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73話 これが……理想の上司……?

「ということだ、豊川。頑張ってくれ」


「なんで!? なんで先に私なの!?」


「まあ、そういう時もあるよな」


ヒンベルは納得するように言葉を返した。


「"サッキカラ邪魔バカリ……!"」


どうやら強者の戦場には弱者はいらないとのこと。


「ッ!!」


禍々しいレイピアの一刀両断をギリギリで躱す。背中が当たったような気もした。


……?


シールドがおかしい。ジュストン中佐が地面に打ち付けた衝撃が空間を伝わり、シールドに共振。


レイピアの刃からビニール紐の筋のような半透明の七色の覇気が出ている。


本能的に理解した。多分、当たっちゃダメなやつ。


ここはまずい。一旦態勢を立て直す。


次のジュストンの薙ぎ払いより先にワープを起動。


卯月の艦橋に戻ってきた。


「どうした? さっき湖の辺りで――」


私が帰ってくるや否やオルガ大佐は心配の言葉をかけてくれる。


「オルガさん、西に舵を切って! ジュストン中佐に追われてる」


「ッ!? わかった」


艦長席に深々と座った腰をすぐに上げ、操縦席に手をかけた。


「安城! ジュストン中佐を足止めして! また砲撃する」


多分こういう類は一度沈めないとどうにもなんない。


「"了解!"」


第四砲塔でスティックを使って砲塔を動かし、照準マークに合わせようと試みる。


しかし、ジュストン中佐は大胆不敵に動き回る。狙う隙を与えてくれない。


異様に早い。薄氷の翼で滑空するように卯月へ突っ走る。


補機で大気内航行を行う卯月と


卯月は補機を吹かしながら直進する故、振動で照準がブレる。


「オルガさん、上げ舵5!」


砲門の死角に入っている。どうにも撃つことができない。


やっと照準被っても、瞬時に外れる。


絶原性合金徹甲弾は安城にも効果はある。無鉄砲に撃つことはできない。


安城が回り込んでジュストン中佐を足止め。


鍔迫り合いはジュストン中佐の圧勝。


安城の足は地面をズルズル滑って後退。地面が削られる。


だが、ちょうどいい。うまい具合に射角に入った。


トリガーを引く。


閃光と共に雷鎚の音が轟く。砲門に滞留する黒煙が、視界を邪魔して着弾したかわからない。


「やった……?」


砲塔を動かして着弾地点を確認。巨大な粉塵の雲が覆っている。


直後、粉塵から白い一閃が突き抜けた。


「ッ……!?」


ジュストン中佐は無傷。外れたらしい。だが、問題なのは安城。


安城がジュストン中佐の結晶体の茨に突き刺さっている。


茨の一峰が安城の腹を貫いていた。


「大丈夫!?」


「……なんとか……」


安城は咳き込む。吐血しているのがイヤーピース越しに聞こえた。


「ふっ……!」


安城は茨を折り、刺されたまま再起を図る。


もう一度砲撃。


四連想だというのに、当たらない。


「ッ……!」


またジュストン中佐が死角に入った。


「面舵ロール180!」


艦橋に卯月を上下反転させるよう伝える。


主砲は自身より下の標的には当てれない。だが、これは宇宙戦艦。


水上艦のような二次元的な動きでなく、三次元的な舵切りを可能とする。


照準に捉えた。砲撃。


が、結果はやはり同じ。


すぐに土煙から化け物じみたジュストン中佐が顔を出す。


私が四苦八苦しながら照準を合わせていると後ろから誰か来た。


「豊川さーん、お困りかな?」


振り向くとラーゼさんが仁王立ちをしながらドヤ顔で私の後ろにいた。


「ラーゼさん!? どうしてここに?」


「部下が困ってるんだから助けるに決まってるでしょ〜?」


「ラーゼさん……」


「どいて。私、これでも砲兵だから」


私がどいてラーゼさんが席につくと手慣れた手つきでタッチパネルを触る。


どうやら選択してない設定もあったようでさっきのじゃ、よろしくなかったらしい。


「豊川さん、上で命令出して」


「……はい!」


私が来たからには百人力だと言わんばかりの顔で送り出してくれた。

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