偽の勇者③ 夢を見る
それから私は夢を見ていました。
夢の中で、私は国王との謁見をすることができたのでした。
偽の勇者であると告げようとしました。
そのために、私は南の国に向かったのでした。
私は国王の前に進み、玉座の下で跪いていました。
やっと、告げることができると思いました。
近くに、アティーナ、ギルド長、ジャン・リュック・ブランド、ボウリッグの鬼人の姿がありました。
彼らは勇者が来たことを称えていました。
国王の声が聞こえました。
「勇者として世界平和に取り組み、この世界に秩序をもたらしてほしい。国民はそれを期待している」と訓示が聞こえました。
私は頭を下げました。
世界のため、国民のため、勇者の力を使うのは当然だと思いました。
ただ、私は偽の勇者のなのです。
何の力もありません。
自分が国王に偽の勇者であると伝えようと思いました。
いままで言えなかったことを言うことができるのです。
しかし、モグラの声が聞こえてきました。
「お前、力が欲しいのなら与えてやってもいいんだぞ……」
モグラが言いました。
私は戸惑っていました。
私は返事をすることができませんでした。
その時、ポケットにある青い石の欠片が砕けます。
青い石が砕けました。
封印されていた過去の映像が浮かび上がってきています。
勇者の紋章が浮かび上がった日の記憶でした。
私が勇者に選ばれた日のことです。
長老の話を聞き、私は自宅に戻ってきました。
右手には勇者の紋章が光を放っています。ただ、紋章を誰にも見られないように住む家に戻ってきました。
椅子に座り込み、自分の右手を見つめていました。
気が付くと、私は眠ってしまったようでした。戻ってきた妻が眠っている私の姿を見つめていました。彼女は私の顔にナイフの刃を向け、私を殺そうとしているかのようでした。しばらくしてナイフをしまいました。
妻が泣いているようでした。
座り込むと、たくさんの涙が落ちました。
妻の声がしました。
「ああ、王女様、いったいどうしたらいいんでしょうか……。私たちは何もかもを失って平穏に暮らしたいと思っていたのに……どうして最愛の人に勇者の力が現れてしまったのか……私は勇者の力を恐れてしまいます。だって、王女様とは違うのです……どうか、どうか、私たちを導いてください……」
妻が祈っている姿がありました。
私の記憶ではないようです。
きっと、青い石に籠められていた記憶なのだと思いました。
ただ、妻が泣いている姿を見つめていました。
その記憶が消えていきました。
あの時のことを思い出していました。
それから、私はモグラに返事をすることにしました。
「力などほしくありません……だって、私は偽の勇者なのですから……」
返事をしました。
モグラを見つめていました。
すると、私の右手の紋章が光っていました。
気が付くと、私はモグラの腹の中に戻っていました。
幻想であることに気が付きました。
肉の壁が迫ると、押しつぶされそうでした。
私は粉々になった封印の石を飲み込みました。
右手から勇者の紋章が消えていきました。
勇者の力が封印されました。
勇者の力を大きなモグラに渡さなかったことに安堵しました。それに紋章を失ったのだから、私は勇者であると思われることがないのです。やっと、勇者ではないと言える日がきたのです。そう思うと、私は笑っていました。
その時、私はモグラの中で死んでいました。
封印の石の欠片がモグラに吸収されていくのを見た気がしました。
その時、ふと思ったのです。
偽の勇者である私にもできることはないのかと……




