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61話 話せば分かる

青い光と共に帯は消え、漆黒のベセトア軍が落下。


受け身と同時に銃を取り出し、照準をベンシルリッキ兵に合わせる。


即座に引き金は引かれ、撃っては標的を変え、撃っては標的を変える。額にたった一発を撃ち込むのみ。


「こいつらか……! こいつらがブルサ将軍を……!」


すぐに狼煙が上がり、チフテレル将軍本隊に信号が送られる。「敵襲を受けている」と。


数多のベンシルリッキ兵がたった一人のベセトア兵に銃を発砲。あしらうように弾かれ、傷一つつかなかった。


まだ手はあると言うように、携えた槍や剣で斬りかかる。


槍は突くなりすぐにたわんで柄が折れる。剣は肩から腰にかけて斬りつけるが、ボディーラインに沿うように剣先でなぞるだけ。


力任せに斬り叩くと剣身は砕け、氷のように鉄が輝く。


「ッ……! バカな……! そんなはずが――」


脳天に弾丸を貰い、崩れるように倒れる。


砦の城壁内部は地獄絵図となった。


本能的にベセトア軍の脅威を体感したベンシルリッキ兵は逃げ惑い、城内の部屋に身を隠す。だが、寄って集って集まるため、ベセトア兵の餌食となる。


篝が破壊され、周囲に火の手が広がる。


ベンシルリッキ兵が固まっていれば、グレネードが飛来。見知った爆弾とは懸け離れており、退避が遅れる。


一人が拾い上げた途端爆発。手に取ったベンシルリッキ兵は跡形もなく爆散。周囲の一兵卒も仲間の血を被る。


「あぁ……、神よ……、私に赦しを……!」


武器さえ持たず、合掌して天に懇願。


だが、無慈悲に鉛玉が身体に直撃。


「ひぃぃ……! やめてくれぇ……!」


一人のベンシルリッキ兵は手を顔の前に構え、丸腰なのを目の前のベセトア兵に伝える。


「……」


漆黒の銃を構えたベセトア兵は額に照準を合わせるが、情けない懇願が届いたのか、照準を逸らす。


そして、他のベンシルリッキ兵を狩り始めた。


「……?」


「話せば分かる! 話せば分かる! 話せば――」


自分と同じく命乞いをした仲間は、情けをくれたベセトア兵に撃ち抜かれる。


「なぜ……情けをかけた……?」


砦中の各所で命乞いは起きた。だが、八割型うまく行かない。一人の命乞いを受け入れたベセトア兵でも、他の敵兵にも等しく許しを与えない。


ベンシルリッキ軍は戦意喪失。指揮官はとっくに肉片となり、指揮系統は崩壊。破竹の勢いでベセトア軍に狩られる。


すると閃光弾が砦全体を照らすように発射。


突如の閃光弾に両軍とも目が眩む。


そして遂に、祈りが届く時が来た。


「"ベセトア軍、総員に告ぐ。すぐに戦闘をやめたし! 繰り返す。すぐに戦闘をやめたし!"」


砦の対岸からスピーカーで声が響いた。


「"こちら安城特別作戦司令官。戦闘をやめない場合、軍法会議に突き出す!"」


血の海となった砦に救いの手が来た。救いの手は敵軍の将の他にない。


ベセトア軍はすぐに聞き入れ、引き金から指を離した。


☆


なんとか暴走したベセトア軍に追いついた。


開戦の火ぶたを切ったブルサ将軍の軍隊は、既に手遅れとなったが、この砦に駐留するベンシルリッキ軍の一部は救えた。


我ながら閃光弾を使った作戦は上手くいった。


砦の鎮火は済み、死体とベンシルリッキ軍の残存兵の集約が終わった。


死体は開けた平地で列を作って寝かせている。残存兵は砦の中庭で整列させて待機。


でも、この間に他のベンシルリッキの駐留がベセトア軍に襲われている。演習場にいた人員が他のところを止めに出たが、どうなっているかは不明。


砦の城は上層部が崩れ、二階はなんとか生存。しかし、危険なので立ち入ることはない。


山を超えた先に兵舎と城壁もあったが、そこもやられている。今も兵舎から黒煙が立ち登る。


報告が上がり、状況整理。


ベンシルリッキ軍

死者:六千五百二十四人

生存者:千六百四十五人

負傷者:九百三十六人


デェシュメック軍

死者:四人

生存者:二十六人

負傷者:五人


ベセトア軍

死者:0人

生存者:八十人

負傷者:0人


う〜ん、ベセトア軍頭おかしい。一人何キルしたんだよ。


「つまり、私たちは偽司令官に操られてたと」


「はい、この戦争を企てた人間がベセトア内にいるんです」


砦の屋根の無い一部屋で、私はこの部隊を束ねるベセトア軍指揮官と話している。倒壊した砦の壁をテーブルにして壊れかけの椅子に腰を下ろす。


「そうか、不要な殺生だったと……」


指揮官は全身を鎧で覆っているため表情がわからない。


「はぁ……、軍法会議行きか……。ホント、お通夜みたいで嫌なんだよなぁ、今みたいに」


曇ったため息を付いてジョークをかます。


割れた窓から下の残存したベンシルリッキ兵を見下ろす。


身を縮めて震えている者やうずくまっている者もいる。


一言で言えば見るに堪えない。


ここを襲った大半のベセトア兵には帰ってもらった。あまりにも威圧的すぎるため。


なんでも『ゲラーべ』という氷の惑星にベセトアの基地が置かれているため、そこに帰ったらしい。責任追及は後でやる。


「第十五、十六、十七歩兵分隊は、それぞれ西部ベンシルリッキ軍駐屯地の三箇所に向かってください。彼らも唆されてるでしょう」


私はテーブルに広げられた地図を指差す。もともとここにあったものだ。


とにかく今は被害の最小化を図る。犯人探しは後。


「私はベンシルリッキ軍の報告にある通り、こちらに向かっているチフテレル本隊と中立化を図ります」


「承知しました」


私は腰を上げようとした瞬間、音を立てて扉がこじ開けられた。


「大変です! ベンシルリッキ兵が……!」

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