眠っている異世界人②
妻は異世界人の少年を目覚めさせる準備をしているようでした。
その作業をしている姿を見つめていました。
「お願い。あなたの力が必要なの……」
妻の言葉です。
ただ、いったい何をしたらいいのだろうかと思いました。
だって、私は偽の勇者なのです。
その言葉が信じられません。いや、どうやったら信じられるのでしょう。偽物である私は何の力も持っていないのですから。そんなことできるはずがないのです。
青い石の欠片を見つめていました。
試しに青い石の欠片に手をかざしてみます。えいやっと声を出してみました。もちろん、青い石に変化はありません。もしかしたらと思いましたが、それ以上、何かを考えることはやめることにしました。
妻は異世界人を目覚めさせる準備をしていました。
彼女は魔族であり、王様の前では大立ち回りをして、そこにいた全ての男たちをなぎ倒していました。いまさら私の力を求めるわけがないのです。もう一度、青い石の欠片を見つめてみました。やはり、変化が起きることはなくて、その石を妻に渡すことにします。
真っ暗な闇の中を歩いていくと、妻が異世界人を運び出していました。
地面には魔法陣が描かれていました。
それを見ながら、私は妻に声を掛けました。
彼女に尋ねたいことがあったのです。
「この青い石は君がぼくに渡すように伝えたの?」
その時、妻は異世界人の胸のあたりを指さしています。
妻が返事をしていました。
「ええ、そうよ。ねえ、準備ができたから、その石をここに置いてくれないかな……」
私は妻の言葉に従ってみることにしました。
異世界人の横に座りました。
「ここに置いたらいいのかな?」
「ありがとう、そこで、大丈夫だと思う……」
青い石を異世界人の胸に置きました。
青い石が輝き始めていました。
とっさに、光を放っている青い石から手を放そうとしました。
しかし、私の手は石に掴まれたように離すことができなくなっていました。まったく、私は身動きができなくなっていました。
青い石の光が、段々と広がっていきます。
直径約10メートルぐらいの大きさになっているようでした。
近くにいるため、外の状況はわからないのですが、内部では大きな光が心臓のようにうねっており、周りにある生命エネルギーを吸収しているようでした。
青い石の影響を受け、植物と木が枯れてしまいました。
草や木は灰のように変わり、丘の下から吹いてくる風で崩れ落ち、そのまま消滅してしまいました。
私の中にも何かエネルギーを感じることができました。
エネルギーが異世界人に注がれると、その光はだんだん小さくなっていきました。
光が消えると、私は異世界人から離れることができました。尻もちをついたように後方に座り込んでしまいました。
右手にある石はぼんやりと光を放っていました。
異世界人を見つめていました。
「うーーーん……」
誰かの声が聞こえてきます。
ゆっくりと異世界人の目が開いていきました。
起き上がると、異世界人はきょろきょろと周りを見渡していました。
妻は異世界人の方へ歩いていきます。
「ねえ、よく眠れた? ユウマくんだっけ?」
声を聞き、異世界人は彼女を見ました。
真っ暗な闇の中で、目を細めるようにして妻の姿を見つめていました。
すぐに、異世界人の少年が立ち上がります。
「お、おまえ、ど、ど、どうしてお前が生きているんだ!!!」
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