魔王城にて⑥ 偽の勇者、さらわれる
妻の攻撃で教会は崩れかけていました。右半分が倒壊しており、支えを失ってグラグラと音を立てています。
邪悪な形をした十字架が地面に落ちました。
妻の声が聞こえてきました。
「あっちの戦いが終わったみたいね。次は私たちの番。魔族の私と混血魔族のあなた、どちらが強いかを確かめなくちゃね……」
「え!? ちょっと待って、あなた、魔族なんですか……」
アスレスは驚いていました。
「あら、知らなかったっけ?」
「まったく知りませんよ。そんな話は聞いていませんよ。ただ、いや、あなたは魔族なんですよね? だったら、私たちは仲良くできるじゃないですか? あなただって人間たちの酷い行為を見たでしょ?」
攻撃を避けながら、アスレスが問いかけていました。
妻が尋ねました。
「それは何の話かしら?」
「さっき、人間の若者たちのことですよ。あいつらがアンデットのネズミを殺していたことです…。魔力を失った魔族に対し、人間は酷い、とても残虐なことをしているのです…。それを見ましたよね?」
「そうなんだ。だから、あなたは人間を滅ぼそうとしているのね……」
「そうです。だって、あいつらは自分のことしか考えていないのです。私たちが鉄槌を下さなくてはならないのです!」
「なるほどね。あなたの言いたいことはわかった。ただ、私はこの教会で結婚式を上げようとしていたの……」
「え!? ここでですか……」
「あなたたちのせいで教会が壊れてしまった……。あなたを許すことはできないの、ごめんなさいね……」
「いや……。この教会はあなたのパンチで壊したんじゃ……」
「そうだっけ、でも、私も人間が好きってわけじゃないから、その部分は否定するつもりはないけどね……」
そう言うと、妻はアスレスに攻撃をしていました。
その姿を見ると、アスレスは説得するのを止めることにしたようです。
私の方に視線を向けました。
ふぅ……、
と、アスレスがため息が聞こえてきました。
「なるほど、わかりました……。私の話を受け入れてくれないんですね。だったら、別の手段をとらせていただきますよ」
アスレスは建物の柱を壊していきました。
教会が崩壊していき、砂ぼこりが辺りを覆いつくしていました。
その時、アスレスが私を捕まえました。
「あなたとの戦いは止めておきます。私たちの目的は勇者ですからね。さあ、勇者様は一緒に来てもらいますよ!」
私はアスレスから逃れようともがいていました。
しかし、駄目でした。
アスレスは教会の外へ走り出していきました。
魔王城を出ると、アスレスは北西の方向に向かって走っていました。
妻が追いかけてきます。
私はアスレスの手を振り解こうとしました。しかし、手は鉄のように固く、その手を外すことはできそうにありませんでした。
走りながら、アスレスは妻に話しかけていました。
「あなた、思ったよりも足が早いんですね。ただ、私には勝てませんよ……私は世界一、足が速いんですからね!!」
「じゃあ、追いついたら、私が世界一ってことになるのかしら?」
妻の声がしました。
「そうですね。ただ、無理です。諦めることになりますよ……」
「じゃあ、勝負をしてみましょう!」
そうして2人の追いかけっこが始まりました。
妻はアスレスを追っています。
走るスピードが速くて、さみだれ式に景色は変わっていきました。
呼吸ができず、途切れそうな意識の中、私は初めて海を見ることになりました。
広大な海は太陽の日差しを反射していました。
綺麗だなと思いましたが、眩しくて目を開けることができません。
そのあと、たくさんの山々と町を通り過ぎていきました。
大きな山を抜けると、上空には大きなドラゴンが飛んでいました。
ドラゴンの黄色い目が私たちを見つめていました。
ただ、アスレスはドラゴンに気が付いていません。後ろにいる妻も気が付いていません。アスレスのことしか目に入っていないようでした。私たちはドラゴンの方に向かって走っていきました。
すると、ドラゴンが下降してきて、こちらに向かって炎のブレスを吐き出しました。
炎の塊は私たちに向けられていました。
段々と、炎の塊が近づいてきます。
周りの空気が熱っせられて、その変化により、アスレスは上空を見つめていました。
アスレスは炎のブレスに気が付きました。
慌てていました。
ただ、全速力で走っているため止まることはできませんでした。大きな炎の塊のせいで左右に避けることもできそうにないのです。
アスレスは防御の魔法を唱えていました。
私たちはドラゴンの炎のブレスをの中に飛び込んでいったのです。
ありがとうございます!!




