27話 社不に慰めを求めない方がいいぞ、失言するからな
琴音は聞いたことのない安城の声を聞いた。安城は自室に籠もって酒飲んで愚痴っていた。
琴音とポールが夕食を食べてる一方、アリスは安城を慰めていた。
琴音は壁越しに耳を澄ます。
「せっかく異世界来たってのに、なんで現実の奴らが来るんだよ! おかしいだろ!?」
安城は自室の机で酒瓶を持っている。隣にアリスが静かに座る。
事実、琴音の存在が安城を追い込んでいた。
「それは現実の人たちが悪いのですよ」
安城は酒瓶を飲み干す音を飲み干し、机に倒れ込む。アリスは安城を子供様になだめた。
「あぁ……あいつらが笑ってる声が聞こえる……」
安城は頭を抱えた。脳内に高校の同級生の姿が過った。もはや具体的な輪郭はなく、滲んだような姿。
「俺は大人しいグループの方が居心地良いのに、アホやるから一軍のやつらに気に入られたけどさぁ……絶対内心バカにしてるじゃん……俺テスト上位三割だよ……?」
琴音でさえ真ん中の上くらいを彷徨っていた自称進で、安城は上位三割を取る実力を持ち合わせていた。
「上位三割ならいいじゃないですか」
「親に応えて……友達に応えて……自分安売りしたらさぁ……、俺の世界から居場所が消えた……」
安城は手を強く握りしめた。
「異世界の総統はまだ許せるけどさぁ……琴音も来るなんてナシだろぉ……」
「……時代が悪かったんです」
安城は泥酔し、意識も不安定なままアリスに言葉を投げ渡す。
「あぁ……ァァ……あいつも絶対笑ってる……」
安城は誰にも顔を見せまいと更に机に伏せる。
「……コトネ様には帰ってもらいますか?」
「……いや、大丈夫……あいつに、弱いところは……」
「……」
「うう…う……、目が回る……」
「大丈夫ですか、ショウタ様?」
アリスが心配そうに自身の方にもたれさせる。
「耳鳴りがぁ……、大丈夫……」
安城はアリスにもたれるのをやめた。
「……?」
「……」
「どこ行った……? アリス……?」
安城は一瞬、酔いでアリスが自身から遠退いた様に感じた。
「ここにいますよ」
「あぁ……アリス……」
「……でも、考えすぎですよ。あの人は本当にあなたを笑ったのですか?」
「笑ったに決まってるだろぉ……全校生徒の前で告ったんだぞ……?」
今にも泣きそうな声で答えた。
「なら確かに笑ったかもしれませんね」
「やっぱり……あぁ……」
安城は更に落ち込み、心が沈んだ。
「……」
アリスは安城の体たらくに唸った。
「みっともないですよ、今のあなたに誰が好くって言うのですか? 少なくとも太陽となったあなたにポールはついてきてくれたんじゃないの?」
「……」
安城は沈黙した。それはあながち間違いではなくなかった。
「あなたは高校のことを悪く言いますが、そのおかげで今があるんじゃないんですか? あの時のことを自分じゃないみたいに言いますけど、それも自分じゃないんですか?」
「そんなこと言ったって……!」
安城は机を叩き、アリスのマシンガントークを遮る。
「……そうだよ……それも自分だし……自分にみんなはついてきてくれた……!」
手を強く握りしめる。
「じゃあ問題は解決です、ベセトアはあなたたちの仲を引き裂くほど野暮ではない。あなたがそのままでいれば、ポールたちは離れません」
アリスは淡々と事実を語った。
「……じゃあ、俺はこのままで、このままでいいのか……!?」
半信半疑でアリスに尋ねた。
「ダメです」
「はぁ!?」
「このままだと冒険者は死に絶えますよ、これを覆せるのは、あなただけです」
「……」
それは紛れもない事実。ベセトアと中央政府による冒険者解体令は未だ払拭されていない。依頼が日に日に消え、仕事にありつける冒険者も消える。
冒険者を生業とした人間は転職を余儀なくされるが、咄嗟にできるものではない。本来、メリアンの冒険者は人間なら四十歳前後で引退、セカンドライフを送る。
「あと、琴音さんについてですが、彼女は使った方がいいですよ、戦局を覆せる一駒として。ですが、説得はあなたの言葉からしてください」
「……」
「もしかしたら、ベセトアの士官になれば、覆せるかもしれません」
☆
昨日は少々遅めに寝た。ここWiFiないからスマホとか触れなかった。ちょっとだけスマレンからローカルアナウンスを見てから寝た。
カーテンの隙間から溢れ日が差し、それで起こされた。
ここのベットは大使館のよりだいぶ質は悪かった。学校の機会運動マットより悪い。まあ仕方はないけど。
あっちは多分スプリングとか布は工業製品で作られ、肌触りや反発性も良かった。でも、こっちは使い古されたようなしなしなの掛け布団に硬い敷き布団。
所詮中世の素材で作られた布団だから現代人を満足させるには限界があったようだ。まあ泊まらせてもらってる身だし、贅沢は言えないけど。
身体を起こそうとする、しかし、違和感があった。なにやら足辺りから熱を感じる。しかも何かが私に乗っている気がする。
「……?」
「起きたか! なあ俺たちに協力してくれないか!?」
安城が私の脚に乗っかっていた。
「死ね、クズ……!」
のしかかられていた右脚を無理やり引き出し、伸ばすと同時に安城を思いっきり蹴りつけた。
安城はベットの端から二m先にある壁に打ち付けられた。




