備え!!"」


オルガ大佐の声が反響した。


突如船体上下が反転。通常の向きとなった。それが卯月が振り絞った最後の力。


後方艦底部から乾いた地面に胴体着陸。


絶え間なく衝撃が卯月全体を襲う。頭をかち割るような不快音。


慣性で何kmにも及んで船底を擦り、卯月は止まった。


「"大丈夫、豊川さん?"」


ラーゼさんはすぐに個人通話で私の安否を確認してくれた。こういうところは優しい。無能なのは置いといて。


「一応……なんとか……」


さっきのでトラックの安城みたく、スーパーボールのように身体を打ち付けまくった。


――ガガガン!


後ろから虱潰しに卯月の装甲を破る音が聞こえる。アルミ箔を剥がすように重厚な砲塔装甲が看破された。


「"わあぁぁぁ!! 私美味しくないよぉおぉ!?!?"」


「ラーゼさん逃げて!」


まずい、第四砲塔が襲われている。仕方ない、城を捨てる。


展望室から艦橋、甲板部へと伝っていき、卯月を乗り捨てる。


が、目の前の景色は爆撃で廃墟と化した帝都アンバートン。


不可抗力だが、突っ切って逃げるしかない。ワープはまだクールタイム中。


火の手は収まったようで、黒く焼け焦げた市街地を走り抜ける。体力が保つか心配だ。


ここに何かジュストン中佐を嵌めるものがあればいいのだが……。


いや、ある。既に手札にある。一か八か、情に訴える。


「安城! お願い――」




なんとか体力を削りながら帝都を突っ切る。が、思いもよらないものが私の行方を阻んだ。


「……! そうか、通りで逃げる人が……!」


大半が西に向かう中、東へと向かう者もいた。それが彼ら。


彼らは帝都にある地下都市へ逃げ込んでいた。何人もの人がひしめき合っている。


なぜ、地下都市の光景を地上から見られるのかは単純なことだ。


空爆の衝撃で地上都市の天井の一部が崩落していた。


一難去ったのを気に何百人もの人が地上に姿を現している。故郷が焼け落ちた絶望的光景に戦慄していた。


何より、その崩落が北から南にかけて渓谷ができている。


そして――


「毛布いりませんかー?」


「水と非常食ありまーす」


ベセトアとデェシュメック軍人が毛布や食料片手に民衆へ呼びかけた。そして、何を逃れたベンシルリッキ兵もここに居合わせている。


彼らは瓦礫を片付け、連合軍と共に開けた場所を確保しようとす姿がある。一応、停戦交渉に基づいて仲良し作戦を行なっているが、民衆は懐疑的な目。


でも、彼らを巻き込まないために逃げなければならない。


「おーい、大丈夫?」


後ろから声が聞こえた。


「――ってお前何してたんだよ!」


ここぞとばかりにヒンベルは姿を現した。みぞおちをさすっている。


「急にどっか行くから……」


「急にどっか行かなきゃなんなかったんだよ」


「で、何してんの」


「追われてるから逃げたいんだけど……」


この渓谷は越えられそうにない。私がここに留まれば、この人たちの命の保証もできない。


渓谷は二十mもの幅がある。


「なあ、知ってるか?」


ヒンベルは神妙な表情だった。


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