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28話 公開処刑

ヒンベルに社内メールで安城が夜這い……じゃないな、朝這いしてきたスマレンの録画ファイル送りつけて来てもらった。


そして「よくやった」とだけ返ってきた。


見せしめと言わんばかりにフィゼナの冒険者ギルドに連行して裁くつもりだ。


安城はヒンベルに土下座をし、ヒンベルは安城の前で仁王立ちしている。安城にはヒンベルの凍えた視線が降り注ぐ。


「えーと、何を言うべきか……。そうだ、何か言い残すことは?」


「気が早いぞ、ヒンベル。でも、もう殺っていいよ」


私は横のベンチのような椅子に腰をかけて安城を断罪するヒンベルの光景を眺めている。


「じゃあな、勇者、お前はいい奴だったよ」


ヒンベルはどこからともなくインベントリから白刃の刀を取り出し、上段の構えを取った。


「待てクソ野郎……!!」


突如ガタイのいい男がヒンベルにタックル。ヒンベルはよろけて上段の構えをやめた。


「俺たちのヒーローに何しやがる!!」


更に男に続いて男女問わず冒険者が安城を囲う。


「ああ、冒険者の皆さん。いい証拠がありますよ、豊川」


私はモバスクを広げて冒険者たちに映像を見せる。私が安城に襲われた映像であり、ヒンベルに送った無修正のやつ。


「これは『動画』過去の出来事を切り取って絵で追体験するようなものだよ」


安城が私の寝起きに襲ってきた動画が冒険者たちの網膜に映った。無論私たちの声も付いている。


「どうですか、あなたたちのヒーローは性犯罪を働く卑しい人間だったと。しかも相手は弊社の外交官、これは外現実外交として由々しき事態、ですよねぇ? 陛下、夫人?」


ヒンベルが冒険者ギルドの入り口に目線を送る。


そこにはコントーレの陛下とマドレーヌ夫人、そしてコントーレの騎士とベセトアの軍人がそれぞれ二人がいた。


「な……陛下……マドレーヌ夫人……!」


冒険者や安城は彼らの突然の登場でうろたえた。ザワザワとイヤーピースでは拾えない声が行き交う。


「次元間憲章に基づき、相応の処置を講じてもらいたいのですが……」


ヒンベルは顎を触り、まんまと術中にハマったなと言わんばかりな顔。


「……」


「……」


二人は動画に目を丸くしている。動画という技術に驚いているのか、勇者が蛮行を働いたのに驚いているのか。


「私から進言させていただけるなら、速やかに冒険者を解体したく存じます。これが議会のお達しでふ」


なんとなくヒンベルの考えがわかった。ヒンベルは冒険者解体を促進させるためにこの事件を拡散。だからあの時、「よくやった」と言ったのだろう。


すると陛下が口を開いた。周囲がそれを見ると、静まり返った。


「……別によくない?」


陛下から発せられたのは、もはや呆れとも読み取れる疲れ果てた声。


「貴殿の外交官が被害あったと聞いて来ましたが……こういった事案は何度も起きていて……」


「度々裁判も行なって相応の処罰を下したのですが……改善の見込みがなく……」


陛下に続けて夫人も口を開いた。これはだいぶ手を焼いている口調。


「彼に更生を目的として処罰を望むのは得策ではないかと……」


「外交官様にのしかかられた以外に被害がないのでしたら、穏便に済ませたく存じます」


この仕打ちにはもはや安城に軽蔑の目を向けざるおえない。その目は私だけでなく、ヒンベルや冒険者の女性の面々も向けている。


更生不可の人間には何をやっても意味がない。意味がなければ匙を投げる以外にやれることはない。これは相手を無敵にすると同時に最大限の侮蔑だ。これはラーゼさんたちにも言える。


「……まあコントーレの領事裁判権はこっちが持ってるから、逮捕ね」


どの道連行なり制裁を下すのだろう。当初の打算は打ち砕かれたが、安城は何としてでも問い詰めるらしい。


「……俺が捕まったら冒険者はどうなるんだ……?」


「どうなるも何も消えるだけだよ、外現実と交流するのに冒険者はいらない」


「話が見えない! なんでそれが冒険者解体と直結するんだ!?」


「……、そんなんもわからんか」


ヒンベルはため息をつき、ここにいる全員に聞こえるよう語り始めた。説明口調で仰々しい。


「今後、外現実人が流動し始めると、冒険者はそいつらの犯罪を助力することになる」


「……犯罪?」


「例としてここより南、ルミディ地方には多くの固有種、希少種がいる。だが、一部の地球や卓越した社会にいる人間は、象牙や犀角、毛皮を乱獲するよう冒険者に依頼することが予測される」


「そんなん規制すればいいだろ!」


「いいや、規制してもやる奴はやる。君たちは犯罪の仲介者として取り締まられるし、元凶は逃げる。君たちもそれは望まないだろう?」


「……」


「そして何より、冒険者が所持する武器は、野蛮と言わざるおえない。不特定多数が武器を所持するというのはこの地に踏み入る外現実人に恐怖を与える」


ヒンベルは断固とした態度で安城を見つめた。


「……その通りです総統。冒険者の皆様、説明不足でしたね。私は犯罪に加担してほしくないので冒険者解体に票を入れました」


マドレーヌ夫人は渋々口を割った。


「ご享受頂けたかな、勇者並びに冒険者の皆さん?」


「わかった……なら……」


そう言って安城は右手のグローブをヒンベルの前に投げ捨てた。


「陛下並びにマドレーヌ夫人、ベセトア機構のヒンベル総統に決闘を申し込むとここに宣言する……!」

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