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3話 僕と契約して、外交官になってよ!

彼らはこの島国に降り立ち、地球の首脳らが一同集結。


彼らの目的、『リブート計画』の遂行のため、同盟を結ぶ会合が行われた。


それがさっきの全世界配信。


そして今に至る。


おかしいだろ……。さっき配信やってた奴が、なんで私と一緒に見てたんだよ。


言いたいことが山程ある。何を言おうか迷いながら言葉を選ぶ。


「……本物?」


「本物」


やや食い気味だったが信じるなら本物なのだろう。


「……なんで、こんなところに……? てか、なんで覗いてたの……?」


「……ここはちょっと興味があってね。実は、あいつは代役で私になりすましてもらったんだよ。私は現地で問題が起きたって聞くから対応してたら、会談に間に合わなくってね」


はあ、わけがわからない。でも、今に始まったことじゃない。


「途中から行ったって仕方がないから、君のスマホで彼の勇姿を見届けていたんだよ」


「……配信で言ってたことは本当なの……?」


「勿論」


迷いのない返答。これに難癖つけたって埒が明かないから信じることにする。


「んで、なんで私が見えたのかな?」


「え……」


わからない、ヒンベルと名乗る男性は図書館にいた私以外の人には見えていなかった。でも、見えた私と見えなかった他人との違いはわからない。


非現実的、スピリチュアル的な話、超能力とかとしか説明がつかない。


ヒンベルはずっと見下ろす形で私を見つめ、返事を待っていた。


ちょっと怖い。見た目がどれほど私と同世代程だとしても、歳不相応の威圧感が私を串刺しにした。


言葉を選ぼうにもどう返答すればいいかわからない。そもそもベセトア自体どういう組織なのかもわからない。


「…………」


しどろもどろしているとヒンベルが口を開こうとする。何か言われる、怖い。


「じゃあ、話を変えよう。君、もしかして就活生?」


虚勢を張って怯えてた私を見て、話を変えてくれた。若者がリクルートスーツを着ているのだ。そう疑われてもなんらおかしくはない。


ひとまずは命拾いした。だが、一難去ってまた一難。


「……はい」


「何年生なの?」


「……四年」


「いくつ内定貰えてるの?」


「……0」


恥ずかしながら言うか迷ったが、素直に答えることにした。


「そうか」


ヒンベルは手を組み、唸りながら空を見上げた。何か思案しているのだろうか。


マジで怖い。見た目は人に見えても、人ならざるものの怖さがある。


そもそも、こんなことしている場合ではない。衝突の驚異が去り、一刻も早く手に職をつける必要がある。


老人ホームの費用だって馬鹿にならない。治せなくとも、明日ある命を今日尽きさせたくない。


「……ねぇ」


「何?」


ヒンベルの目は全く変わっていない。凍ったような、政治家のような目つき。


「私に何する気……!? 殺したらただじゃ……」


ヒンベルは私の言葉に心外そうだった。少し目が動いた。逆に、今まで全く動かなかった。


「はぁ……、こんな初っ端から波風立たせたくないし、殺すわけないじゃん」


少し肩の力が抜けた。でも油断大敵。


「外交官やってみない? ベセトアの外交官」


「……外交官?」


一権力者が私に提案してきたのは一つの雇用だった。


外交官、国家公務員にして外国との渡し船。国家公務員自体なんなのか、私はよくわからない。だが、かなりの上澄みしか合格できない難関資格。


大学で学んだこととは、あまりにも縁が無い分野。翻訳系や人との交流、ましてや国家間の仲介役なんて全くできる気がしない。


「む、無理……! そもそも怪しすぎる」


「渡りに船だと思うんだけどね。私らは人員が足りないし、君は就職先を探している。ウィンウィンじゃないか」


言われてみればウィンウィン。でもそうじゃない。異世界とかあまりに現実味がない。でも彼らがいる時点で既に現実味はない。


「何するの……外交官って」


ヒンベルは目を逸らし、考え込んでから答えた。


「私の外交官は、ざっくり言えば、外現実、俗に言うと異世界で現地の権力者との話を取り持つのが主な仕事かな。上層部のスタンスを元に、交渉するって感じ。それに、交渉の場において外交官は誰よりも強い。今、開拓先の現実で外交官が少ないんだよ」


