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偽の勇者① 演技

 世界は演技でできている、と思いました。何故、そう思ったのか、私にはわかりません。ただ、この女性は演技をしていると思いました。



「急いで、私を封印してください。地龍は器を失います。膨大な魔力を抑えきれなくなり、自滅するはずなのです!!」



 女性が言いました。 


 その言葉を聞いて、私は女性を見つめていました。世界を守るため、彼女は封印されることを願っていました。

 


 ただ、それは演技にしか見えませんでした。

 それは私は勇者を演じてきたからです。本当の勇者であったなら、彼女の意見に従うことができたと思います。ただ、私は偽の勇者でした。だからこそ、彼女が演技をしていると気が付いたのだと思いました。



 私は立ち止まります。その時、迷い込んだネズミが真っ赤な炎に触れ、骨すら残らずに消滅していきました。


 部屋にはたくさんの影が集まっていました。影たちは壁を登ろうと、必死にもがいているかのように見えました。



「ここは地龍の腹の中なの……炎には触れないようにして……さあ、私の所に来て、あなたが勇者であれば世界を救ってほしいの……」



 女性の声が聞こえました。


 その時、上空から声が聞こえました。

 私は顔を上げます。


 天井が開いていきました。

 外の景色が見え、逃げるように鳥たちが飛び立っていくのが見えました。


 上空から、たくさんの兵士たちが落ちてきました。

 真っ赤な炎に触れ、彼らは消滅していきます。

 生き残った兵士たちのうめき声が聞こえてきました。


 

 王女の声が聞こえてきました。

 


「早く、私を封印してください。地龍は器を失い、膨大な魔力を抑えきれなくなり、自滅するはずなのです……」


 その時、封印の石が光っていました。



 部屋にいる影たちが生きている兵士たちを炎の中に投げ込んでいました。

 私の周りにも影が集まっていました。

 

 

「さあ、早く。私の所に来てください……」



 女性の声が聞こえました。ただ、彼女はうっすらと笑みを浮かべていました。その時、迷路にでも迷い込んだ気がしました。どうやら私は女性の演技に合わせるしかないようでした。 

 

 勇者を演じるしかないようです。

 

 女性の視線を遮るようにして、私は兵士が落としたナイフを拾いました。

 それから私は勇者の演技をすることにしました。


「おお!! 王女様、世界平和のため、あなたを封印しなくてはならないのですか!!!」


 そう言い、私は女性に対して両手をかざしました。


 村で見た勇者と王女の演劇を思い出していました。

 勇者を演じるとは思いもしませんでしたが。

 

 

「世界の平和のためには仕方のないことです。さあ、私を封印してください!!!」

 

 女性の声が聞こえます。

 

 私は踊るように女性のもとに向かっていきました。

 荒れ狂う炎が私を避けていきます。

 たくさんの影たちが観衆のようにわたしを見つめていました。

 

 美しい光景であると思いました。

 導かれるように女性の元に辿り着くと、貼り付けになっている女性を下に降ろすことにしました。冷たくなっている女性の体はまるで人形のようでした。

 

 

「ああ…、王女様、申し訳ございません……私はあなたを封印しなければなりません……それはなんて不幸なことなんでしょう……」

「いいえ、悲しまないで……。これは世界のためなのです……さあ、封印を………これが運命なのです……」


 私は頷きます。

 ポケットから封印の石の欠片を取り出そうとしました。


 その時、強い魔力を感じました。



 私の後ろにモグラが立っていました。

 痛みを感じます。

 視線を向けると、私の胸にモグラの手が刺さっていました。

 

「きゃっはははっ! 騙されやがった……まったく、こんなところに人間が来るなんて、おかしなことがあったものだ……」


 モグラの声が聞こえました。


 ただ、その時、私は女性の胸にナイフを突き刺していました。

 女性の叫び声が聞こえます。

 次第に、目の前にいる女性が魔獣に変わっていきました。

 やはり、女性は偽者だったのです。


 魔獣の体が崩れていきました。

 その途端、ガラスが割れるように、空間は崩れ去っていきました。

 気が付くと、真っ暗な空間に取り残されていました。



 そこには本当の魔族の王女が眠っていました。


ありがとうございます!!

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