偽の勇者④ 穴を埋める
気が付くと、大きな穴に落ちていくような感覚がありました。
封印の青い石の力なのか、砕けた欠片がキラキラと光り、妻の記憶を蘇らせていました。
私は深い穴の奥に落ちていきました。
そこには妻の記憶が散らばっているようでした。
1つの記憶を見つめています。
それは幼い頃、私が勇者の力を手に入れた日の記憶でした。
魔王の結界が消えた日のことでした。
それは妻の記憶のようです。
結界が解けた時、世界で起きているのか確かめるため、妻は結界の外に出ていきました。
世界ではたくさんの魔族たちが殺されていました。
その中、妻は魔族の王女を探していました。
世界の歴史が変わっていました。
魔族たちは人間に害を成す存在になっていました。妻は衝撃を受けます。それでも数か月にわたり、彼女は魔族の同胞を探していました。しかし、彼女の感情は混乱しています。自分の気持ちすらわからなくなっていました。
毎日のように、妻は自分自身を責めていました。
たくさんの町を訪れて、魔族の王女の行方を捜していました。
ただ、王女を見つけることはできませんでした。
村に戻ってくると、妻は疲れきっていました。ぼんやりと、感情を失ったように彼女は全ての村人たちのレプリカを作っていきました。
そこで彼女の記憶が途切れました。
封印の石が煌めいていました。
また、私は穴の奥に落ちていきました。
石の欠片が光りました。
別の記憶です。
南の国の記憶でした。
妻は教会の前で子供たちと戯れていました。
私が教会に入っていくのを見つめています。ただ、人間たちの身勝手な歴史を見ることができず、彼女は教会に入ることができませんでした。妻の周りで遊んでいる子供たちの笑い声が聞こえてきました。妻は楽しそうに子供たちの顔を見つめています。
一部、記憶が欠落しています。
その後、異世界人と言い争っている記憶がありました。
男の声が聞こえてきます。
男性は異世界人のようでした。
彼の声がしました。
「地龍との封印の話だろ、あの時、私が知っていることは話したぞ。地龍との戦いの全てさ……。これで、やっと、お前にも何が起きたのかわかっただろ……ただ、あの時、お前がいたら……、きっと、地龍にも負けることはなかったんだ。お前のせいで勇者は殺されてしまったのさ……」
異世界人の声がしました。
異世界人の体は崩れ去っていきました。
呪いの力のようでした。
「やはり、勇者と封印の石が必要なのね………」
妻の声が聞こえてきました。
記憶が終わりました。
また、私は穴の奥へと落ちていきました。
別の記憶です。
異世界人と戦っている妻の記憶がありました。
昔のことのようです。
ユウマの姿がありました。
傷だらけです。
ユウマが言いました。
「なあ……、お前らさ……、地龍とか、元の世界に戻すとか、よくわからないことを言っているんじゃねーよ!! 大事なのはお前は自分が何をしたいかだけだろ! あんたらはそれだけ考えていればいいんだよ!!!」
それを聞くと、妻は腹を抱えて笑っていました。
ユウマは不満そうな顔をしていました。
また、別の記憶がありました。
妻は王女と話をしているようでした。
魔族の王女の声がしました。
「あなたは来てはダメよ。これから先のことは私と勇者が対応をするわ。地龍を封印して元の世界に戻すことにするのよ……」
「嫌です!! 私も王女様に付いていきます!!!」
妻の声が聞こえました。
「ダメよ。これは命令です。あなたには幸せになってほしいの。あなたって無愛想だけど、本当は優しい心の持ち主でしょ。いつか、それをわかってくれる人と出会えると思うわ。あなたには自分の幸せを探してほしいのよ。あと、1つだけお願いがあるの。私に何かあったらお父様のことはよろしくお願いね……」
「待ってください。私は……、王女様が幸せであることを願っているのです!!」
妻の声がしました。
その時、王女はニコリと笑っていました。
ポツリポツリと石の欠片が光っていました。いつの間にか、私は落ちているのか、上空を浮遊しているのか、わからなくなっていました。これからどうなってしまうのだろうかと思っていると、潰された私の肉体が大きな塊になっていることに気が付きました。
段々、潰された私の肉体はとても大きな塊なっていました。
その時、モグラの悲鳴が聞こえてきました。
ありがとうございます!!




