71話 卯月主砲四番、てぇぇーー!!
安城は本格的にジュストンと手を合わせることになった。
ジュストンの猛攻は安城を苦戦させた。だが、安城は違和感に気付いていた。
「ッ……! おかしい……いつもの調子じゃない……!」
「そうか、なら好都合だ」
ジュストンは手を緩めるつもりはない。一刻も早く皇帝を狩りたいという気持ちだけで突き動かされている。
しなやかな剣裁きに安城は翻弄。
ここに来て対人戦をほとんどしないことが祟った。
リバタールの冒険者は対魔物演習という名目で闘技は許されている。だが、決闘として深追いや傷つける目的の戦闘は禁止されている。
同等の知性を持たない魔物相手に武を奮った安城は、対人戦が何たるかを叩き込まれている。
研磨された一振が安城の鎖骨を狙う。
安城は十字のように剣を交わす。
激しく剣を打ち付け合う中、全くと言っていいほど甲高い金属音はなり響かない。
それどころか、衝撃さえも伝わらない。伝わるのは交わることによる押される力。
「若造、手に慣れたか? 他人の剣ほど握りにくいものはない」
「ッ……!」
まさに日の玉ストレートだった。ベセトアの士官から貸してもらった黒英刀は安城の手に合わなかった。
安城は後退を繰り返し、機があれば隙を打つ。
ジュストンは斬撃から刺突を柔軟に使い分け、斬りつける。
片手で身体の一部のように隙を縫い、安城のみぞおち、首筋にヒット。
一方、安城は両刃の西洋剣は斬撃と打撃が主な攻撃方法。
機動力はレイピアに分が悪く、かつプライマルエネルギーの刃は重い西洋剣とは相性が悪い。
苦心して胴に一撃。痛み分けとして胸への攻撃を許した。
「ッ! やるしかない……」
「ほう……」
ジュストンは安城の言葉に興味を抱く。
「アン エクレール――」
技名を口に出し、自身の体内にある魔力を黒英刀に伝達した時、
――ドンッ!!
凄まじい勢いで黒英刀が爆ぜた。火球が二人を包む。
爆風により安城は黒英刀を手放す。転がるように地面へ打ち付けられた。
このだだっ広い広原の湖の辺りに追いやられる。
「さっきのお笑いがお前の技か。エンタメをありがとう」
「ッ……! 魔力は使えんか……」
すぐに黒英刀をワープで手元に戻す。
黒英刀の青い光の刃はまだらに点灯。点滅している。
「くそっ、さっきのでイカれただと……?」
「自滅してくれる以上にありがたいものは――ない!」
ジュストンの刺突が安城の左胸を襲った。
「グアッ!」
局所的に安城のシールドに衝撃が伝わる。加えて魔力の対消滅反応でシールドが弱体化。
安城は打撲を引き起こした。地面に倒れ込む。
「終わりだ、お前は僕に嬲り殺されるんだ。素直に皇帝を差し出せばいいものを」
ジュストンは安城にレイピアを差し向ける。
「……!」
安城はレイピアの剣先を鷲掴み。
「俺はホントにダメなやつだ……。自負はある」
「暇乞いか?」
「けどさあ、俺にはいるんだ。俺を仕方なく助けてくれるやつがさ」
安城は口元が笑った。
そして、レイピアの剣先を地面に突き刺す。
「見えたよ、琴音……! やってくれ!!」
突如、二人に超高速で飛来する物体が着弾。
遅れて雷鎚が轟くような破裂音と空気を震わせる砲撃音が轟いた。
☆
安城がこらえてるうちに卯月の砲撃でジュストン中佐を仕留める。一見簡単そうだがそうはいかない。
早速、卯月の艦橋に戻ってオルガ大佐に砲塔の使用許可を得る。
「わかった。操縦は任せろ。だが、陽電子砲は使うなよ?」
「わかってます」
陽電子砲を使ってはならないというのは既にヒンベルから聞いている。
でも、根本的な問題があった。それは砲塔の操縦及び砲撃ができるかどうか。またそれが命中するのか。
私は当然そんな技術を持ってないからフィーリングでやるしかない。
しかし、軍事演習に砲撃係を招いていないのが、ここで仇になった。
「"ッ……! おかしい……いつもの調子じゃない……!"」
安城が一進一退の攻防続ける声がする。
自体は急を要する。やるしかない。
私は第二砲塔に行って自ら操縦することにした。
砲塔内は暗い色を基調とした装甲に、重々しい屋外の非常階段とかで見られるでこぼこした鉄の床。
最も奥、つまり主砲の前方部分は実弾を自動で搬入搬出してくれる機構がある。
その手間にはその機構に巻き込まれないよう、腹辺りまである柵で仕切られている。
どんなペーペーでも扱える親切設計。
そして、砲塔内の中心には主砲のコンソールと車にあるような座席が置かれている。三つのモニターにタッチパネル、戦闘機のフライトスティックのようなものがある。
すぐにコンソールに駆け寄り、席に座ってタッチパネルを触る。
えっと……どの砲門を使うかで全てを選んで……設定完了。
前方から音がして薬室に実弾が装填された。
すると、待機モードから砲撃モードに移行。左モニターは砲塔のシールド残値やpエネルギー供給量、電力供給を示す。
中央モニターは前方の景色を映して、画面上には方角、中央には照準が現れる。
右モニターは風速、大気濃度や気圧など外環境の数値を示していた。
タッチパネルは透過して内部が見える砲塔の全体図をあらゆる角度から見れる図が示された。その右下には『実弾兵装』と『粒子兵装』、つまり陽電子というタグがある。
『実弾兵装』が選ばれていて、もう一方は暗く示されている。そして発砲可能弾数に「本部備蓄弾数:∞」とあり、艦内備蓄弾数には「320」とある。
備蓄弾数:∞ってなんだよ……。
スティックを左右に動かすと砲塔自体が動き、引くと砲門が上がり、倒すと下がる。
一応基本動作は掴めた。
だが、残す問題は砲撃。ただそれだけ。
まず、スティックを右に倒し、照準が安城たちがいるところにあるようにする。
既にオルガ大佐がいい射角に調整してくれた。
照準の先には粉塵を巻き上げながら戦っている光景を、画面は映し出している。
照準が彼らに被るようにして、スティックにあるトリガーに指をかける。
安城たちは動き回るせいですぐに照準から外れる。
が、その機はすぐに来た。
ジュストン中佐が安城に剣を突き向けている。
推定着弾地点である照準マークにドンピシャ。
「いくよ! 安城!」
人差し指でトリガーを引いた。
前方のハンマーが雷管を叩く。
卯月の四つの砲門から閃光が瞬き、黒煙が主砲を覆った。
落雷のような破裂音が空気を震撼。
砲撃音が轟いた時には砲弾が発射。
空の薬莢が軽い音を上げて、薬室から排出された。




