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20話 ジェットコースターみたいな発艦

「あれ、エマさん何してるの?」


「赤城のメンテナンス」


出会い頭にヒンベルはエマさんと言葉を交わした。


「そうだ、リバタールでの主砲試射の結果出たよ」


「どんな感じ?」


「……やっぱり機関出力やエネルギー効率が落ちてるせいか、発射レートも低いし、火力も中期型くらいしかない」


「中期型レベルか……」


エマさんはヒンベルにデータを共有したっぽい。


「……リミンゼよりも酷いな」


「原因はお察しの通り」


「災厄の火種……克服が急務だな」




そんな話をしていると赤城の左舷カタパルトの発艦待機場に着いた。


なんか学校とか建物の避難階段みたいな感じの床や手すり、階段がある。手すりが等間隔に途切れている下のところには黒い物体がある。


そこには四つの翼、二つの噴出口をもつ戦闘機がある。コックピットと胴体がへの字に若干折れ曲がっていて、翼の下から棘のように付けられたミサイルをもつ鉄のカラスが複数あった。


それら戦闘機の特に特徴的な部分としては先端部分に羽のような二つの角をもつ。


おおむね地球の現代戦闘機に似てるけど、にしては翼が細く、揚力を捉えれない。


「これで行くの?」


ヒンベルは戦闘機のハッチを開けてコックピットにモグリンで色々操作しながら言う。


「ああ、これなら十分で着くよ。後ろ乗って」


「わかった」


床から戦闘機に乗るための足場とかはなく、飛び乗るような感じだけど少しジャンプすれば届く距離だ。


ジャンプして後席に乗り、座ってシートベルトを締める。


ヒンベルも準備が終わりハッチを閉めて


「あ、絶対こっち覗きこまないでね」


「そもそもシートベルトでそっち見れないから」


「ならいい。発艦準備完了、いつでもどうぞ」


と艦橋に合図を送る。


「"了解"」


艦橋も了承し発艦シークエンスに入る。


戦闘機はレール上を走り終点に着くとレールが左にスライドし壁が開く。


カタパルトの上に置かれてランディングギアが胴体にしまわれて待機。


カタパルトの上は、どうも後ろ以外装甲で覆われていて外の景色は見えない。


エンジンが点火されその音が戦闘機内に響く。


するとヒンベルは両手をハッチの取っ手みたいなところにあて、待機する。


「"幸運を"」


艦橋からの合図が出た途端戦闘機は後ろ向きに射出され赤城から出る。


「え!? こうやって発進するの!?」


あまりに予想外だったから声が出た。普通は前に進む。


戦闘機は徐々に身体を傾け後方が空を向くように、前方が海に真っ逆さまになるような姿勢になった。ジェットコースターに乗ってるような感覚が全身に行き渡る。


「ちょっ、どうなってるの!?」


戦闘機はジェットコースターのように降下し、下部のスラスターを噴射し機体を起して赤城のアンテナの真上を通り過ぎる。


「……なんとかできた。初めてやったけど」


嘘だろ……。


「ちなみに最後に運転したのはいつなの……?」


「えー……航宙機は八百年前だったかな……?」


「今すぐ降ろして、あと免許更新しろ」


ん……? 八百……??


「免許更新は無期限だから大丈夫」


何が大丈夫なんだよ……。


戦闘機は赤城から飛び立ち高度を上げ、一瞬にして雲の上を飛んだ。


凄まじい速度、でも実はそもそも航空機自体乗ったことないからこれがどれほどの速さかわからない。


「ねえ、これって何キロ出るの?」


「大気圏内なら最大マッハ十」


「……地球の最大速度ってどれくらいなの?」


「自分で調べろ、それで調べれるでしょ」


急に辛辣。


え~と、地球のインターネットに接続して検索エンジンに『戦闘機 最大速度』と入れる。


検索結果を見ると……マッハ三……?


……時速三千七百kmの三倍!?


「今そんな速度出してるの!?」


「出すわけないじゃん、今マッハ五」


「それでもとんでもないじゃん……」


よくそんな速度出せる。通常、音速を超えるとソニックブームの発生で速度が劇的に落ちる。燃料効率等の観点からマッハレベルの速度は基本出さないらしい。


そのせいか機体がガタガタと振動してその音もやや耳障りなくらい聞こえている。


ん? てか普通に喋ってるけどヒンベルの声、ちゃんと聞こえてる。こんなにうるさいのに。


「そういえばなんで普通にヒンベルの声聞こえるの?」


「そりゃマイクを介して聞いてるし、シールドとかイヤーピースがノイキャンしてるからね。試しにノイキャン外してみな」


言われた通り設定からノイキャンをオフにしてみた。


とてつもない、言葉では表せない程の轟音が耳を貫き全身に衝撃が走った。


轟音が聞こえるや否やすぐにノイキャンをオンにして轟音は聞こえなくなった。


普通に鼓膜破れるかと思った。今心臓がバクバクと脈打ってる。


「死ぬかと思った……」


「宇宙空間なら逆に静かなんだけどね。大気圏内は空気抵抗あるから」


「こんなん設計ミスでしょ……」


「いやクラシック戦闘機とか近代戦闘機よりかはマシだよ。アズマルガでクラシック戦闘機に乗った空軍がめっちゃ文句言ってた」


これでもマシなんだ……。普通の旅客機とかはどんな感じなんだろう。飛行機使ってまで行く旅行したことないからわからない。


「てかさ、なんでいつも日本語で話してるの? 気ぃ使ってる?」


イヤーピースが拾うヒンベルの言語は日本語。私も言語をダウンロードしてコントーレ語を喋れるが、ヒンベルも同じなのだろうか。


「母国語喋って何が悪いの?」


「母国語? あんたアズマルガってとこの出身じゃないの?」


百歩譲ってアズマルガ、新天地の一部で日本語が話されているならまだわかる。それにそこに入植した日本人の末裔なら考えられなくもないが。


「いや、地球の日本生まれ、日本育ちの日本人だけど……?」


「は?」


「信じらんない? じゃあ今から日本男児見せてやるよ」


「おいちょま――」


戦闘機で日本男児を見せると言ったらあれだ。


「お、ちょうどいいくらいの魔物の拠点があるじゃないか。あんなあばら家特攻だけでやれるよ」


「ちょ、バカ、やめろ! おい!!」

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