シーズン1 6話 異世界への切符(拒否権はない)
おかしいだろ……。さっきライブやってた奴が、なんで私と一緒にライブ見てたんだよ。
言いたいことが山程ある。何を言おうか迷いながら言葉を選ぶ。
「……本物?」
「本物」
やや食い気味だったが信じるなら本物なのだろう。
「……なんで、こんなところに……? てか、なんで覗いてたの……?」
「……ここはちょっと興味があってね。実は、あいつは代役で私になりすましてもらったんだよ。私は現地で問題が起きたって聞くから対応してたら、会談に間に合わなくってね」
はあ、わけがわからない。でも、今に始まったことじゃない。
「途中から行ったって仕方がないから、君のスマホで彼の勇姿を見届けていたんだよ」
「……ライブで言ってたことは本当なの……?」
「勿論」
迷いのない返答。これに難癖つけたって埒が明かないから信じることにする。
「んで、なんで私が見えたのかな?」
「え……」
わからない、ヒンベルと名乗る男性は図書館にいた私以外の人には見えていなかった。でも、その原因はわからない、見えた私と見えなかった他人との違いはわからない。
ヒンベルはずっと見下ろす形で私を見つめ、返事を待っていた。
ちょっと怖い。女性の中では身長が高い私でも、身長差十cmはくらいある。見た目がどれほど私と同世代程だとしても、歳不相応の威圧感が私を串刺しにした。
というか、あなたを始末します感が凄い。顔がそう言ってる。姿を消していたのだ、それを見破る私は彼にとって、気が気でないのだろう。
言葉を選ぼうにもどう言おうとどうなるかわからない。そもそもベセトア自体どういう組織なのかもわからない。
「…………」
しどろもどろしているとヒンベルが口を開こうとする。何か言われる、怖い。
「じゃあ、話を変えよう。君、もしかして就活生?」
虚勢を張って怯えてた私を見て、話を変えてくれた。若者がリクルートスーツを着ているのだ。そう疑われてもなんらおかしくはない。
身構えたが話は変わった。ひとまずは命拾いした。だが、一難去ってまた一難。次の質問はYesかNoで答えれるが、慎重に答えなければならない。
「……はい」
「何年生なの?」
「……四年」
「いくつ内定貰えてるの?」
「……0」
恥ずかしながら言うか迷ったが、素直に答えることにした。
「そうか」
ヒンベルは手を組み、唸りながら言った。
マジで怖い。見た目は人間に見えても、人ならざるものの怖さがそこにあった。
「……ねぇ」
「何?」
ヒンベルの目は全く変わっていない。凍ったような、政治家のような目つき。
「私に何する気……!? 殺したらただじゃ……」
ヒンベルは私の言葉に心外そうだった。少し目が動いた。逆に、今まで全く動かなかった。
「はぁ……、こんな初っ端から波風立たせたくないし、殺すわけないじゃん」
少し肩の力が抜けた。でも油断大敵。
「外交官やってみない? ベセトアの外交官」
「……外交官?」
一権力者が私に提案してきたのは一つの雇用だった。
外交官、国家公務員にして外国との渡し船。国家公務員自体なんなのか、私はよくわからない。だが、かなりの上澄みしか合格できない難関資格。
大学通っていてあまりにも縁が無い分野。翻訳系や人との交流、ましてや国家間の仲介役なんて全くできる気がしない。
「む、無理……! そもそも怪しすぎる」
「渡りに船だと思うんだけどね。私らは人員が足りないし、君は就職先を探している。ウィンウィンじゃないか」
言われてみればウィン・ウィン。でもそうじゃない。異世界とかあまりに現実味がない。でも彼らがいる時点で既に現実味はない。
「何するの……外交官って」
ヒンベルは目を逸らし、考え込んでから答えた。
「私の外交官は、ざっくり言えば、外現実、俗に言うと異世界で現地の権力者との話を取り持つのが主な仕事かな。上層部のスタンスを元に、大なり小なり相手と交渉するって感じ」
「……私でもできるの……?」
「教育すれば」
何一つ顔色を変えていない。半信半疑だが、嘘はついていなさそうだ。この地球以外に、世界はあるってのは少なからず本当。そうでなければ、ベセトアは今、ここにいない。
「待遇は?」
正直、これが一番重要。安月給でこき使われようなら、即刻交渉決裂。
