モグラの森⑦ ゴブリン、動きます
「初めまして。私は混血魔族のアスレスと申します。私たちは魔族の血を背負いし者、リュック・メーカーズになります。どうかお見知りおきを……」
アスレスは挨拶をしました。
スチュワート少年はアスレスに魔法の杖を向けていました。が、何かに気が付いたらしく、少年の手が震えだしていました。
「あなた……、アスレスさんですか……。この前、ぼくの家にいましたよね……」
その話を聞いて、アスレスは少年の顔を見つめていました。
彼は手をポンと叩きました。
「ああ、思い出しました。あなたはフランソワーズ伯爵のお子息じゃないですか。そうそう、スチュアート君ですよね。まったく、こんな酷いことをしないでください。こんなこと、父上が聞いたらどれほど嘆くことか……」
アスレスは笑っていました。
ただ、スチュアート少年は困惑しているようでした。
「アスレスさん、どうして、あなた、こんなことをしているんですか……」
「何を言っているんです? あなたのお父さんに頼まれたんですよ。まったく、変なことを言わないでください。あなたたちの呪いを解決するために頑張っているんです。そんなことを言われると悲しくなってきますよ~」
「でも……。じゃあ、お願いです。もう、こんなことを止めてくれませんか? もう、父は何かを望むような状態ではないんです。早く、みんなを人間に戻してください!!」
「あはははっ、それは無理です。だって、ゴブリンは地龍様の生贄なのですよ。戦争の大きな音を耳にしたら、地龍様は現れるはずなんです。いや、どうしても私たちを止めたというなら、戦争を終わらせることを考えたらいいと思いますね……」
それを聞いて、スチュアート少年は思案していました。
少年は泣きそうな顔をしていました。
「そんなことできるはずがないです……」
「なら、もう諦めるしかないですよ」
「う、う、う、うわぁああああぁぁぁぁぁぁ……」
スチュアート少年の叫び声が聞こえました。
その途端、少年の魔力が膨れ上がっていくのを感じていました。
少年の魔力が暴走していた。
「やっかいですね。これはフランソワーズの家系にある地龍と契約した力か。早めに終わらせた方が良さそうですね」
突然、目の前にいたアスレスの姿が消えました。
スチュワート少年の近くに現れると、アスレスの手刀が少年の体を貫こうとしていました。
その時、私はアスレスの右手を掴みました。
ゴブリンである私が立ち塞がっていました。
アスレスは困った顔をしていました。
「ゴブリンさん、いったい、あなたは何をしたいんですか?」
アスレスが私を睨みつけています。
ただ、私が勇者であるとは気が付いていないようでした。
その時、森の中をかき分けて、アティーナがこちらに走ってきました。
彼女は兵士たちを見つめていました。
「ねえ、あなたたち、リュック・メーカーズじゃない!! こんな場所で何しているのよ。さあ、一緒に来て、この戦争を止めるわよ!!」
彼女は兵士たちに命令をしました。
しかし、リュック・メーカーズは従うつもりがないようでした。ずっと、ゴブリンたちを取り囲んだまま動こうとはしませんでした。数人の兵士たちはアティーナの姿を見ると、嘲笑をしているようでもありました。
すると、アスレスの声がしました。
「アティーナさん……。申し訳ございません。いま、彼らは手が離せないんですよ。あと、ゴブリンさん、その手を放してもらえますか?」
アティーナはアスレスの顔を見つめていました。
彼女は困った顔をしています。
「ごめんなさい。あなたは誰です?」
「ああ……、そんなこと言わんでくださいよ……」
「あら、ごめんなさい。ただ、どうしてもあなたのことを思い出せないの……」
「いえいえ、良いんですよ。そんなことは気になさらず……。どうせ、あなたもここで死ぬんですからね……」
「ふーん、じゃあ、私があなたを倒してあげる、でいいかな……」
「なるほど、それも面白いですね。ただ、今の私は忙しいんです。変なゴブリンに付きまとわれてもいますし。アティーナさんの相手は部下がすることにしましょう……」
アティーナ前に数人のリュック・メーカーズが立っていました。
その横で、アスレスの前に私が立っていました。
すごい勇者っぽいなと思いました。
その間も、スチュアート少年の魔力が膨れ上がっていました。
既に、少年は意識を失っているようでした。
ありがとうございます!!