「……私でもできるの……?」


「教育すれば」


何一つ顔色を変えていない。半信半疑だが、嘘はついていなさそうだ。


「ほら、配信でも見せたけど、これが外現実」


と、伸縮自在なタブレットを展開し、外現実の画像を私に提示。


「『リブート計画』に基づいて既に、三つの文明と交流を結んでいる」


そこには地球の五百年以上前の中世のような王とヒンベルが、豪華な広間で握手する様子。


地球人ではない、所謂獣人やエルフのような人と肩を組む、現代的な服装のベセトアの人間。


人間の手のひらに妖精のような小人が立つ絵面。水面に浮かぶ宇宙戦艦を背景に魔法陣を展開する人々。


絵に描いたような世界がその向こうに広がっていた。


「面白いでしょ?」


「就職を面白いで片付けたくない」


「面白いを仕事にしてもいいんだけどねえ」


半信半疑だが、この非現実的な画像を信じざるおえない。


この地球以外に、世界はあるってのは少なからず本当。そうでなければ、ベセトアは今ここにいない。


「君はこの『現実』を見限ってるのかい?」


「……まぁ……うん」


こんな酷い場所を生き続けるのは考えたくない。


「ならちょうどいい。ベセトアには『現実』を変えれる力がある。その力、君が握れる可能性だってあるよ。外交官になってこの『現実』を変える気はないかい?」


『現実』を変えられる……か。だったらこの身も蓋もない世界を変えられるのだろうか。


「内定0の現実も変えれるし、こんな惨状の『現実』も。それに、異世界の現実も変えられる」


「……待遇は?」


正直、これが一番重要。安月給でこき使われようなら、即刻交渉決裂。


「衣食住ついて給与二十五万、完全週二日制、有給二十日、一日七時間労働に休憩一時間、定時退社、ボーナス二回」


これには耳が釘付けになった。今まで受けてきた会社より格別にいい。天と地の差がある。


この待遇なら、貯金を崩さずともおばあちゃんの施設費だって賄える。


「でも、外交官って外国に駐留じゃ……」


正直、日本から出るのは嫌だ。色々と身体に合わない気がする。


「まあ、その通りだよ。でも、この条件の企業はほとんどないだろう」


確かに、こんな条件はほとんど聞いたことがない。私の答えは出た。


「……やらない。そんな条件で募集してるんじゃ、鴨しかかからないよ」


私は断固とした意志を見せる。日本の外務省の外交官でさえ、そんな条件で仕事しているのか怪しい。待遇より、不透明さが勝った。ベセトア自体、まだあまりに不透明。


ヒンベルは懐に手を入れ、


「じゃあ、私は猟銃を以て鴨を捕るとするか」


と、不敵な笑みを浮かべて私を見つめる。まずい。


「知ってるか、ベセトアは『現実』を書き換えれる。この意味がわかるかい……?」


「殺す気……!?」


「まだ間に合う。君の答え次第」


柔らかな笑みを浮かべるが、目は笑ってない。


「……」


「もちろん保険も手厚い。就労者のみならず、当人の二親等までベセトアの医療技術を無償で享受できる」


「……!?」


ベセトアの医療技術というのは未知数。だが、宇宙、ひいては異世界へ行けるほどの技術力を持った文明の医療技術。暁光が指した。


「二親等って……おばあちゃんも……?」


「もちろん」


ということは、おばあちゃんの認知症も……?


おばあちゃんは正直言って長くはない命。だが、それでも苦しまずに記憶が確かなまま、「生きてて良かった」と言わせて旅立たせたい。エゴかもしれないが、最後の身内として思うところがある。


ヒンベルの話を信じるなら、安らかに旅立たせる現(・)実(・)を実現できる可能性がある。


「認知症は治るの……?」


「一応。確約はできない」


確約は欲しかったが、ないのも頷ける。医療の世界に確実なんてない。成功率がきわめて低い手術もある。


「……わかった、やる。だから、おばあちゃんを治して」


「交渉成立」


ヒンベルはニヤリと笑みを浮かべ、手を出した。握手しようと。恐る恐る手に触れ、上下に揺さぶっられた。


その握手に人のような手の温もりはなく、ヒンベルの手は冷たかった。


この時、『現実』が変わった。この選択が、あらゆる『現実』を変えた。


これがベセトアとの接触がパンドラの箱だと呼ばれる所以――

※やらないを選択し続けたifルート


「まだ間に合う。君の答え次第」


柔らかな笑みを浮かべるが、目は笑ってない。


「……」


 やる


→やらない


「……やらない」


「二度とこの機会はないよ?」


→やらない


 やる


「やりません」


「……そうか」


ヒンベルは残念そうな声で返事をした。


「じゃあ図書館で私を見つけたことは『絶対に』話さないでね?」


ヒンベルは念を推してワープでこの場から去った。


そうして私は死に物狂いで内定を貰い、大学を卒業しそこに就職した。


ベセトアはその後あらゆる現実と交流を結び、日本にもその外現実の住人、人間や獣人などの異種族がやってきた。


あの宇宙戦艦が空へ飛んでいかない日はなかった。


しかしある日、無数の艦隊が一斉に空に飛んでいき、一隻も帰ってこなかった。その時、地球はとてもじゃないが人が住める環境ではなかった。


           完


      ヒンベル 役 ??? ???

     豊川 琴音 役 豊川 琴音

   ??? ??? 役 ??? ???

       ??? 役 ??? ???

       ??? 役 ??? ???

   ??? ??? 役 ??? ???

       ??? 役 ??? ???

       ??? 役 ??? ???

      琴音の母 役 豊川 寿

      琴音の父 役 豊川 哲也

     琴音の祖母 役 二葉 琴美

     地球の代表 役 地球諸国の外務大臣


プリンセス・ケンテプロッテ級一番艦 フィーチカ

              四番艦 ヨツバアル


クイーン・ローニ級    舞風 

             加賀

             オライオン

             野分

             かえで

             フライコフ

             楓

             卯月

             赤城

             サラトガ

             ニーン

             ベミオリオン

             大津

             ライカホ         


      (ちゃんと続きます)

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