モグラの森⑤ 勇者、ゴブリンになるってよ
3匹のゴブリンの物語の本を取り出しました。
私はゴブリンになることにしました。
ゆっくりと本を開けます。
書かれてある文字が私を縛り付けてきました。
深い闇が心を押し潰してきます。
段々、身動きが取れなくなりました。
体温が高くなり、息を吸うことができなくなりました。
大量の汗が額から流れています。
必死に息を吸おうとしていました。しかし、呼吸ができないのです。意識が千切れそうでした。右目は涙を流し、左目はケラケラと笑っているような感覚がしていました。感情が天秤のように揺れていました。
負の感情により、心が縛り付けられていました。
次第に、聴覚が鋭敏になってきました。
葉と葉が擦れるような小さな音から、川のせせらぎまで聞こえてきます。
同時に、人々の声が聞こえてきました。
泣いている声、争っている声、笑っている声、いろいろな声が聞こえてきました。
音が聞こえると、私の耳が壊れてしまいそうでした。
同時に、身体の痛みを感じました。
呪いの力が私の体を引き裂いているかのようでした。
痛みに悶え苦しみ、体を九の字に曲げ、両手で自分の顔を覆っていました。
胸に手を当てました。
落ち着かせて、自分の意識を保とうとしました。
既に、意識は曖昧になっていました。
呪いの力に耐えています。
気が付くと、本が最後のページまで来ていました。
ゴブリンの物語の本が地面に落ちました。
体の痛みがなくなっていました。
落ちている本を取ろうとした時、自分の手が緑色になっていることに気が付きました。
ゆっくりと立ち上がります。
まだ足に痛みはありましたが、だいぶ回復しているようでした。
近くの湖で自分の顔を映すと、そこにはゴブリンの姿が映し出されていました。
緑色の顔が映し出されています。
私はゴブリンになっていました。
森の中に視線を向けました。
戦争のせいで、森のあちこちから火の手が上がっていました。
逃げ惑う兵士たちの姿があり、何処までも続く戦いの光景がそこにはありました。
妻を探しに行こうと思い、私は森の中を歩いていきました。
森の奥へと歩いていきます。
大きな祠の前でたくさんのゴブリンの姿が集まっていました。
私はモグラの祠まで辿り着いたようでした。
「どうしてここにいるの?」
と、ゴブリンたちに訊ねてみました。
「わからないけど、誰かが来るのを待っている気がする……」
と、ゴブリンの1人が言いました。
待っている……
確かに、私も何かに呼ばれてこの場所に来たような気がしていました。
呪いのせいなのかもしれないと思いました。
1人のゴブリンが立ち上がります。
「ぼくたちはスチュアート君に騙されているんだ! こんなことをしても意味なんてないんだ。さあ、早く家に帰ろうよ!」
しかし、誰も祠の前から動こうとはしませんでした。この場所から離れることができなくなっていました。
それは私も同じでした。
私たちは誰かを待っていました。
その時、森の中から1人の少年が歩いてきます。
「ぼくのせいじゃないんだ・・・」
目の前にはスチュアート少年が立っていました。
手に大きな魔法の杖を持っています。
ありがとうございます!!




