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偽の勇者⑨ 終わり

「おいおい待ってくれよ。まだ、戦争は始まったばかりだぜ。あいつら、戦ってる奴ら、あのままで良いのかよ。オレだったら止めることだってできるんだ。オレに頼まなくていいのかよ?」


 地龍の声がしました。

 その時、スチュアート少年が言いました。



「これから封印の魔法を使います……」



 地龍が私に声を掛けました。



「お前、オレに力を与えろよ。勇者なんだろ。オレが世界一の勇者にしてやろうじゃないか。そのための力を与えてやる。お前の望みを叶えてやる。だから、人間のお前が封印の魔法を止めやがれ!!!」





 勇者になりたいか……



 と、私は呟いていました。



 ふと、過去のことを思い出しました。

 子供の頃、1人の女性が小さい私の体を抱きしめていました。

 彼女の言葉を思い出しました。



「あなたは勇者の力を手に入れた。でも、勇者になんてならなくていいのよ……」


 

 ずっと、女性が私を抱きしめていました。


 

 私は勇者の力を得ました。

 あの日から、村の人々が変わってしまいました。

 人形のようになったのです。

 それは自分が勇者の力を手にしたせいではないか、と思っていました。



 私は良い子になりました。

 村のしきたりに従い、村人たちに逆らうことを止めました。

 村人が元に戻ることを願っていたのです。

 しかし、村人たちは元の姿には戻りませんでした。

 ずっと、私は1人でした。

 しばらくして、勇者の力のことを考えるのを止めました。

 村人たちを変えたことが私の罪になりました。

 それが大人になるまでの日々でした。

 私は偽の勇者であると思うようになっていました。


 地龍が私に話しかけてきます。

 


「お前の望みを叶えてやろう……。村人たちを元の姿に戻してやってもいいんだぞ。そうすればお前は勇者になることだってできるはずさ……」



 地龍の声を聞きました。

 私は戻りたいのか、と思案しました。

 罪を感じています。

 しかし、あの村に戻ることを望んでいませんでした。


 誰かに偽の勇者と呼ばれたかっただけなのです。

 そうすれば、村でのことを忘れることができると思っていました。




 勇者になれるか……


 

 その時、自分の体を動かせるようになっていました。

 私は両手を合わせます。

 手の上に、まん丸の封印の石が出てきました。



 封印の石がきらめいていました。

 その石を妻に渡すことにしました。



「モグラに勇者が飲み込まれた時、封印の石の半分が一緒に飲み込まれていたみたい……これで封印ができるんじゃないかな……」



 封印の石を渡しました。

 受け取ると、妻が驚いた顔をしてました。


 

 地龍の声が聞こえました。


「ふざけるな。そんなもので私が封印されることなどない!! 以前、勇者と魔族の王女が封印しようとしたのと同じさ。人間の持つ欲望と魔力さえあればオレは復活することができるんだからな!!!」

 


 私は言いました。


「ずっと、勇者の物語や演劇に憧れていました。しかし、それは勇者に憧れたわけではありません……自分が勇者ではないことを知りたかったんです……神話で語られる勇者を知ることで、自分が勇者ではないことを知りたかったのです。自分が偽物であることを確認することができた気がしてたんです……地龍さん、あなたは封印されます。そして、私が偽の勇者であることを認める役をしてもらいたいんです……」



 妻が泣いているのを見つめていました。

 妻の涙を拭いました。



「いつからか子供の頃のように話ができなくなってしまったね……。いつか、あの頃のように君とも話をしたかったんだけどさ……。ただ、君が勇者を嫌っているのは嬉しかったよ……。いつか、元の世界に戻れるといいと思っているよ……」



 と、私は言いました。

 泣いている妻は返事をすることができませんでした。




「ふざけるな……」



 と、地龍の小さな声が聞こえていました。

 私は封印されました。


 遠くの方では戦争の音が聞こえています。


ありがとうございます!!

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