30話 序盤に戦うラスボスは序盤の主人公でも戦える性能(2)
しかし、ヒンベルの痩せた骨と皮の腕一本で防がれた。刃が当たっている箇所だけ特撮のように火花が散っている。
ヒンベルは足で安城をものすごい勢いで飛ばし、地面に転がした。その期に抜刀。刀を構える。
安城はすぐに起き上がり、仕掛ける。
が、ヒンベルは見切ったように防いだ。鍔迫り合いに持ち込む。ヒンベルが押され気味。
不利とわかると引き下がる。
「流石はこの地で勇者と讃えられる人間か……、素早さも卓越していれば、力も桁違い……」
「今ギブアップしたっていいんだぞ!」
「今パワーアップしたっていいんだぞ」
次はヒンベルは安城に駆け寄り、小手、脳天に綺麗な一撃を入れる。だが、彼にとって動きが緩慢なのか完璧に防がれる。
これからだと言わんばかりヒンベルは、三角形を描くように三連撃。そして突き。
安城は三連撃を防ぎ、身体を反らして突きを回避。どちらも見切られている。
「遅えぞ総統! 老害!」
安城は調子に乗り、ヒンベルに煽り文句を垂れた。
「……せっかく有利な条件出してやったと言うのに、この仕打ちか……ならいい」
ヒンベルは懐から拳銃を取り出し、安城に向けて発砲。頭を狙った。
「ッ!? あっぶねぇな!! みんなに当たったらどうすんだよ!!」
「ショウタ様!! ご安心を!! バリアがあります!!」
外野が作った魔力由来のバリアが闘技場を覆い、二人だけの戦場を作り上げた。場外となる線より半径二m余分に大きいバリア。
「なら存分にやれるな」
ヒンベルは更にサブマシンガンを取り出す。強烈な発砲音と共に銃弾が安城に飛び掛かった。
安城は横に駆け抜け、銃弾を躱す。その反射神経はもはや人間のものではない。発射と同時に見切らなければ、回避不可。
マガジンを空にするとサブマシンガンを投げ捨て、インベントリにしまった。そして刀を構える。
安城も立て直し、剣先をヒンベルの首に合うよう構え直す。
第二ラウンド、先制したのやはり安城。ヒンベルは瞬発性はあるものの安城に劣る。そして致命的に持久力がない。
安城の一筋はヒンベルの首を捉え、ギリギリで回避される。切り替えて間髪入れずに胴へ入れる。
ヒンベルは刀の峰を左手で持ち、刃を防ぐ。が、持ち替えたことにより、次の動作が遅れた。
安城のさらなる追撃が首にヒット。少量の火花が飛び散り、外野からもその光景がわかる。
これには冒険者一同の歓声が響き、ヒンベルはその勢いに押された。
「どうだ総統、疲れが見えてきたんじゃないか?」
自信過剰な安城はゆとりを持った表情でヒンベルを煽る。
「……、やはりソースを生命維持に回した分、能力が落ちてるな……」
ヒンベルは唸り、自己の分析を行なっている。自身が不利に置かれている中、冷静に分析できる態度は見習いたいものがある。
「来なさい」
ヒンベルは安城を鋭く見据えた。
「なら、本気出してやるよ……!」
安城の剣は昨日見たものと同じ覇気を纏い、構えた。
「アン エクレール ドブ!!」
まばゆい光がヒンベルを一刀両断。しかし、綺麗に刀で受け流された。その隙に、ヒンベルは安城の胴に一撃。
特撮のように火花や火球が生じ、辺りに煙が舞う。
「魔力の障壁で防ぐ、か……」
「琴音のシールドで思いついたんだ」
両者引かず。この光景に冒険者は安城にさらなる声援を、スポーツマンシップのない輩はヒンベルに罵声を浴びせた。
「私も技名叫んで攻撃した方がいいか?」
「技があるんだったな」
調子乗ってんなぁ……。
安城の挑発に乗り、ヒンベルは灰色の筒をインベントリから取り出した。メカニックで正面には弾頭……。これあれだ、アカンやつ。
「大爆発」
即座に照準を定め、引き金を引く。弾頭、ロケット弾が安城目がけて飛翔。
そして闘技場を覆うほどの火球が彼らを飲み込んだ。この光景に冒険者の声援はピタリと止む。
これは流石にアカン。相手がシールド持ってるとわかった矢先、恐らく最高火力のものを叩き込む。これほど酷い決闘があっただろうか、いやない。
「……はぁ……! 急に殺意高くなるじゃねぇか!」
爆煙から顔を出し、ヒンベルに文句を言っている。その五体満足を冒険者に見せると、大爆発で凍りついた場が声援で満たされる。
だが、この爆発から生き残ったのは安城だけじゃない。ヒンベルも再装填されたロケットランチャーを担いで姿を見せる。ブーイングがとんでいる。
「勇者、ここ死んでるところだぞ。やり直し、Take2」
「またもやらすか!!」
そう言って安城はヒンベルのロケットランチャーを叩く。真っ二つとなり、使えなくなった。
「おい備品壊すなって。今生産不可なんだぞ!」
そうして安城は剣技や魔法、ヒンベルは銃火器での戦闘が続く。この一進一退は、文字通り火花散らす戦い。
それを観戦していると、横に誰か来た。ヴィーインさんだ。ルルさんも随伴。
「あれ、ヴィーインさん、何しに来たんですか?」
「暇だったし、なんか、ここでドンパチやってるから見に来た」
そんなゲーム感覚で見に来るなよ……。当人は裁判や名誉かかってんだぞ。恐らくヴィーインさんみたいな考えが、なぜ昔、闘技場などの殺し合いの娯楽があったかを物語っていると思う。
「いいぞー!! 総統を倒せー!!」
「天の使いを自称する逆賊を殺すんだー!!」
「剣を交えない腑抜けなんぞ、決闘で勝つ資格なんてない!!」
相変わらず物騒な声援。安城はあんな醜態をさらしても、支持される理由が知りたい。
一方でヒンベルへの声援は全く聞かない。というか、この戦いを見る層の性質上、存在しない。
ヒンベルは次第に押され始めている。それが力のぶつけ合いによるものなのか、声援によるものなのかはわからない。
「ん〜、ヒンベルクセ出てるなぁ〜」
ヴィーインさんがヒンベルの行動に苦言をこぼす。
「わかるんですか?」
「一応。昔はたまにあいつの試合見てたし」
ルルさんも続けて答えた。
「新天地でたまにスポーツ大会で剣技があったの。それで観戦してた」
「やっぱり強かったんですか?」
ヴィーインさんは「その言葉を待っていた」と、言わんばかりに答えた。