「衣食住ついて給与二十五万、完全週二日制、有給二十日、一日七時間労働に休憩一時間、定時退社、ボーナス二回」
これには耳が釘付けになった。今まで受けてきた会社より格別にいい。天と地の差がある。
流石、未来の会社……というべきか、未来の組織は人権保護が手厚い。
「でも、外交官って外国に駐留じゃ……」
正直、日本から出るのは嫌だ。色々と身体に合わない気がする。
「まあ、その通りだよ。でも、この条件の企業はほとんどないだろう」
確かに、こんな条件はほとんど聞いたことがない。私の答えは出た。
「……やらない。そんな条件で募集してるんじゃ、鴨しかかからないよ」
私は断固とした意志を見せる。日本の外務省の外交官でさえ、そんな条件で仕事しているのか怪しい。待遇より、不透明さが勝った。ベセトア自体、まだあまりに不透明。
ヒンベルは懐に手を入れ、
「じゃあ、私は猟銃を以て鴨を捕るとするか」
と、不敵な笑みを浮かべて私を見つめる。まずい。
「知ってるか、ベセトアは現実を書き換えれる。この意味がわかるかい……?」
「殺す気……!?」
「まだ間に合う。君の答え次第」
柔らかな笑みを浮かべるが、目は笑ってない。
「……」
「もちろん保険も手厚い。就労者のみならず、二親等までベセトアの医療技術を無償で享受できる」
「……!?」
ベセトアの医療技術というのは未知数。だが、宇宙、ひいては異世界へ行けるほどの技術力を持った文明の医療技術。でも、暁光が指した。
「二親等って……おばあちゃんも……?」
「もちろん」
ということは、おばあちゃんの認知症も……?
おばあちゃんは正直言って長くはない命。だが、それでも苦しまずに記憶が確かなまま、「生きてて良かった」と言わせて旅立たせたい。エゴかもしれないが、最後の身内として思うところがある。
「認知症は治るの……?」
「一応。確約はできない」
確約は欲しかったが、ないのも頷ける。医療の世界に確実なんてない。成功率がきわめて低い手術もある。
「……わかった、やる。だから、おばあちゃんを治して」
「交渉成立」
ヒンベルはニヤリと笑みを浮かべ、手を出した。握手しようと。恐る恐る手に触れ、上下に揺さぶっられた。
その握手に手の温もりはなく、ヒンベルの手は冷たかった。
※やらないを選択したif現実ルート
「……やらない。そんな条件で募集してるんじゃ、鴨しかかからないよ」
私は断固とした意志を見せる。日本の外務省の外交官でさえ、そんな条件で仕事しているのか怪しい。待遇より、不透明さが勝った。ベセトア自体、まだあまりに不透明。
ヒンベルは懐に手を入れ、
「じゃあ、私は猟銃を以て鴨を捕るとするか」
と、不敵な笑みを浮かべて私を見つめる。まずい。
「知ってるか、ベセトアは現実を書き換えれる。この意味がわかるかい……?」
「殺す気……!?」
「まだ間に合う。君の答え次第」
柔らかな笑みを浮かべるが、目は笑ってない。
「……」
やる
→やらない
「……やらない」
「二度とこの機会はないよ?」
→やらない
やる
「やりません」
「……そうか」
ヒンベルは残念そうな声で返事をした。
「じゃあ図書館で私を見つけたことは『絶対に』話さないでね?」
ヒンベルは念を推してワープでこの場から去った。
そうして私は死に物狂いで内定を貰い、大学を卒業しそこに就職した。
ベセトアはその後あらゆる現実と交流を結び、日本にもその外現実の住人、人間や獣人などの異種族がやってきた。
あの宇宙戦艦が空へ飛んでいかない日はなかった。
しかしある日、無数の艦隊が一斉に空に飛んでいき、一隻も帰ってこなかった。その時、地球はとてもじゃないが人が住める環境ではなかった。
完
ヒンベル 役 ??? ???
豊川 琴音 役 豊川 琴音
??? ??? 役 ??? ???
??? 役 ??? ???
??? ??? 役 ??? ???
??? 役 ??? ???
??? 役 ??? ???
琴音の母 役 豊川 寿
琴音の父 役 豊川 哲也
琴音の祖母 役 二葉 琴美
地球の代表 役 地球諸国の外務大臣
ケンテプロッテ級一番艦 フィーチカ
四番艦 ヨツバアル
ローニ級 舞風
加賀
オライオン
野分
かえで
フライコフ
楓
卯月
赤城
サラトガ
ニーン
ベミオリオン
大津
ライカホ
(ちゃんと続きます)




