モグラの森⑩ 崩壊
アスレスの声がしました。
「待って、あんた、勇者じゃないか!!」
「ああ、まあ、そうなりますかね……」
それを聞いて、私は笑っていました。
アスレスは呆れています。
既に、私は人間の姿に戻っていました。
「そりゃ、強いわけだわ。勝てるわけがない……。ただ、地龍様がいる。いまは、そんな話をしている暇はないわ……」
アスレスはパチリと指を鳴らしました。
すると、数百のスケルトンの騎士が地面から現れました。
こちらに向かってきます。
骨が擦れる音が聞こえてきました。
ずっと、アスレスは苦しそうな顔をしていました。
彼はクロエに助けを求めます。
「クロエちゃん、腕を治してくれ。頼むわ………」
「もう……、仕方ないわね…!!!」
クロエが腕の治療をしています。
アスレスは治療を受け、身動きができなくなっていました。
その時、子供たちの歓喜の声が聞こえてきました。
人間に戻れたことを喜んでいます。
その横で、アスレスの部下が大きなモグラに祈りを捧げていました。
大きなモグラの救済を願っているようです。
ただ、大きなモグラは怒っているようでした。
ダンダンッ
ダンダンダンッ
ダンダンダンッ
大きなモグラが地団太を踏みました。
途端、大地が崩れていきます。
地面が崩落していきました。大きな空洞ができているようで、近くにある祠が暗い闇の中に落ちていきました。
アティーナが子供たちを安全な場所に連れて行こうとしていました。子供たちの走っていく姿が見えます。しかし、祠の近くでキーテ少年が倒れていました。
私はキーテ少年の体を掴みました。
その時、妻の姿を見たのです。
「どうして、あなた、ここにいるの…………」
妻は驚いた顔をしていました。
地面が崩落すると、私は祠の下に落下していきました。
落下しながら、妻の顔を見つめていました。
気が付くと、祠の下にある洞窟にいるようでした。
地下の空間は炎で埋め尽くされています。
頭を打ち付けたのか、流れる血が鼻の頭から落ちてきました。
近くで、キーテ少年が倒れていました。
少年の声が聞こえてきます。
この世界が嫌い……
学校に行くこともできないし……
ああ、ぼくは勇者になりたいんだ……
悔しい……悔しい……ああ、悔しい……………
少年の独り言が聞こえます。
途端、キーテ少年が魔族のような姿に変わっていきました。
この場所は魔力で満ちているようです。
負の感情によって、少年は魔力を取り込んでしまったようでした。
悪魔のような姿に変わっていました。
すぐに、私は自分の顔に手を触れてみました。
まだ人間のようです。
近くに祠に飾られていた鏡がありました。
手に取ると、自分の顔を見ようとしました。
しかし、顔が映りませんでした。
その鏡にはモグラの森の映像が映されていたのでした。
モグラの森が鏡に映っていました。
アスレス、部下の兵士たちがいます。
その奥には、大きなモグラと妻の姿がありました。
私は妻の顔を見つめます。
すると、いつの間にか、悲しくなっていました。
泣いていたのかもしれません。
その時、誰かの声が聞こえてきます……
「心を乱さないようにしなさい……。そうしないとあなたの心が奪われてしまうわよ……ここはモグラの作り出した異空間なのですから……」
聞いたことのある声でした。
私は視線を向けます。
すると、女性がいました。
十字架に張り付けられた女性がいました。
夢で見た存在でした。
村の祭壇で会った女性がそこにはいたのです。
ありがとうございます!!




