↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
58/87

58話 当時のAI合成音声はたかが知れてる

「なんてことを……!」


安城は今の光景に言葉を失う。


草木は焼かれ、平野の草むらは灰となった。その上にデェシュメック軍、ベンシルリッキ軍問わず人が血に濡れながら倒れている。


動かない。手当てしようと脈を測るが、誰一人脈がない。


目を見ると虚ろな眼だった。


安城の顔が青ざめる。


大勢のベンシルリッキ軍が麓に倒れている。上に登った兵士もベセトア軍に狩られ、枯れ葉を散らしながら転げ落ちてきた。


「安城長官、ベンシルリッキ軍の一個大隊は全滅しました。既に偵察隊が追っています」


死体処理を行なっている一人のベセトア軍士官が情報報告。


「そうじゃないだろ!? すぐに武装解除しろ」


「ですが……」


「安城殿、追いましょう。今夜、諸悪の根源たるベンシルリッキ帝国を壊滅させるのです」


「ミラス旅団長まで……俺たちがやることは演習だけじゃ……!」


二人は安城の言葉にピンと来なかった。意味が理解出来なかったわけではない。


「……お言葉ですが、攻撃指示は安城長官であると記憶しているのですが……」


「それはどういう……」


士官は安城に一つの動画を送る。その士官のスマレンが録画した映像。


安城はすぐに再生し、事の顛末を確認。


士官は一般兵たちを見渡せる場所に陣取っていた。


発砲音が聞こえ、両軍が動揺し始める。


もう一度、発砲音が聞こえた時、


「"両軍士官に通達。ベンシルリッキ軍を北西の山で視認。先ほどの発砲は彼らのものと思われる。宣戦布告と受け止め、開戦を宣言する"」


と、安城の声で再生されていた。


ベセトアデェシュメック連合軍が北西の山へ隊列組み行進。


そして、


「"てぇぇー!!"」


と、安城の声を皮切りに開戦の火ぶたが切られた。


「どういうことだ……?」


安城は自分とは似ても似つかない自分の言動に戸惑いを覚えた。


「俺はその時、失踪者を探してたはず……」


そんなことはやってない。やってないはず。だが、証拠が目の前にある。そんな証拠があろうものなら、『やったような気がする』という疑念に飲み込まれる。


「やってない……俺は……やってない……」


安城は頭を抱える。目の前が真っ暗になった。


こんな事実がある以上、責任の言い逃れもできない。何より、自分が人殺しを働いたなどと思いたくなかった。


「"……安城、さっきの聞いてたけど、お前がやったんだな"」


「違う! 琴音! 知らないぞこんなの!」


寸分違わず、動画の声は安城のものだった。これには誰一人として疑いようのないもの。


「安城殿、『本当に』言ってないのか?」


「もちろんだ……!」


迷うことなく即答。


「"安城これもしかして、『誰か』が戦争を誘発させたんじゃない?"」


琴音には一つの疑念があった。


「"失踪兵も『誰か』に触発されて山に潜った。『誰か』はこの演習より戦争を望んでいた"」


「琴音……」


「……一利ある」


琴音の言葉にミラス旅団長は納得。


「"あと、アリバイは私が証明できる。安城と一緒に探してた"」


「じゃあ、これは偽物?」


「人の声を真似るなんてできるのか……?」


「ああ、合成音声と言ってな。AIによって作られたものが大体だが……ベセトアには人の細胞を使って対象の声色を完全再現できる」


ベセトア軍士官は淡々と説明。


「合成音声なんてゆっくり実況くらいしか聞いたことないぞ……」


「"確かに……"」


「わかった、ならばすぐに戦闘を中止しよう。これで奴らも懲りただろうしな」


ミラス旅団長は大きく息を吸い、


「狼煙を炊けぇーー!!」


と、ミラス旅団長はすぐに側の部下に狼煙を焚くよう促す。


篝火から薪を焚き上げ、火を大きくしようとする。


だが直後、雲行きが怪しくなった。


「……? 雨か……まずいな……」


ミラス旅団長が手のひらを広げると、ポツポツと降り始めた。


空は星空を覆うような暗黒の雲がかかっていた。


「これじゃ私たちは知らせられない」


「安城長官、悪いニュースだ。偽長官が各部隊に司令を伝達。通信系統がジャックされた」


「なんだと……!?」


「姑息だな……。ものの見事に私らだけ通信を除け者にしている」


「"安城、やることは一つだよ"」


「……わかった。一刻を争う。各自、攻撃中止を各員に伝えたし」


「「了解」」


ミラス旅団長はすぐに行動に移し、自らの口で攻撃中止を伝えにゆく。


ベセトア軍士官も緊急作戦中止煙弾を発砲。暗い夜空に赤い煙が立ち登る。


「それで閣下、連合軍はどこへ向かったんだ?」


「開戦を切ったこの山道をデェシュメック軍は登っていきました。ですが、ベセトア軍は空挺降下とワープ強襲を行おうと、各自散開した様子」


「ベセトア軍の追跡は困難だな……」


「"いや、追跡しなくても待ち伏せできる。ベンシルリッキ軍がいる駐屯地なら絶対に来る。私ならそこを狙う"」


「……本当に頭が回るやつだ。琴音が言うんだったらそうなんだろうな」


安城は少し涙ぐんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。