69話 高知は田舎
デヴィースの大使館のハブポータルから地球にあるベセトアの拠点、日本のベセトア本拠地に来た。
なにげに久々に日本に帰ってきたがしみじみとしている時間はない。
本拠地の内部構造は来た時にマップに映し出された。そこから外への道を最短ルートで行く。
ハブポータルを抜け、エレベーターへ向かう。
しかしエレベーターは動かない。それもそのはず日本時間は既に深夜四時。定時どころか消灯時間を過ぎてる。
辛うじてハブポータルは明かりがある。夜勤の人がいたが、そこを出ると廊下や部屋は消灯されている。
仕方なく隣の階段から地上を目指す。コントーレの大使館同じく、地下はアリの巣のようになってるため、上がるのに骨が折れる。おまけにコントーレの大使館より構造が複雑。
息を切らしながら十五階分の階段を駆け上がる。
エントランスに出ると月明かりが窓から差していた。その光が中央にある金色の像を照らしている。
すぐにエントランスから外に飛び出した。
「――って、えぇ!?」
明かり一つないド田舎の大自然が一面に広がっていた。
本拠地はどうも山を切り崩し、均してできている。本拠地を囲うように川が流れている。
「何処ここ!? 何でこんなとこに本拠地構えた!?」
すぐに自分のスマホで地図を開く。よく使うやつ。スマレンはまだ対応していない。
すると示したところは高知、しかも山間部の電柱立ってるかも怪しいところ。
やはり本拠地を囲うように川が流れ、正面は従来の伊野仁淀線。まじかよ。
調べるに左へ行くと沈下橋を渡って集落へ行ける。
一方、ヒンベルの家は右へ行って、リサイクル場のある対岸の道の道中にある。
とにかく、驚きは閉まって全速力で駆ける。
走りながらマップで距離を測ると、三km。体力もつかな。運動は良くも悪くも可もなく不可もなく。しかし、今は仇となった。
なんとか伊野仁淀線に着くが、既に息は切れて横腹が痛い。
でも、我慢して一刻も早く着かなければ、救えるものも救えない。
道は街灯も無ければ電柱すら無い。枯れ葉や土の積もった辛うじてアスファルトの道路を駆け抜ける。
道路は微妙にうねっていて、歩きづらければ、はみ出た草木が邪魔をする。まじで田舎はゴミだ。
遂にリサイクル場は通過した。あともう一息。
シールド状態だと夜風を受けれないから一時的に解除する。少しクールダウンできた。
だが息が上がったまま走ってるため、喉奥が渇いて痛い。
それを押し殺して走る。すると見えた、白い外装に二階建ての一軒家。遠目からでも新築なのがわかる。
意外にも質素で、住宅街に紛れていたら全く見分けがつかない。
やっとインターホン前につき、息が上がった状態で連打する。
メロディーの最初しか聞こえない。
二十秒後くらいに出た。
「"誰ぇ? こんな深夜に"」
眠気を噛み殺した声が聞こえた。
「おい! 開けんかいゴラァ!!」
「"んん?"」
すると遠隔で家のロックが開けられた。
間髪入れずにドアを開けて入った。
すると廊下に目を擦っている寝間着姿のヒンベルがいた。
律儀に靴を脱いでいられないため、足で乱雑に脱いで上がり、ヒンベルに駆け寄る。
「誰ぇ?」
寝ぼけているせいで私が誰かわからないらしい。
そして両手を握り、強烈な右ストレートを一発ヒンベルの顔に入れた。
「――ヴン!?」
間髪入れずに左手でみぞおちに追撃をかます。偶然、シールドを着ていなかった。
「ガァ!」
ヒンベルが這いつくばる前にインファイトを断続的に繰り出す。
「ふざけんじゃねぇぞ!! あんたが寝てる間に何万人死んでんだと思ってんだ!!」
ヒンベルは言葉にならない悶絶した声をあげている。
「来い! あんたが終わらせろ!!」
床に転がっているヒンベルの胸ぐら掴んでからワープデバイスを起動する。
青い光は私たちを包み込んで、すぐに卯月の艦橋に着く。既にゼヴェリアに着いている。
「豊川……総統に何したんだ……?」
「えぇ……こわ……」
オルガ大佐と安城はこの光景にドン引き。
「と……豊……川、着替え……させて……」
そう言って寝間着姿のヒンベルはポータブルクローゼットでいつものスーツ姿になった。うつ伏せのまま。
「ねえ、ジュストン中佐はどこ?」
ヒンベルは私を情けない顔で見上げた後、調べる素振りをする。
ぶつぶつ独り言を言いながら調べ、身体を起こそうとしたが、すぐに胸を押さえつけた。
「早くしてよ」
「誰のせいだと……」
奥義のインファイトがこんなに効くとは思わなかった。
「――えーと、こっから七時の方向に七十km……アタタタ……」
起き上がれないらしく、しかめっ面で胸を押さえた。
卯月は帝都から一直線で西に動いた。つまり、帝都とゼヴェリアをつなぐ街道にいるのだろう。
ビンゴだ。
「ワープして」
卯月に来るためにワープを使ってしまった。
「安城、あんたも」
「人使い荒いなぁ……」
ヒンベルは渋々三人でワープした。




