モグラの森⑥ ジャン・リュック・ブランド
「ぼくのせいじゃないんだ……お願いだよ。ぼくの話を聞いてほしいんだ……」
スチュアート少年の声が聞こえてきました。
こちらに歩いてこようとします。
しかし、ゴブリンの声がしました。
「来ないで!! また、嘘をつくのでしょ!! あなたの書いた小説を読んだら、私たちはゴブリンになってしまったのよ!!! また、その魔法の杖を使って私たちをイジメるつもりなんでしょ!!」
ゴブリンの声は震えていました。
その声を聴いて、少年は顔を左右に振っていました。
それを否定しています。
彼はゴブリンたちに語りかけていました。
「違うんだ。いや、ごめん、ごめんなさい…。ぼくも、こんなことになるとは思ってなかったんだ……。この呪いは、ぼくの家で受け継がれている呪いで、ずっと、ぼくはこの呪いで苦しんでいたんだよ……」
「そんな話、誰が信じるものか! それより、ぼくたちを早く人間に戻してくれよ!」
別のゴブリンの声が聞こえてきました。
スチュアート少年は戸惑いながらゴブリンたちに説明をしていました。
「これは呪いなんだよ。ぼくは君たちをゴブリンにしようなんて思ってないんだ。これには事情があるんだ……」
「嘘! そんなこと信じられない!」
別のゴブリンの声が聞こえました。
スチュアート少年は泣きそうな顔をしていました。
「ぼくは騙されたんだ。ある日、ぼくの家に1人の魔法使いが現れて、呪いを解く方法があると告げてきたんだ。そのせいでこんなことになったんだ……」
「スチュアート君、ぼくたちを元の姿に戻してくれるわけじゃないの?」
別のゴブリンの声がしました。
「それは……、もちろん、僕は君たちを助けに来たんだよ……」
「ねえ、本当のことを話してよ……」
ゴブリンの声がすると、スチュアート少年は黙ってしまいました。
その時、森の中から声が聞こえました。
「お前たち、こんなところで何をしているんだ!!!」
大きな声が聞こえました。
視線を向けると、1人の兵士が立っていました。
兵士は祠の近くまで歩いてきました。
すぐに彼が南の国にいたジャン・リュック・ブランド兵士長であることに気が付きました。
次第に、部下であるリュックメーカーズたちが集まってきました。
彼らがゴブリンを取り囲んでいきました。
まるでゴブリンが逃げ出さないようにしているようでした。
1人の兵士の声がします。
「なあ、ゴブリンがこんなに集まっているなんてさ、怪しい計画でも立てていたんじゃないのか……」
そう言うと、兵士が笑っていました。
別の兵士が注意していました。
「おいおい、ポーター、そんなことを言うべきじゃないよ。大事な地龍様の生贄なんだ、丁重に扱いなさい!!!」
「ちぇっ、そのぐらいはわかっているさ。ノースさ、お前は神経質すぎるんだよ……」
「誰が神経質だって言うんだ!! お前がテキトーすぎるんだよ!!!」
2人が言い争いを始めていました。
それを見て、他の兵士たちはゲラゲラ笑っていました。
ずっと、ゴブリンたちは怯えています。
その時、スチュアート少年の声がしました。
スチュアート少年はリュック・ブランド兵士長の前に立っていました。
「あなたを待ってました。やはり、ここに来たんですね……」
その声を聞いて、リュック・ブランド兵士長が少年の顔を見つめました。
兵士長は笑っているようでした。
「おや、あなた、ハーメルン村にいた少年ではないですか……。どうしたんですか? 私に何か用ですか?」
「あなたに聞きたいことがあるんです……」
スチュアート少年は魔法の杖をリュック・ブランドに向けていました。
リュック・ブランドは困った顔をしました。
「そんなに睨まなくても……、いったい、どうしたって言うんですか……」
「あなたたちはぼくを騙したんですか?」
「はて、何を言っているのか……」
「ハーメルン村で聞いたんです。地龍を呼び出すために戦争を起こして、ゴブリンたちをモグラの森に運んでくるって……」
「何を言っているんです……、私たちはゴブリンを助けに来たんですよ……」
「そんなこと……、ぼくが信じられるとでも……」
スチュアート少年は泣いていました。
少年はリュック・ブランドの方へ大きな魔法の杖をかざしました。
魔法を放ちます。
真っ赤な炎の塊がリュック・ブランドの体を覆いつくしていました。
すると、リュック・ブランドの体がグニャグニャに溶けていきました。次第に、兵士長は混血の魔族であるアスレスの姿に形を変えていきました。
どうしてここに混血魔族がいるのか、私には理解することができませんでした。
「あはははっ、今度は騙されなかったみたいですね。ただ、感謝しかありませんよ。あなたの家の呪いのおかげで私は自分の望みをかなえることができるのです……。この場所に地龍を呼ぶのです!!! これから魔族の力を背負っている私たちが世界を統治するのですから!!!」
リュック・ブランドの声が聞こえてきました。
私は立ち上がっていました。
ありがとうございます!!




