↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
16/86

16話 勝手に期待して失望するのは一種の自傷行為

私の視界に映ったのは、金と白で構成された白亜の世界。ガラスのシャンデリアが垂れ下がり、その上の天井には絵が描かれている。


そして金色の像でささえられた照明や巨大な窓から差す光が、このフロアを優雅に照らし続けている。


もちろん照らされているのはこの部屋や並べられた食事だけじゃない。それぞれ色とりどりのドレスを着た婦人や娘、タキシードやフォーマルなスーツを着こなした紳士が、会場を埋め尽くしている。


これが女子が一度は夢見る舞踏会か……。


舞踏会ではないけどこんなに華やかな舞台と言うは、滅多にお目にかかれない。目に焼き付けたい。


ちなみにこの華やかさを破壊する異端分子が存在する。それがこの私たちベセトア。


ベセトアの服装って基本黒かグレーだからフォーマルなものの、色合いはかなり暗い。お通夜みたい。


かと言ってネクタイで色合いつけようにも私は暖色系持ってないし、本部の人は無沈着なのか寒色系のものしかつけてない。


ヒンベルくらいは赤いネクタイでもつけろよ、アメリカの大統領は赤だったぞ。


あと髪色も問題。私やヒンベルは黒髪だし、本部の人も黒やグレー、明るい部類でもブラウン色しかいない。


だからと言って染める訳にはいかない。私は染めるのに興味はない。でも前に興味本意で美容師に染めれる髪質なのか聞いたが、あまり向かないっぽい。


てかこんなことはどうでもいい、私が知りたいのは、そもそも懇親会って何する会なんだ?


マドレーヌ夫人に誘われるがまま来たが、何する会なのか全く知らない。全く調べずに来てしまった。


「ヒンベル、懇親会って何する会なのか?」


私はメッセージを打って語りかける。


「愚問だね」


メッセージはすぐに帰ってきた。流石総統という肩書きなだけある。こういう社交の場の礼儀は知っているのだろう。


「私が知ってるわけないだろ?」


そうメッセージを返してこちらを見た。当たり前じゃんと言わんばかりに吹っ切れて清々しい顔。


ヒンベルは喋ってないのに完全に声が脳内再生された。


「期待して損した」


私がヒンベルに期待した時間を返してほしい。


「懇親会は他人と交流しながら飲食する場」


このわけのわからない会話に痺れを切らしたのか、ベルーケ大使が入ってきた。


ベルーケ大使は既に会食の場におり、ドリンクを片手に誰かと会話している。


「ここで見知った顔作っとくと後に連携が取りやすいからなるべく多くの人と知り合った方がいい」


的確かつ無駄のない端的な情報を知らせてくれた。いまのままだとヒンベルよりベルーケ大使の方が有能。


「総統、知ってるだろ? これさえ忘れたか?」


「忘れるも何もこういう場だと相手から来るから受け身で今までなんとかやってこれたんだよ」


「お前よく今までファータロスでやってこれたな……」


「懐かしいなぁ……最初全く相手にされない役職だと暇で部屋の隅で体育座りしてた」


「ゴミ陰キャじゃん」


ヒンベルが部屋の隅で体育座りしてる姿思い浮かべると笑いを堪えずにはいられない。


ちょっと周りから変な目で見られた。それもそのはず既にお通夜の一行は、既に会場にバラけている。つまり私のような異端分子は、華やかな会場ではかなり目立つ。


ていうか真の陰キャでもそんなことしないぞ、ソースは私。


まあ、せっかくだし誘ってくれたマドレーヌ夫人くらいには挨拶しとく。人混みをかき分けて探すも見当たらない。


「そう言えばマドレーヌ夫人って知らない?」


ヒンベルたちに聞いてみた。


「急用で来れないらしい、領地で一揆があったとかで」


ベルーケ大使が答えてくれた。答えてくれたのはありがたいが、人が大勢いる場で知り合いが来ないってのは陰キャにとってはだいぶ辛い。


一揆の発生は度々聞くが、珍しいことではない。それこそ局所的にマドレーヌ領で起きているわけではない。


「他でも一揆起きてるらしいけど他の貴族は対応しないんですか?」


「他の貴族共は領地そっちのけでここに来てる」


それは領主としていいんか、マドレーヌ夫人がまともに見える。ヴィーインさんが言うにはくせ者らしいけど。


「いいか、祝賀会というのは名目上だ。ここは古代の王侯貴族が自身の富や権威を増やすための場。目先の損失なんざどうだっていいんだ。あいつらが目論むはいかに権力者に魅入られて子を結ばせ、権威の獲得が何よりも大事なんだ」


急に現実叩きつけられたな。どこ行っても変わらないらしい。


そう言われるとこのキラキラと輝く華やかな場が、殺伐とした雰囲気に変わった。別にたった今そうなったわけではない。


雰囲気は一貫していた、目が覚めたと言うべきか、幻想のベールが剥がれたと言うべきか。


突如貴族の心の声のようなものが聞こえた。


「いいか、陛下にご無礼のないようにしろ、まだ殿下の許嫁は決まってない」


小学生にも満たないような子供にがめつく言い聞かせる父親。


「あのタラン侯爵め、陛下に魅入られようと……!」


「ガーランドちゃん! 殿下にアプローチするのよ! あのクズ侯爵に負けないで!」


ひそひそと妬みや嫉妬の声も聞こえてくる。


「一人前の息子がいるってのになぜマドレーヌ夫人は出席しない……!」


「マドレーヌの息子はどこ行った……!?」


マドレーヌ夫人に対する愚痴も聞こえる。そりゃ君たちと違って領地の問題に対象してるんだもの。


マドレーヌ夫人はコントーレの公爵。貴族の中では最上位。


すると後ろからどつかれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。