72話 ジュストン、メガ◯ンカ!
剛速球の砲弾はジュストン中佐に直撃。
ジュストン中佐を中心に四つのクレーターを作った。
モニター越しに見ると、安城は風圧で吹き飛ばさたらしい。
画面を拡大。煙幕が晴れる始めた。
「……!」
ジュストン中佐は左横腹を砲弾で削がれていた。
吐血した血がクレーターに流入する水に滴る。
この実弾の詳細を見ると、『絶原性合金徹甲弾』とある。
絶原性、つまりプライマルエネルギー製のシールドを貫徹できる。
もう、地球の医学では手の施しようがないほどの致命傷だった。左腎臓は消し飛んでいる。
「ふざけ……あがって」
安城のイヤーピース越しにジュストン中佐の声を聞く。
衝撃で全身が粉砕されてもおかしくはない。いや、立っている時点でもはや人間ではない。
「もういい、一度不老不死になった時、既にデェシュメック王家の血は途絶えた。未練は無くす」
ジュストン中佐は何事にも動じず、淡々と言葉を発する。
発するにつれ、消し飛ばされた左横腹から血が吹き出す。文字通り腹水盆に返らず。
「ねえメルスィン、もうやめようよ。まだ助かるんだから」
ヒンベルが合流。クレーターの前までジュストン中佐に近寄る。
メルスィンとはジュストン中佐の本名……。
「知るか。総統、僕にプライマルの力を」
「『フライヤーのイカ』つった? イカフライ?」
「ざけんな!! プライマル化だ! プ、ラ、イ、マ、ル、化!!」
ジュストン中佐の顔が豹変。血をジャバジャバ噴き出しながらヒンベルの胸ぐらを掴む。
「ええ? ベレウゼ人以外辞めた方がいいよ? そんな池ポチャしてないで帰ろ?」
ヒンベルはジュストン中佐をなだめる。
「黙れ! 『雇用契約に基づき』、僕をプライマル化させろ!!」
ジュストン中佐にとってヒンベルとの会話はあまりにもじれったかった様子。
「……はぁ、わかったよ……忠告はしたからな?」
ヒンベルはそう言うと、ジュストン中佐の直ぐ側の湖の水をいじり始めた。
「あーあ、ごめんね安城。『契約上』逆らえないんだわ」
「……は?」
「おーい、ケーリー? メルスィンと直接話して。そっちの管轄だろ?」
突然、ヒンベルは水面に向かって喋り始めた。まるで水中に誰かいるかのよう。
当然、水中に人が入れるほどの深さではない。ジュストン中佐のくるぶしがつかるほどの水位。
ジュストン中佐はすがるように水面に顔を近づける。
「おい! 第四協定者!! 聞こえるんだろ!? さっさと力を寄越せ!!」
怒号が水面に伝わる。が、水面は沈黙。
「どうでもいい!! いいからやれ!!」
すると、水面が揺らぎ始めた。
強風は吹いていない。波のように荒くうねる。
「あ〜あ、『二万年前』の再来だよ」
「ヒンベル、何が起きてんの?」
「……? こっち来る?」
「え――」
ヒンベルは有無も言わさず私をジュストン中佐の前にワープさせた。
「何してくれてんの……って――」
足元にある湖の縁が退き始めた。それどころか、瞬時に乾いている。
水がジュストン中佐に纏わり始めた。
そして、水は氷よりも透き通った結晶体と凝固。
大使館にあったプライマルを想起させる。
光の屈折により七色に輝く。水晶のような美しさ。
結晶体は雪のような粒となり、ジュストン中佐を中心として渦を巻くように公転。
「はあぁぁ――――」
湖の水を飲み干した時には、結晶の粒がジュストン中佐を覆った。一つの白銀の結晶の塊となる。
「何が……?」
安城も固唾を飲む。
白銀の水晶体は黒ずみ、青い亀裂が入った。
青い閃光と共に破裂し、水晶体は蒸発。
姿を現したのは異様なジュストン中佐。
七色に光る結晶体によって身体の欠損部や各所が覆われている。
かえって禍々しさを感じさせる歪な太刀となったレイピアも結晶体に飲まれている。
レイピアと巨大化した右手も融合。自重のあまりレイピアを地面に突き刺している。
結晶体の鎧は見事に関節部にはない。おまけに背中に一対の翼のように割れた薄氷が付いている。
だが何より気味が悪いのは、結晶体に顔が侵食され、虹色の目玉が付いていること。絶え間なく変色。
「キモ……」
これにはキモい以外の言葉が出ない。
「うわ〜、こうなるんだ……そりゃ躊躇するよ」
ヒンベルもこの出来に低評価。
「緊張感ないな……二人共……」
「戦うのはあんただよ?」
「俺を裏切る気か?」
私は後方支援。逆にそれしかできない。
「"コケニシアガッテ……!"」
喋り方もおかしい。曇っているような、普通の人間の声帯ではない。
「"許サン……! ヨクモ……! 捻リ潰シテヤル……!!"」
「マズい……!」
「"生カシテ返サン!! 豊川!!"」
!?




