↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
37/86

37話 安城、あなをほる!(墓穴)

推定最深部である大使館の地下に来た。ヒンベルのワープで、大使館のポータルハブを経由せずに直行。


大使館の地下は吹き抜けのように天井が高い。壁に沿って螺旋階段が上まで続いている。壁や地面はそのままの岩肌。だが、大理石や普通の火成岩、堆積岩と違ってどことなく心を吸われる岩石。


最下層の地底湖に佇むプライマルに近いほど、超優黒質。黒い等粒状組織の岩石の中に青い光が輝く。地底湖は淡く青色に輝くプライマル、直径十mほどの球体が水中を照らしている。


自然に息をのむような幻想的な場所が、大使館の真下にあった。


「ここが大使館の真下……」


地上の大使館へと続く階段や壁は岩肌が剥き出しで、整備されたものではない。だが、最下層は電子機械や設備、駐留用の寝床などが整っていた。


ワープした目の前の寝床に誰かいる。ブラウン色の髪色をした男性、ヘルドゥさんだ。横たわり、布団を身体にかけて寝ている。私もそろそろ寝たい。


「おーい、ナルボンヌ」


ナルボンヌ、多分ヘルドゥさんの本名。こんな形で本名が割れるとは。ベセトアの人たちは源氏名で呼び合うことを意識していたのに。


「……? ああ、総統。なんですか……?」


「夜勤でしょ。何かあったら困るからちゃんと起きて」


ヒンベルは優しくヘルドゥさんを咎めた。


「昼間寝なかったの?」


「ああ……、寝てない……」


ヘルドゥさんはそう言ってまどろみに飲み込まれた。


「まあ、こいつはほっとくか」


ヒンベルはグループチャットの通話で二人に話しかける。


「おーい、二人共ー? 多分大使館の地下が最深部なんだと思うんだけど、来れる?」


「"ワープ使えば"」


「ワープ使わないでね」


「"ダンジョンから行けるのか?"」


「知らね。君色々技覚えてんだったら『あなをほる』でも使ったら?」


まるで安城が地面技を習得できているかのような言い方。


「"地面技は専門外だぞ"」


「じゃあ、『じだんだ』……?」


「"負けて悔しがれってか? 冗談じゃない"」


これは皮肉。ヒンベルの皮肉はここぞって時に来るから結構心にくるものがある。そして、御三方だけで話が進んでいく。もう、私いなくてもいいんじゃないかな。


そう思って私は大使館のハブポータルにワープし、激長階段をショートカット。もう一度風呂入って身支度してから寝た。


☆


午前七時四五分、起床。八時に朝食があるからそれまでに支度。


食べたいものを選べばすぐに出てくる食堂方式なので飽きることはない。ちなみに、食堂は無人。全て本部の方で作ってワープで転送されてきている。


そんな感じで午前九時、始業。今日もそれなりにやり切ると意気込むと、


「ちょっとこっち来てくれない?」


と、ヘルドゥさんに呼び止められた。


私はルルさんについて行くまま、歩いていくと、大使館地下、最深部まで連れてかれた。


「ここに何か用なんですか?」


「なんか、ヴィーインと勇者で穴掘り対決してるみたいだから、どっちが先に来るか見ててほしい。ラーゼには僕から言っとく」


そういえば、ヘルドゥさんは夜勤明けか。あの後、またヒンベルに起こされたのだろう。


本部との連絡橋であるプライマルは、誰かが見張っていないといけないらしい。不用意に近づくと危険だとか。


「じゃ、おやすみ」


ヘルドゥさんはあくびを噛み殺してワープした。彼も私と同じく、ショートカットしたのだろう。時短は大事。


「ねぇ安城、今何してんの?」


私はグループチャットで通話を試みる。ヘルドゥさんが穴掘り対決とか言ってたけど、それはもはや趣旨が変わっている。


「"今ツルハシでそっちに向かってんだ"」


「いつから炭鉱夫にジョブチェンジしたんだよ」


安城が炭鉱夫になっているせいか、電話越しにツルハシで岩石を叩く甲高いことが聞こえる。しかも、めちゃくちゃ早い。多分百二十bpmくらいの速度でやっている。腕どうなってんだよ。


安城だけじゃない、ヴィーインさんの方からも騒音が聞こえる。


「どれくらい進んだの?」


「"五mくらい"」


「もうやめたほうがいいと思うよ」


私が寝ている間、つまり八時間くらいでやっと五m。遺跡と大使館最深部の距離は、十mくらいはある。もう八時間必要だが、疲労を考えるなら更にかかる。


私が検問所の事務室みたいなところに腰をかけながら、安城たちの騒音を聞く。頭が痛くなってくる。


そうしていると、ラーゼさんからメッセージが来た。


――そういえばちょうどやってもらおうと思ったからブリッジの監視をお願い。ブリッジってのはそこのこと。今日は試しだから定時までそこに居て。プライマルに出入りするやつがいなか見張るだけだから。特に記録することもないから何で暇を潰してて。


長文で今日の業務、いや、苦行を知らされた。要約すると、「そこに八時間いろ、何をしててもいい」と言うことだ。まあ、ランチの時は上に上がれるだろうけど。そう思ってた矢先、更にメッセージが来る。


――あとランチは運ぶからそれまで待ってて。


つまり、私は八時間ここに幽閉されることが決定した。やらなければならないものが数々と迫っているって言うのは地獄だが、やることが何一つ無く、ずっとそこにいろってのも地獄。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。